本日の晩酌 - 山形正宗

「本日の晩酌」と称して呑んだ酒の寸評を書き留めてはいるものの、実は酒の味がそれほど分かっているわけではなく、利き酒でもほとんど当たったためしがありません。違いの分かる方々の目で見れば、的外れなことを度々申しているのは自覚しています。さりとて深く学んでみたいとも思わないのは、都内の専門店で飛び交うような蘊蓄話を、自身必ずしも快く思わないからに他なりません。これは、細かな違いばかりを気にすると、酒がうまくなくなるという考えによるところが大です。

このような話を持ち出したのは、つい最近そのような状況を経験したからです。先日山形正宗の「秋あがり」を押さえたところ、二年前に蔵出しされた酒だったことから、今季の酒と比べてみてもよさそうだと申しました。しかし、その構想を実行に移してみると、少なくとも自分の味覚嗅覚では、明確な違いを感じ取るまでには至らなかったのです。
猪口を二つ並べて何度も何度も飲み比べると、古い方がわずかに味が濃いような気がしないでもありません。しかし、事前に分かっているからそのように感じるだけかもしれず、目隠しされれば取り違える可能性は少なからずあると思います。ただし、自分の未熟さを恥じるより、安定した味わいに仕上げてくる蔵元に賞賛を送りたいというのが第一であって、これほど細かな違いを区別することには何の意義も見出しません。やはり自分は利き酒に向かないと、改めて実感する出来事でした。

★山形正宗 純米吟醸秋あがり
水戸部酒造(山形県天童市)
原料米 山田錦
精米歩合 55%
アルコール分 16%
東京都港区 朧酒店にて購入