「旦那の寝てる姿を見てたら
殺意を覚えるときがあるんです」
ある女性がボソリともらした一言は
穏やかな性格とは裏腹の鬼気迫るものだった。
僕が結婚披露宴の司会を担当したこの夫婦。
旦那のRは高校のラグビー部の後輩だ。
Rは身長180センチを軽く超える大柄な男だが
高校、大学とラグビーを続ける中で
肩を脱臼するクセがついてしまった。
寝返りを打つだけで外れてしまうという“ガラスの肩”。
肩の痛みで目を覚まし救急車で運ばれたことも
頻繁にあったらしい。
そこで彼は、就寝中に寝返りを打たないよう
オリジナルの秘策を編み出した。
寝る前に荷造り用のロープで器用に自分の体を縛り付ける
その名も“緊縛就寝法”。
きつく縛るため体の自由がいっさいきかないこの方法で
Rはその後、朝いちばんの脱臼を免れるようになった。
これに気をよくしたRは、次々に
オリジナルの就寝方法を実践していく。
歯列矯正用にと、マウスピースを装着し、
カゼの菌は口から入るとして
唇にセロハンテープを貼りつける。
ロープで体を縛り、マウスピースをはめて
口にはセロハンテープ。
レベル5の罰ゲーム状態のRの姿を
毎日見せつけられる嫁の怒りもわからないではない。
なぜ、こんな話を持ち出したのかというと
先日、カゼの治療で病院に行った際、
寝ているときの口呼吸が原因で
ウィルスが入っているのでは、
と担当医に指摘されたからだ。
しかし、口呼吸を防ぐために
セロハンテープを貼る勇気は持ち合わせていない。
Rは、口をテープでふさぐようになってから
カゼを一度も引いていないそうだが...
どうも最近よくカゼを引くようになったという人は
実践してみてはいかがだろうか?
ただし、配偶者や家族の理解という課題をクリアしないと
事件に発展しかねないのでその点は充分ご注意を。