ガサツなひと

ジムの化粧室にガサツな人が入ってきた

ガサツな人は足音もデカい

広い化粧室には殆ど人が居ないのに

その人は何故か私の隣にドスンッと座った

椅子をガガガッと引いて

化粧ポーチをバンッ！とカウンターに置いて

髪を乾かす前から備え付けのドライヤーのスイッチを入れ

自分のポーチからもカール専用ドライヤーを取り出し

髪は乾かさずそのまま顔の手入れを始めた

ガサツな人は化粧水をつける時もパシッパシッと大きい音を立てる

乳液をつけるときはゴシゴシと力強く手のひらですりこんでいる

殆どの人は服を着替えてから化粧室にくるが

ガサツな人はパンティとキャミソールだけで来た

ガサツだけど彼女の下着は光沢のあるシルバーグレーに

お洒落な黒いレースがついててとてもセクシーだ

適当に髪を乾かしただけで私は化粧室をあとにしたのだが

椅子をカウンターに戻すとき彼女の指先の綺麗なネイルが見えた

もうそんなに若くはない人だけど

その人は何だか恋してる人に思えた

ガサツな人はどんな恋をするのだろう？

恋人と食事をするときは音をたてたりしないのかな

ガサツな人の声はどんなだろう？

甘い声で囁いたりするのかな

どうでもいいことなのになんだか気になって

その人の見事なまでのガサツっぷりには全然やっきりしなかった