OP,EDの仕事は最後、クレジットタイトルを載せて出来上がり。このV編作業が初体験です。だからこんなに時間がかかると思わなかった。夕方6時に初めて、翌朝近くまでぶっ通しですよ。クレジットタイトルっていうのは、「企画」とか「キャラクターデザイン」とか、スタッフの名前を載せる、あれです。
EDでクレジットを載せられる絵は、椅子に座った子供たち全員の絵15人分と、コックピットの絵1枚で、計16枚。けれど、プロデューサーが用意したタイトルページは17枚。数が合いません。試行錯誤の末、結局、絵とタイトルのタイミングをまったく合わせなくても全然おかしくなかった。その結論に自信を持つまでに3、4時間使ったと思います。
編集作業って、はまりますよね。タイミング撮の素材の編集でも面白いのに、V編の段階となると、絵は綺麗に仕上がってますからね。上に文字を載せるだけでも、文字を入れる位置とか、タイミングを音楽に合わせるのか、絵に合わせるのか、など、ちょっとしたタイミングの差で、心地よく見えたり見えなかったりというのが面白い。
EDもOPも、ラストは安定した「いい絵」を用意しました。テレビシリーズの場合、そこにはスポンサーや製作者など、「一番偉い有名な会社」の名前が載るからです。
ところが、ぼくらのの場合、OPもEDもラストは「イズミプロジェクト」なんですよ。イズミプロジェクト?なんだそれ?聞いたことない・・・。
テレビ局の名前でも「小学館」でもないんです。せめて、GONZOじゃ駄目なのかなと思ったり・・・。
イズミプロジェクトというのは、製作資金を集めるためのファンドの名前だそうです。最近資金の作り方にも選択肢が出てきたというわけで、これまでのメディアやスポンサーなどの大企業が資金を出すというパターンに比べると、小口の募金を集めるようなもんかな? 低予算の現場から見ると、そんな感じです。まわりが若い人たちばっかりなんだもの。30歳以上のスタッフを雇える予算組みになってないと思われ・・・。ま、それはともかく・・・。
エンディングの最初に出るのはゴンゾ作品では普通、脚本、絵コンテ、演出だそうです。昔の作品はよくキャストが最初に出てましたよね? これって時代の趨勢でしょうか? ちなみにジブリ映画はもっとすごくて、キャストより前に、アニメーターたちの名前を出すことにこだわってました。そうしたことを知っていながら僕は敢えてぼくらので、最初にキャストの名前を出すことにしました。主人公の15人の子供たちのキャストです。なぜって、15人のキャストがズラーッと揃うのは、1話と2話だけ。ひとりずつ死んでいく展開を考えると、この15人揃ってる瞬間の重みというものは、何ものにも代え難いものなんじゃないかと思って。これはやっぱり最初のワクの絵の横に載せたいなと。次のマキの絵も面白いですが、なんか違う、と思いまして・・・。
と、そんな誰も気が付かないようなどうでもいいようなところにこだわって、朝まで作業したわけです。メカ作監の鈴木勤氏の名前をメカが出てくるところで出さないでもいいのか?とか、森田、おまえだけセンターに出すのか?とか、悩みは尽きなかったですけど、ただ、ここにこだわる監督も珍しいとデスクの住友さんに言われたけど・・。
出来上がったOP,EDを見たまわりの反応は、うーむ、まあまあってとこでしょうか?? 気持ち、アニメーターたちやクリエーター系の人たちから褒めてもらってないような・・。まあ僕の場合いつもそうだけど。玄人受けしないというか。。かわりに、一話の進行の田代君や、デスクの住友さんが「いいOPですよ」と満足げだったり、いつも床で寝ている清水君が「あのウシロが走るところを僕は繰り返し20回見ました」とか言っている。(そんな暇があったら帰って寝なさい)僕が演出するとこういう草の根の労働者みたいな連中にしか受けないものが出来てしまうような・・・。もちろん、光栄なことですが・・・。
そうそう、ウシロの走りのフォローのカット。ここがあの田辺修さんの担当です。このカット、実は僕が自分で原画やろうかと思って、田辺君には別のカットを用意してました。でも、電話したら、「こっちの走りのフォローをやりたいな」と言ってきた。自分でやろうと思ってたところだから、これはシンパシー来たかな?と思ってやってもらうことにしたんですが・・・。
田辺君と僕はお互い4年生大学を出た同い年で、アキラの動画で知り合って以来、同級生感覚で付き合える友人です。この業界では大学を出てない人が多く、同い年でもキャリアは先輩というパターンが多いので、田辺君には親近感があって、いろいろ助けてもらって世話になってます。
この時もちょうどゴンゾの引っ越しが重なって、仕事場がなく、田辺君の私設スタジオ「4スタ」で机を借りて仕事させてもらいました。
だから、カットについては仕事場でじっくり話し合えたのですが、田辺君は、自分が描いた全原画の絵をクイックチェッカーで取り込み、アフターエフェクトでレイアウトの引きと合成して見せてくれるのです。このスケジュールのない中でなんて贅沢!
