森本光☆ラグビーが好きやねん

関西エリアで活動する森本光のブログ

天理4連覇、監督の涙

2006-07-31 04:10:44 | 何でもない日常

夏の高校野球奈良大会決勝は、天理が斑鳩・法隆寺国際を下し4連覇を達成。試合は逆転サヨナラという劇的な幕切れとなった。こみあげる感情を抑えきれず目頭に手をやる天理・森川監督。大舞台を数多く経験してきた常に冷静な監督が見せた珍しい姿。その背景にあるものは?

大会前のインタビューでは、他チームの監督が優勝を意識したコメントを出す中、森川監督だけはそういった言葉を語ってくれなかった。「投げてもダメ、打線も繋がらない。特徴のないチームで優勝は無理やと思います」選手たちの活躍を期待するような前向きな言葉は一切なかった。インタビューのあと、撮影スタッフたちと森川監督の言葉の裏にある真意を分析してみた。「相手を油断させるために弱気ともとれるコメントをした」「強豪校の監督は謙虚に振る舞う人が多いけど、本心では虎視眈々と優勝を狙ってるはずだ」こういった意見が出たのだが、練習を見ると、たしかに監督の言うように目立った選手はおらず優勝するような何かを感じることができなかった。

天理のあとに向かったのは智弁学園。去年12月に野球部を率いた上村監督が46歳という若さで他界し、「上村監督を甲子園に連れていこう」を合言葉に選手たちは練習に励んでいた。去年の夏、初戦で敗れた天理に対するリベンジ、そして上村前監督の思い。それらを胸に白球を追いかける選手たちからは、1つに固まった強い気持ちと他のチームにはなかったピリッとした雰囲気が伝わってきた。春の奈良大会優勝という実績も含めて「今年は智弁やな」そう思った。

奈良大会が開幕。「初戦すら危うい」と森川監督は話していたが、その天理は圧倒的な強さを見せトーナメントを勝ち上がっていく。一方の智弁も自慢の打線が力を発揮。予想通りの結果を残す。そして迎えた準決勝。天理と智弁学園、両校が顔を合わせた。天理が底力を見せるも智弁の打力が上回るんじゃないか。これが素人の僕の予想。だが結果は天理が8対2で勝利。大会前に優勝チームとして智弁を挙げた僕は、この時点で経験豊富な森川監督に完敗した。

決勝は天理 対 斑鳩・法隆寺国際。ゲームは試合前の大方の予想に反し斑鳩・法隆寺国際がリードする展開。斑鳩・法隆寺国際が3対2と1点リードで迎えた9回ウラにドラマが待っていた。天理は1アウトからボールに食らいつくようなバッティングで打者2人が出塁。4番藤原は敬遠で1アウト満塁。そして5番高橋が3球目のボールを叩きつけた。高くバウンドした打球は前進守備のショートの頭の上を越えレフト前へ。3塁ランナーホームイン、3対3同点。2塁ランナーも一気にホームへ。クロスプレーはタッチをかいくぐりセーフ、逆転サヨナラ。ここいちばんの集中力。いや執念で天理が上回った。試合後、森川監督は「こういう試合がいつか来ると思っていました。このときに力を発揮できるように生徒たちに話をしてきました」と語った。

「優勝は無理やと思います」大会前のこの言葉が思い出される。4連覇という重圧を少しでも軽くし、選手たちに伸び伸びとプレーさせようという心配りだったのかもしれない。はたまた、チームの力を冷静に判断してのコメントだったのかもしれない。百錬練磨の監督だけに結果が出るまでは何が本音か未熟者の僕にはわからない。ただ、4年連続の甲子園への切符を手にするまで道のりが過去にないほど苦しかったことは事実だ。最後に森川監督は「ありがとうという言葉しかありません」と大会を通じて成長し期待に応えた選手たちを労った。