森田宏幸のブログ

Morita Hiroyukiの自己宣伝のためのblog アニメーション作画・演出・研究 「ぼくらの」監督

「ぼくらの」11話によせて

2007年06月26日 05時30分38秒 | 監督日記
森田宏幸です。
今日は、2009年12月4日です。

「11話によせて」を書きます。
放送から2年たって、今さら、ですが、
書こうと思っていたので書きます。

このモジの話に関しては、脚色が比較的スムーズに進んだと思います。

この11話は、モジが、幼なじみの親友・ナギに心臓移植をする話です。
そして、ドラマの中心には、幼なじみの女の子・ツバサとの三角関係がありました。

ツバサは、本当に本当は、ナギとモジのどっちが好きなのか? という議論が、スタッフ間であって、
それは、原作の4巻183ページのツバサの表情や、5巻の36ページの様子から感じ取りつつ、
それはなぜなのか?という理由まで、議論してたと思います。

モジは、ツバサが好きだったけれど、
「彼女の性格を考えてみれば始めから分かっていたことだった。
彼女は絶対に僕を選ばない。彼女が選ぶのは、立場が優位な僕じゃない」
(劇中の台詞からの引用)

と思っていた。
これは一見、当たってましたが、
もしもツバサが、最初から、ナギを好きだった、ということであれば、
性格の読み、という意味では外れていたことになる。

だから、「彼女が選ぶのは、立場が優位な僕じゃない」という判断は、
ツバサの性格、というよりも、モジ自身の性格が現れたものだと、
そのようにも読めました。

それでここからは、私自身の考えですが、

こういう、モジの台詞に現れているような、
自分の利害よりも、人のことを優先して考える態度のことを、
優しさとか、思いやりとか、感情の、気分や情緒で説明するのはまあ、普通のことなのですが、
本当はそうではないのではないか。
実は、これはもう、立派な思想、というか、
生きる上で、人が自分に課している、「法」のレベルの、ことではないかと思うのです。
性格などという、個人の行動の「癖(くせ)」のようなものというよりも、
もっと根の深いところに、根ざしているものなのではないかと。

それをツバサは、嫌ったのではないかなぁ、というのが、
脚本を進めていた時の、なんとなくの、私の、見解でした。

4巻183ページのツバサの冷たい表情は、
自分の気持ちがナギに裏切られて寂しい、という思いを通り越して、
どうして自分のことよりも、人のことを優先するのか、という
そんな生き方を見るのがいやだ、と思っているようにも見えました。

ただ、アニメーション版(「もりたの」?(笑))では
ここは強調しませんでしたが。
この話では、モジの決意を讃えたかったので。

(以下、劇中の台詞から)
「世界中で、もっとも罪深い人間を選ぶとするなら、それはきっと僕のことだ」

「二人は僕の命。もう迷うことはない。」

と、このように、モジの迷いのなさを強調したら、勢いがついて、
戦いのシーンもしっくり来て、
スムーズに作れたと思います。
ジアースと出会ったから、ではなくて、最初から、この生き方を望んでいた、
この思想を貫けた、かのように、描いたと思います。

ただし、その、モジの行き方の思想の、是非の議論はなければいけなくて、
それは、あとへ続く子どもたちに引き継がれていくのだ、ということです。
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14 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (タバスコ)
2007-06-26 07:20:27
あらら。
まあ何を言っても揶揄されるんじゃあしょうがないよね。
返信する
Unknown (Unknown)
2007-06-26 07:45:01
まあ揶揄でしょうね。

私自身が監督を嫌いで、
ある意味悪意を持ってコメントしてるいることを認めます
返信する
Unknown (Unknown)
2007-06-26 07:50:25
お疲れ様です。
本格的にブログに書く時間が取れなくなっているようですね。
でも意見、批判は受け付けると。
リアルタイムで監督のコメントが読めないのは残念ですが、
お仕事に集中なさった方が良いと思います。

頑張って下さい。
返信する
Unknown (Unknown)
2007-06-26 12:18:52
2007-06-26 07:45:01

ちょっと、あんた!

うまいよっ、おいしいコメントだねっ!
返信する
Unknown (Unknown)
2007-06-26 13:28:40
DVDに監督のコメンタリー入ってるらしいですね。

この期に及んで何を仰るつもりですか?

「ども、原作嫌いなのに監督を引き受けた森田です」とか?
返信する
11話の感想など ()
2007-06-26 13:31:38
11話を見終えて益々今後が楽しみになりました。
最後まで見ないと個別エピソードも完結しないように思っていますので、自分の中で各話は半分保留状態でキープしている感じです。
主人公達を通して、小さな布石の配置を通して、徐々に盛り上がってきています。
見ている自分のワクワク感かもしれませんが、ここが、とか、これが、とかではなく、雰囲気に緊張感というか新しい展開の予兆を前回辺りから明らかに感じるようになりました。

モジは相手が人間だという可能性に気付きました。
全編を通して感じる事は、子供達の想像力のなさです。
経験不足認識不足の子供達がだんだんと行為の結果や真実に気付いていくという側面が、この話の一つの流れとしてあると感じます。
一人一人死ぬのですが、一人が気付いた事を共有して次の課題や段階に入っていくという感じです。
疑問を持たない事、想像力の欠如、認識不足、経験不足、それらが顕著に現れる現代風の子供たちがパイロットになっているところが興味深いです。

この子供達には本当に死の実感があるのでしょうか?
夏休み中のような非現実感の中にいて、自分のわかる範囲の現実感で考えたり怖がったり決意しているように思えます。
そんな非現実的な現実感がうまく出ているようにも感じます。
原作にもそういうテイストがあると思いますが、ある意味アニメ作品の方がリアルな感じがしています。
1話1話の劇的さより、劇場作品を手がけられている事での、物語全体と各パーツの配分や必然性のようなバランスやセンスが、生かされている作品のように感じています。
そういう意味では、すぐに続けて見られない残念さはありますが、そこで終わらない(次回へ続く)味わい深さがあります。

これからどうもっていかれるのか興味がつきません。
今はまだ途中ですので、種明かしは最後まで(或いはいつかずっと先に)取っておかれても全く支障はないと思います。
ご多忙中かと思われますので、特にこちらのblogの件ではご無理をなされませんように願っています。
返信する
Unknown (Unknown)
2007-06-27 09:40:34
11話と12話のバンクであるところの
チャイムが押されて田中さんがドスドス廊下を歩くシーンが無意味。それとも何か重要な意味ある?
あんな無駄なシーンはカットしてもっと会話を増やしたらいいのに。
返信する
率直な意見 (Unknown)
2007-06-27 14:35:24
率直な意見として今回は10話同様あまり面白くなかったです。時間的に詰め込むのに無理があるのが見え見えで・・・2話に分けることは出来なかったのですかね?
返信する
テーマ (禁煙)
2007-07-03 00:45:56
>>2007-06-27 14:35:24

俺は逆だね

前回と今回の話、好きだし、
この2話に関してはもう少し時間が欲しくもある。

ただ子供っぽさの感情を見せつけられる回より
命ってものを考えさせられる、そんな話が
この“ぼくらの”の主題でしょ

じゃなきゃ、どこかの上の人(神?)の遊び心だけで
死んで行く子供が可愛そうに思えてならない

それぞれが自分の命を見極めていくところに
彼らの格好良さが現われる気がする
返信する
Unknown (Unknown)
2007-07-03 09:38:02
とても良い仕上がりだと思います。これからも頑張って下さい。それにぼくらのHappyEND期待しています。

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