上がった動きはたしか一歩6枚のリピートでした。それを見せられた僕は、その動きを1枚抜いて一歩5枚のリピートにしてこれで行きたいと言ったんだっけ。
それからが長かった。僕は空中ポーズで惰性で動く時間が長いと疲れている印象に見える、この少年の内側から湧きだしてくる力感を大事にするために一枚抜きたいと言ったのでした。それに対して田辺君は、一枚抜くと動きが軽くなってペラペラな印象になり、観客に伝わらない。走りが記号的になって、「動き」を観客に感じてもらえなくなるのではないか、と言うのです。
内面のリアリティ重視の僕と、目に見えるリアリティ重視の田辺君のこの対立は、同じリアルでも現実主義と自然主義という表現上の信条の違いなのではないか?などと難しく言ってみても効き目はありません。そして僕は、この「『動き』が観客に伝わらなくなる」という言葉にしこたま弱い。彼を前にしての僕のアニメーターとしての自信の問題もありました。時間があれば、一枚減らして5枚のサイクルで、ペラペラでない動きを描ける、と負け惜しみまで出て、議論は二日にまたがり(ずっと議論してたわけではないですよ)、結局僕が折れました。かわりに、彼に描いてもらおうと思っていた他のカットを僕が自分でやり、そっちは自分で見てもほんとにペラペラな軽い動きになっちゃった。(どのカットかはご勘弁)
ああ!田辺君、田辺君、田辺君・・・! 君は常に自分自身であり続けることにかけては天才だ。このウシロの走りは、ちょっとだけ細かいところの調整を頼んだだけで、田辺君が描いた動きそのままに完成したのです。
このカット、清水君だけでなく、ゴンゾの若いアニメーターたちに絶賛されて、大いに面白がられたことは、言うまでもありません。
何はともあれ、間に合ってよかったっ。
EDでクレジットを載せられる絵は、椅子に座った子供たち全員の絵15人分と、コックピットの絵1枚で、計16枚。けれど、プロデューサーが用意したタイトルページは17枚。数が合いません。試行錯誤の末、結局、絵とタイトルのタイミングをまったく合わせなくても全然おかしくなかった。その結論に自信を持つまでに3、4時間使ったと思います。
編集作業って、はまりますよね。タイミング撮の素材の編集でも面白いのに、V編の段階となると、絵は綺麗に仕上がってますからね。上に文字を載せるだけでも、文字を入れる位置とか、タイミングを音楽に合わせるのか、絵に合わせるのか、など、ちょっとしたタイミングの差で、心地よく見えたり見えなかったりというのが面白い。
EDもOPも、ラストは安定した「いい絵」を用意しました。テレビシリーズの場合、そこにはスポンサーや製作者など、「一番偉い有名な会社」の名前が載るからです。
ところが、ぼくらのの場合、OPもEDもラストは「イズミプロジェクト」なんですよ。イズミプロジェクト?なんだそれ?聞いたことない・・・。
テレビ局の名前でも「小学館」でもないんです。せめて、GONZOじゃ駄目なのかなと思ったり・・・。
イズミプロジェクトというのは、製作資金を集めるためのファンドの名前だそうです。最近資金の作り方にも選択肢が出てきたというわけで、これまでのメディアやスポンサーなどの大企業が資金を出すというパターンに比べると、小口の募金を集めるようなもんかな? 低予算の現場から見ると、そんな感じです。まわりが若い人たちばっかりなんだもの。30歳以上のスタッフを雇える予算組みになってないと思われ・・・。ま、それはともかく・・・。
エンディングの最初に出るのはゴンゾ作品では普通、脚本、絵コンテ、演出だそうです。昔の作品はよくキャストが最初に出てましたよね? これって時代の趨勢でしょうか? ちなみにジブリ映画はもっとすごくて、キャストより前に、アニメーターたちの名前を出すことにこだわってました。そうしたことを知っていながら僕は敢えてぼくらので、最初にキャストの名前を出すことにしました。主人公の15人の子供たちのキャストです。なぜって、15人のキャストがズラーッと揃うのは、1話と2話だけ。ひとりずつ死んでいく展開を考えると、この15人揃ってる瞬間の重みというものは、何ものにも代え難いものなんじゃないかと思って。これはやっぱり最初のワクの絵の横に載せたいなと。次のマキの絵も面白いですが、なんか違う、と思いまして・・・。
