白雪姫は死なない -白い靴下-

2007年02月19日 19時00分00秒 | 本・新聞・雑誌・記事・ネット

 
 赤ちゃんは草むらに捨てられていた。

 過酷な農作業の帰り道、若く独身の貧しい農夫はその小さき「命」に気づいた。

 彼の住む四川省の農村の年収は1000元、1日50円足らずで、おかゆをすすり生きていた。読み書きもできず、自分一人生きていくのも精一杯だ。

 何度も行ったり戻ったりした。幼き今にも消え入りそうな「命」を包むように抱き上げ、彼はつぶやくように言った。

 『私と同じ、食事でいいのかい』

 拾われた女の子は、ミルクも買えない環境でつつましく生きる青年である父親の元で、一緒におかゆを食べ育っていった。
 少し病弱ではあったが、5歳のころから炊事・洗濯・草刈りを手伝い、父親を助け、近所の人たちにも聡明で優しい子として可愛がられた。

 小学校へ入り、学校での楽しい出来事、「マッチ売りの少女」や「白雪姫の物語」と白雪姫のはく白い靴下と赤い靴が印象深かった事などを楽しそうにおしゃべりし、また、習った歌を父親に披露し、ささやかな幸せとともに親子のきずなは自然に深まっていった。

 女の子が小学校2年の春、前触れのない突風で桜の花は散り急いだ。

 8歳になった女の子は、突然鼻血を出し、足には赤い斑点、医者に「急性白血病」と診断された。

 治療費30万元、およそ400万円、父親の年収では300年かかる金額だ。

 治療費を借りるため親戚、友人を駆けずり回ったが、その金額は微々たるもので、その心労から、やせほそる父親を見て娘は言った。

 『私は死にたい。すでに捨て子のとき死んでいたかもしれない。退院させてください。』

 父親は言った。『家を売るから大丈夫だよ。』
 『知ってるの。家を売ったら1万元ね。』娘は言った。

 父親を説得し、読み書きできない父親に代わり8歳の少女は、病院に書類を提出した。

 「私は娘への治療を放棄します」

 父は慟哭した。

 実母に捨てられ、生まれて一度も靴下さえはいたこともなく、かゆをすすり満足な食事もなく、さらに忍びよる大きな影のような病魔が襲いかかり、むしばみ、喰いちぎろうと猛烈な勢いで、か弱き小さな身体に、鋭い牙を、たて始めた。

 どうしようもない運命と不条理さに、父親の、獣のような声ともならない深く悲しい泣き声は、天を突き刺した。

 退院後も、せまりくる病魔と闘いつつ、身体を拭く事など身の回りのことは、すべて自分でやり、さらに炊事など家事も入院前と変わらず父親を手助けした。


 少女は父親に、新しい服を買ってくれるようにと、お願いした。

 それは、「私が死んだ後、お父さんが悲しまないように、二人一緒の綺麗な写真を撮り、残しておくために。 私はお父さんのいい子であったこと」が理由であった。
 少女の書いた詩に「我喜欢走我的路」がある。
 私の進む道は、ほかの人とは違うが「私は私の道を歩くのが喜びだ」

 少女は、もう生からも死からも自由であるかのように見えた。
 生が善で、死は悪なのだろうか。
 生まれることが喜びならば、寿命で死んでゆくのも喜びと考えられないこともない。

 小学校へ行く途中、少女は倒れ、通学することもなくなり、死の影が寄り添うようになった。

 そのころ、新聞記者が、この親子の事を病院から聞き、記事として書いた。

 報道され、治療費の2倍以上の金額が、わずか10日間で親子の元に集まった。

 別の優秀な中国の医師団のいる病院に再入院し、治療は始まった。

 脊髄に針をさされ激痛に襲われても身体ひとつも動かさず、度重なる化学療法にも耐え、完璧な回復が見込めると医師団も思った。

 しかし、2ヶ月にわたる化学療法は衰弱していた小さな身体には負担が大きく、合併症も起き、2005年8月22日、少女は天国へ旅たった。

 父親は大声で嘆き悲しみ泣き叫んだ。まさに慟哭であった。

 その慟哭は病院中に鳴り響き、いつまでも続き、事情を知らないものまで切り裂かれるような悲しみが襲った。


 冷たくなった8歳の少女の小さく細い足には生まれて初めてはく、

 『白い靴下と赤い革靴が履かされていた』






 
 この少女の実話、また下のサイトを総合すると8歳にして「悟り」を開いたのではないかと感じさせるほどである。

 少女の話から『死ぬ前に死ぬ人は、死ぬときに死なない』(ハイデガー)・『生きることは、生涯をかけて学ぶべきことである。そして生涯をかけて学ぶべきは死ぬことである』(セネカ)という言葉を思い出した。

  
 ブログやgooニュースなどを参考にしました。下記のサイトで詳しく書かれています。

 特に少女の書いた詩、遺書(すべての事に感謝したい。残った寄付金は同じ病気の苦しみの人のために赤十字へ。お父さんが自殺するといけないので見張っていてほしいなど)には感動します。


http://bbs.soff.net/thread-236536-1-20.html

http://bsou.seesaa.net/article/31943569.html (宋 文洲さんのブログ)

http://news.goo.ne.jp/article/nbonline/business/nbonline-117394-01.html








上記は、『海さん』のブログから許可を頂き転載致しました。
なお、この記事はHPの日記にも掲載いたしました。





           

コメント (4)
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