作業を終えて
そんな時間だったから
「一緒に昼食でも どうですか?」
気になっていた イタリアンがあるという
僕らは 早速 スタジオを出て
彼女の案内のまま 歩き始めた
店内は 女性ばかり
「これが 本当の 年増宴」
なんて ヤボなジョークは 飲み込んで
ドデカゴンの話をしながら
アルデンテを堪能して
店を出た
『近くに桜が綺麗な公園があるから 行きましょう』
断る理由もなかったから
彼女の案内のまま 歩き始めた
『紫より この色の方が 綺麗です』
そう言ってもらえたから
複雑な気持ちで そうかも と思うことにした
『きっと 印刷所の人 わざと間違えたんじゃないですか?』
「うん 意外に美大出身で 勝手に色を変えたとかね」
『そうですよ だって この方が 売れそうですもん』
ふうん
神田川沿いの 細い道
満開の桜が すでに風に乗って ハラハラ
川面には 花びらが 天の川のように 流れていく
「桜は 好きじゃないんですよ」
『実は 私もです』
「でも 桜を眺める人の顔は 素敵だと思います」
春の花で 一番好きなのは 白いモクレン
桜は 雪のように 偽善の塊に見えてしまうんだ
ただ それを見上げる人々の顔は
なんだか ときめきで 輝いて見える
それは 桜より ずっと気持ちいい
「あ でも 枝垂れ桜は 凄く好きです あのデザインが」
『分かります』
「重力を 美しく描けるのは 枝垂れ桜と 枝垂れ花火だけなんじゃないかな」
駅まで 戻る道すがら
僕は ひとつも嘘をついてないことに気がついた
あーあ せっかくの エイプリルフールだったのに
そんな時間だったから
「一緒に昼食でも どうですか?」
気になっていた イタリアンがあるという
僕らは 早速 スタジオを出て
彼女の案内のまま 歩き始めた
店内は 女性ばかり
「これが 本当の 年増宴」
なんて ヤボなジョークは 飲み込んで
ドデカゴンの話をしながら
アルデンテを堪能して
店を出た
『近くに桜が綺麗な公園があるから 行きましょう』
断る理由もなかったから
彼女の案内のまま 歩き始めた
『紫より この色の方が 綺麗です』
そう言ってもらえたから
複雑な気持ちで そうかも と思うことにした
『きっと 印刷所の人 わざと間違えたんじゃないですか?』
「うん 意外に美大出身で 勝手に色を変えたとかね」
『そうですよ だって この方が 売れそうですもん』
ふうん
神田川沿いの 細い道
満開の桜が すでに風に乗って ハラハラ
川面には 花びらが 天の川のように 流れていく
「桜は 好きじゃないんですよ」
『実は 私もです』
「でも 桜を眺める人の顔は 素敵だと思います」
春の花で 一番好きなのは 白いモクレン
桜は 雪のように 偽善の塊に見えてしまうんだ
ただ それを見上げる人々の顔は
なんだか ときめきで 輝いて見える
それは 桜より ずっと気持ちいい
「あ でも 枝垂れ桜は 凄く好きです あのデザインが」
『分かります』
「重力を 美しく描けるのは 枝垂れ桜と 枝垂れ花火だけなんじゃないかな」
駅まで 戻る道すがら
僕は ひとつも嘘をついてないことに気がついた
あーあ せっかくの エイプリルフールだったのに