と、そんな誰も気が付かないようなどうでもいいようなところにこだわって、朝まで作業したわけです。メカ作監の鈴木勤氏の名前をメカが出てくるところで出さないでもいいのか?とか、森田、おまえだけセンターに出すのか?とか、悩みは尽きなかったですけど、ただ、ここにこだわる監督も珍しいとデスクの住友さんに言われたけど・・。
出来上がったOP,EDを見たまわりの反応は、うーむ、まあまあってとこでしょうか?? 気持ち、アニメーターたちやクリエーター系の人たちから褒めてもらってないような・・。まあ僕の場合いつもそうだけど。玄人受けしないというか。。かわりに、一話の進行の田代君や、デスクの住友さんが「いいOPですよ」と満足げだったり、いつも床で寝ている清水君が「あのウシロが走るところを僕は繰り返し20回見ました」とか言っている。(そんな暇があったら帰って寝なさい)僕が演出するとこういう草の根の労働者みたいな連中にしか受けないものが出来てしまうような・・・。もちろん、光栄なことですが・・・。
そうそう、ウシロの走りのフォローのカット。ここがあの田辺修さんの担当です。このカット、実は僕が自分で原画やろうかと思って、田辺君には別のカットを用意してました。でも、電話したら、「こっちの走りのフォローをやりたいな」と言ってきた。自分でやろうと思ってたところだから、これはシンパシー来たかな?と思ってやってもらうことにしたんですが・・・。
田辺君と僕はお互い4年生大学を出た同い年で、アキラの動画で知り合って以来、同級生感覚で付き合える友人です。この業界では大学を出てない人が多く、同い年でもキャリアは先輩というパターンが多いので、田辺君には親近感があって、いろいろ助けてもらって世話になってます。
この時もちょうどゴンゾの引っ越しが重なって、仕事場がなく、田辺君の私設スタジオ「4スタ」で机を借りて仕事させてもらいました。
だから、カットについては仕事場でじっくり話し合えたのですが、田辺君は、自分が描いた全原画の絵をクイックチェッカーで取り込み、アフターエフェクトでレイアウトの引きと合成して見せてくれるのです。このスケジュールのない中でなんて贅沢!
上がった動きはたしか一歩6枚のリピートでした。それを見せられた僕は、その動きを1枚抜いて一歩5枚のリピートにしてこれで行きたいと言ったんだっけ。
それからが長かった。僕は空中ポーズで惰性で動く時間が長いと疲れている印象に見える、この少年の内側から湧きだしてくる力感を大事にするために一枚抜きたいと言ったのでした。それに対して田辺君は、一枚抜くと動きが軽くなってペラペラな印象になり、観客に伝わらない。走りが記号的になって、「動き」を観客に感じてもらえなくなるのではないか、と言うのです。
内面のリアリティ重視の僕と、目に見えるリアリティ重視の田辺君のこの対立は、同じリアルでも現実主義と自然主義という表現上の信条の違いなのではないか?などと難しく言ってみても効き目はありません。そして僕は、この「『動き』が観客に伝わらなくなる」という言葉にしこたま弱い。彼を前にしての僕のアニメーターとしての自信の問題もありました。時間があれば、一枚減らして5枚のサイクルで、ペラペラでない動きを描ける、と負け惜しみまで出て、議論は二日にまたがり(ずっと議論してたわけではないですよ)、結局僕が折れました。かわりに、彼に描いてもらおうと思っていた他のカットを僕が自分でやり、そっちは自分で見てもほんとにペラペラな軽い動きになっちゃった。(どのカットかはご勘弁)
ああ!田辺君、田辺君、田辺君・・・! 君は常に自分自身であり続けることにかけては天才だ。このウシロの走りは、ちょっとだけ細かいところの調整を頼んだだけで、田辺君が描いた動きそのままに完成したのです。
このカット、清水君だけでなく、ゴンゾの若いアニメーターたちに絶賛されて、大いに面白がられたことは、言うまでもありません。
何はともあれ、間に合ってよかったっ。
サンテレビでの放送では、野球と選挙とパチンコのせいで、
観られなかった人が続出したようで。
今の部屋では放送局が映らないので、
受信可能な友人に、録画を頼みました。
放送、楽しみにしてます。
ゴンゾの公式HPでは、時間がズレること、ちゃんと出てたみたいなんだけど、出鼻がくじかれたか?
