
手もちの時間
1999年11月10日 著者:青木 玉 ㈱講談社

近ごろ好きな言葉―夜明けの新聞の匂い
平成12年5月1日 著者:曽野 綾子 ㈱新潮社
『手もちの時間』
祖父・幸田露伴、母・幸田文と暮らした十年を描いた『小石川の家』でデビューした著者はご本人の控えめさに反して、芸術選奨文部大臣賞受賞という華々しいスタートを切っている。
そういった血筋の良さ、恵まれた環境に無意識に反発して、タイトルに惹かれても今までこの人のものを読んだことがなかったけれど、いざ紐解いてみるとなんとも静かな物腰の優しさ、周囲の人に対する暖かい視線、生きていくうえで1本筋の通った知恵のようなものを感じて、心地よかった。
こんな人がお母さんだったら、いえ、せめて身近な親類のおばさんの中に一人いたらどんなにかステキだったろう。
そういえば、この人が、きもの雑誌で志村ふくみの工房を訪ねたときの対談を呼んだ時も、とても心に響くものがあって、「一度、読んでみよう。。」と思った事があったっけ。
次回は『幸田文の箪笥の引き出し』を覗いてみよう。
『近ごろ好きな言葉―夜明けの新聞の匂い』
少し読んで、思わず「クッ。」。 ―笑ってしまった。
青木玉さんの柔らかい美しい文に入り込んで、
「図書館の本では物足りない。コレは一冊買っておこう。」
とまで感激した後で、このストロングな書きっぷりにも快感を感じるんだから、我ながら面白い。
話は身内の病から海外情勢・政治にまで言及。大勢の意見ではない私見もズバズバ書いてある。
行間で「えーえー。どうせ反論はあるでしょうよ。だからなんだっていうの。私は裏からも下からも見て触って、コウ思ったのよっ!」と著者が胸を張っている。
日常からかけ離れたことも、著者の心の温かさ誠実さというフィルターを通してきっちり語られるので、興味深く読んだ。