本日の晩酌 - 貴

嵐が去って広がったのは、台風一過の青空ではなく、真冬のような透き通った空でした。木枯らしが吹きすさび、俄に冬の気配が漂う中、手元にはまだ何本かのひやおろしが残っています。今夜は「貴」を封切りました。
ひやおろしを名乗っていた前身の頃から、拙い味覚と嗅覚を駆使しつつ、さわやかな香り、乗り切った旨味、切れ味のよさといった言葉でこの酒を形容してきました。ラベルともども一新され、「ふかまり」と改称された昨年も、その傾向は引き継がれていました。そのときも同様だったかどうか、稲穂をあしらったラベルには「一杯目は、ひやで。二杯目は、ぬる燗で。」の文字があります。それに従いまずは冷やでいただき、しかる後に燗をつけると、旨味と切れを保ちつつ、冷酒で感じられたさわやかな含み香に代わって、甘い香りが立ち上がってきました。月並みな言葉を借りれば「香りが開く」ということになるのでしょう。冷やにも燗にもよさがある、一粒で二度おいしい逸品です。

★貴 特別純米「ふかまり」
永山本家酒造場(山口県宇部市)
原料米 山田錦
精米歩合 60%
アルコール分 15度
杜氏 永山貴博
東京都港区 朧酒店にて購入