森本光☆ラグビーが好きやねん

関西エリアで活動する森本光のブログ

小学生のための音読教室

2012-01-13 22:46:08 | ちょっと聞いてくれる

120113

 先週、枚方市内の学習塾で冬休み期間中の子どもたちを対象にした音読教室を開いた。参加したのは小学4年生から6年生までの児童6人。男の子3人、女の子3人だった。実は、この試みは昨年春からずっとあたためてきた内容だった。

 僕が週に一度、朗読の指導をしている塾講師の男性。この先生は、小学生の音読に力を入れたいとの思いから、まずご自身が、本を声に出して読むコツを学ぼうと僕のところに問い合わせてこられた。去年の春から9カ月、個人レッスンを行い、最初の頃は長時間にわたって声を出して読むことにかなり疲れていらっしゃったが、今では集中力が途切れることなく、毎回それぞれの箇所で僕がアドバイスした内容を見事に読みに反映させておられる。この講師の男性は、塾で本を読むときの子どもたちのいきいきとした姿が大好きだそうだ。なかにはうまく読めない児童もいる。逆に上手に読む小学生もいる。そうした子どもたちに的確なアドバイスや指導をして、うまく読めない子には本を読むのが好きになるように、そして上手に読める児童には、より豊かな表現をしてもらおうと、僕のレッスンを受けてこられた。そうしたつながりの中で、今回、子どもたちを集めて、僕が直接音読の指導をしてみて、その変化や反応を見ようということになったのだ。

 音読教室で子どもたちが読んだ作品は「茂吉のねこ」と「三年とうげ」だ。「茂吉のねこ」の学習ガイドにはこんなことが書いてあった。

『音読のしかたに工夫を加えてみましょう。

 ・声や言葉の調子を使い分けて、茂吉、ねこ、化け物を表現してみる。

 ・効果音を入れるとしたら、どこに入れたいか考える。

 ・声を合わせて読むといいところを考える。』

 さて、はたして何人の小学校教諭がこの教科書に書いてある『音読の仕方の工夫』について指導できるだろうか?昨今の教育現場での詳しいことは知らないが、僕が小学生のとき、この内容を指導できる先生はひとりもいなかった。今は、国語の教員をめざす学生はみんな音読を学んでいるのだろうか?また、教師になってから、そういったワークショップで勉強しているのだろうか?残念ながら僕はそんな話を一度も聞いたことがない。あくまで推測ではあるが、きちんと音読の仕方について説明できる先生はほとんどいないだろう。また、教科書にもいい加減なことが書いてある。「効果音を入れるとしたら、どこに入れたいか考える」、「声を合わせて読むといいところを考える」。こんな内容は、音読の仕方の欄を埋めるために無理やり記載したもので、これを考えたり試したりしたところで、国語力も表現力もアップしない。しかも、「茂吉のねこ」で声を合わせるべき箇所は「ころすべし」、「死ぬべし」である。わざわざこのような言葉を子どもたちに言わせる必要はない。

 とにかく、現在の小学校において音読の指導については、教員は無知、そして教科書もいい加減。僕の印象ではほぼ誰も手をつけていない領域である。でも、人前で本を読むことを楽しめたり、一歩進んで、文章にふさわしい表現ができるようになったりすると、その後の人生においてはプラスの側面が多いと思う。だからこそ、僕はこれまでの仕事などで身につけたことをどんどん子どもたちに伝えていきたいのである。

 そんな思いを胸に開いた小学生のための音読教室。保護者の方々も見守る中、およそ1時間半、子どもたちに声を出して作品を読んでもらった。僕がこの日いちばん伝えたかったポイントは、作品に出てくる言葉を、その意味どおりに表現すること。「痛い」は痛いように、「熱い」は熱いように、「うれしい」はうれしいように、「悲しい」は悲しいように素直に表現すればいい。音読でそれを学べば、日常生活でも自分の感情をストレートに表せるようになるだろう。何に悩んでいるのか、なぜ元気がないのか。そういったことを内に秘めることなく、どんどん出せるようになれば、親が気づいてやれず状況が悪化し、子どもたちの悩み、苦しみが増すようなこともなくなるのではないだろうか?音読教室では、漢字のたびにつまってしまって思うように読めない児童もいた。いっぽうで、僕の一言のアドバイスで保護者のみなさんが驚くような豊かな表現のできた小学生もいた。うまい、へたは関係なく、なにより声を出して読む楽しさを感じてほしいを一生懸命指導した。反省点としては、普段小学生に何かを教えるということをしていないので、アドバイスするときの言葉が少し難しかったかな?もっとやさしい単語にすればよかったかな?というような点があるが、音読教室に参加した女の子が「楽しかった」とか「少しのことで変わるんだなあと思いました」などとうれしい感想を話してくれたので、まずまずの手ごたえを感じている。また機会があればぜひ小学生のための音読教室を開いてみたい。