父と娘

2011-09-04 | 介護日記

夕方、大分空港の手荷物検査所の列に並んでいた。

ゲートが1つだけなので列はなかなか進まない。

私の前にいる女性を見送りに来ていたのだろう。

 

もうオジーサンに差しかかった年配の父親らしき人が

 

ロープの外からしきりに彼女に話しかけている。

列が進まないことに気を取られていたから

 

話しの内容は聞いていなかったが、

 

「しっかりやるんだぞ!」と言いながら

 

握手をしようと手を伸ばしたのが見えた。。

 

しかし私の前の彼女は列の先の方に視線をやっていて、

 

そのことに気づかなかったようだ。

行き場がなくなった手を引っ込めたオトーサンは、

 

照れて顔を赤くしながら

 

「お前の乗る飛行機はさっきの名古屋行きより大きいのか?」

 

などとまた話しかけている。

 

 

 

列がゲートの奥に進み始めた時、

 

思わず前の女性に声をかけていた。

お父さんが差し伸べていた手に気がつかなかったのなら

 

教えてあげなきゃ、と思ったから…。

              

彼女は気づいていた、と言った。
見ないふりをして拒否したのだ。

「そうだったの、ゴメンナサイネ。」

 

「いいえ…」


彼女の横顔を見ながら、これは私だ!と思った。

 

10代の頃から、ついこの間まで、父を嫌っていた私だ。

彼女と見送りに来ていた父親の間に何があったか知らない。
多分、悪いのは父親だろうと勝手に私は決めつける。

 

でも、手を差し伸べた時のお父さんが

 

ブキッチョで一生懸命だったのを私は見てしまった。

 

とても握手に慣れている人には見えなかった。

 

いろいろあるもんな…仕方ないな…

 

胸の中で呟きながら私は悲しかった。