「よう見つけてくるなぁ。そんな服どこに売ってるの?」
【去年12月、カラオケ番組の収録後】
僕の衣装にまたもMさんが注文をつけた。今回は白のコートにベージュのジャケット、そしてこだわりは茶色のシャツ。色がそれぞれ異なるボタンが狭い間隔で並ぶ個性的なデザインだ。Mさんのファッションチェックはかなり厳しい。最高ランクの言葉は「まぁまぁやね」だ。辛口で知られるピーコだって「年相応の格好してるわね。悪くないと思うわ」と言うこともあるのに。Mさんは絶対に褒めてくれない。イニシャルはM.Mさん。なのに僕への態度はMどころかドSだ。まるで言葉攻めを楽しんでいるような気配すら感じられる。僕が攻撃されているとき、新妻タレントのミキティーは原稿をめくるフリをしてチラリと僕のシャツに目をやり、何か言いたげな表情だったがまた下読みを続けた。
衣装はすべて自前。下っ端のタレントである僕には専属のスタイリストさんなどいない。芸術大学を出ているわりには服のセンスに関しては昔から評判が悪く、たまに全員が口を揃えるほどとんでもないコーディネートをしてしまうこともある。それでもスーツやネクタイのセンスはマシなようで、メイクさんや他のタレントさんのマネージャーから褒めてもらうこともある。問題はスーツ以外の服装。毎回、1つはこだわりをアピールするアイテムを取り入れているのだが、これがどうも裏目に出ているようだ。ちょっと変わったデザインがトータルコーディネートで見るとだいぶおかしい見た目にレベルアップしてしまう。さてさて、どうしたもんかな。洋服を買うときは、なるべくオーソドックスなものを選ぼうとしている。でも、目に止まりレジに持っていくのはどちらかといえば奇抜なものばかり。テレビに出るんだから派手な方がいいよね、なんて自分に言い聞かせてしまう癖はなかなか治らない。みのもんたとか久米宏はたしか奥さんがスタイリストをしていたはずだ。旦那をかっこ良く見せたい。いや、森本光の服を何とかしたい。そんな花嫁希望者はいないのかな。いないよね。結局、服装のことも花嫁探しでオチをつけてしまうところが一番の問題なのかもしれない。