このピアノが私のものになってからもう45年の月日が過ぎた。
ピアノの上は猫のお気に入り。
特に去年死んだウメはいつもここでゴロゴロしていた。
私の歌が大好きだったウメ、
歌い始めると必ずピアノの上に飛び乗って気持ち良さそうに寝転んでた。
後ろ足が不自由で、おまけに歳をとってしまったウメが
爪を立ててよじ登っていたから蓋の角はボロボロだ。
最近はもう殆ど弾くことはなくなったこのピアノ、さてどうしよう!?と悩んでいた。
私のピアノはsteinbachという名前だけどれっきとした日本製。
YAMAHAでもKAWAIでもないこんなボロピアノは再利用してもらえそうもない。
浜松の、今はもうない小さな工房で丁寧に作られたものだ、ということを教えてくれ、
「このピアノが要らなくなった時は声をかけてください」と言っていた調律師さんに連絡をしてみた。
鍵盤に使ってある象牙が欲しい、とおっしゃっていたからだ。
ところがしばらくご無沙汰していた間に彼は病に倒れ、
復帰も難しい状態だとご家族から返事をいただいた。
ショックだった。素晴らしい腕前の愉しい人だから。
ピアノを始末するならこの人に貰ってもらうつもりだったから、
このまま置いておくしかない・・・と、あきらめていたが・・・・
このたび娘の後輩のところにめでたく里子に出す事が決まった。
彼女、我が家に来てこのピアノを弾いて気に入ってくれたようだ。
こんな年寄りでおぞい子(静岡弁だい!)をよくぞ貰ってくださる、と感謝、感謝。
独身の彼女はピアノを置くために一軒家に引っ越すそうだ。
大事にしてくれる人がみつかって良かった・・・
寂しくなるけど家にいてももう多分弾いてやれないから
これでいいのだ。
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