UHFって、皆さんなかなか受信してないみたいですねぇ。
私の家のテレビは付けたら映ってましたが・・・。
月末からケーブルやスカパーでもあるらしいので、
なんとか見ていただけるといいな。
各キャラが次々と出てくる間のジアースの挿入のしかたが好きで構成の妙を感じます。
また、タイトルが表示されるまでの間にピンク色を強く推しているのにも感銘を受けました。
もちろんウシロの走りもよかったんですが個人的にはチズ、コダマ、マキのカットが好きでした。
私も1話を拝見しました。
原作が好きだったので、どうなるか不安半分期待半分での視聴でしたが……
OPからEDまで、原作ファンとしてもとても楽しめました。
(正直なところ、トレイラーの時点で期待100%みたいなところもありました(笑))
OPの各カットと、主題歌とのマッチも凄くよかったです。
OPは、10回以上繰り返して見ています。
本編も、灯台の光と共に敵のロボが出現するなど、オリジナルの演出がとても印象に残っています。
自分の周りでも、とても評判は良く感じられました。
2話、楽しみにしています。
こんなことは初めてで、自分でも驚いています(笑)
まず、なんといっても曲が素晴らしい。
そして画。
ぶっきらぼうに見えて実はかなり考えられてるじゃないか。
原作を読んだことが無いのに、OPを観ているだけで、
これから起こる圧倒的な何かを感じずにいられない。
というか、もう観ているだけでなんだか分からないが泣けてきます。
このブログで試行錯誤を重ねていることを知りました。
苦労に見合うだけのものを得つつありますよ!
少年少女だけで15人という登場人物は、彼らの間だけで120もの人間関係を築きます。
マンガという実質時間的な制限のない媒体であるならともかく、アニメでそれを描くのは厳しいのではないかと思っていましたが、まさかそれらがOPで補われるとは思っていませんでした。
わたしは原作を知りませんし、ですからはっきり言って本編だけでは人間関係どころか彼らの人格すら把握し難かったのですが、OPのお陰でついていくことができました。
皆さんおっしゃっていますが、絵も曲もいいOPだと思います。ジアース、カッコいいし。
そしてコメントもありがとうございます。
>arataさん
そう! 監督としては構成命なので、嬉しい反応です!
>ぽんさん
原作好きな方からいい感想が聞けるとは、正直信じられませんっ。
2話ではいよいよコエムシが登場するし、
仕込んでるオリジナルアイディアは灯台の光どころではありません・・。
以後裏切ってしまったらごめんなさい。。
>とうげんさん
そうそう。意外と考えてるって、感じでしょうか。
曲を聞いて浮かんだ絵が多いから、石川さんに大感謝ですね。
ぼくらのを気に入ってくださっているみたいだし。
http://www.chiakiishikawa.com/
作品にとってほんとに幸運でした。
>mdさん
120通りの計算法が分かりませんが(笑)
なるほど、そんなになりますかね~。
実は、本編で描くより、OPに圧縮する方が表現として得ということでしょうか?
曲の刺激で想像が加わるし。
散文より俳句や短歌の方がいい、みたいな?
>Unknown
まさか。
「期待しないで見たら意外と面白い」ぐらいが目標です。
原作から知っているファンの一人として
作風への曲のマッチや動きの滑らかさに感動しました。
今後の展開に期待せずにはいられません。
どうか、良いものを・・・原作を超えるような
感動を、アニメでも味合わせてくださいお願いします。
原作は絶対越えられませんが、猫の恩返しは越えたいですね。