MEMORANDUM 今日の視点(伊皿子坂社会経済研究所)

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#2219 年金制度の損得勘定

2022年07月29日 | 社会・経済

 PGF生命が、今年還暦を迎える1962年生まれの男女2000名を対象に行った「2022年の還暦人に関する調査」によると、60歳以降の人生で不安に思うことの1位は(回答者の半数以上が挙げた)「収入の減少」だったということです。

 やはり、老後の生活にまず必要なのは「お金」ということ。先立つものがなければ、生活の充実もヘッタクレもないということでしょう。因みに、心配事の2位は「身体能力の低下」、3位は「断能力の低下」と健康面での不安が続き、僅差の4位は回答者の約4割が挙げた「年金制度の崩壊」というものでした。

 確かに、令和4年度の国民年金と厚生年金の受給額は昨年度より0.4%減額になるとされており、これを金額に直すと(厚生年金のモデル夫婦世帯で)年間1万836円の減額となる計算です。

 今回だけならいいにしても、もしも支給される年金の額がこうして毎年減額されていくとしたら、老後の生活は本当に大丈夫なのか?還暦に足を踏み入れたばかりの世代に、「年金制度の崩壊」を不安視する声が上がるのもわからないではありません。

 実際、メディアなどが行う各種世論調査を見ても、昭和30年代生まれの「逃げ切り世代」はまだしも、それ以下の若い世代ほど「年金制度の破綻」を危惧する声が大きいのは事実のようです。

 さて、こうして政府の言う「年金100年安心プラン」は眉唾ものと捉える若者たちが増える中、一方で、専門家からは「それでも年金制度への加入にはメリットがある」との指摘も聞こえてきます。

 若い世代を中心とした年金への不信感の高まりを踏まえ、総合情報サイトの「幻冬舎GOLD ONLINE」が、『現在の年金受給額「月15万円」だが…現役世代は「得している」といえるワケ』と題する記事を掲載しているので、参考までに紹介しておきたいと思います。

 日本の年金は賦課方式を採用しており、現役世代が納めた保険料を年金受給者が受け取る仕組みとなっている。このことから、超少子高齢社会にある日本では「支える側(現役世代)の負担」が大きくなる一方であることは自明であり、「年金制度は崩壊している」とよく論じられると記事はその冒頭に記しています。

 今の高齢者が受け取っているように、自分たちが受け取れるかはわからない。それなのに年金を支払い続けるなんて、生まれた年代によって不公平だ…といった不満がしばしば示される。実際、世代間格差の問題は深刻だと記事はしています。

 「支える側」の若者からは、「現役世代は得をしている」という声が上がっている。そうした中、まず考えてみる必要があるのは、「もしも公的年金制度がなかったらどうなるのか」ということだというのが筆者の指摘するところです。

 厚生労働省の資料(『いっしょに検証!公的年金 ~財政検証結果から読み解く年金の将来』)には、「公的年金制度があってもなくても、高齢者は誰かが扶養する必要があります」と記されている。実際、現在の受給世代が若かった頃は、多くの人が自分の収入から親を扶養(私的扶養)していた。子どもたちでお金を出し合って、親たちの生活の面倒を(一から十まで)見ていたということです。

 一方、現在では公的年金制度が充実し、生活の支えとなることで、個人で親を扶養する負担は昔と比べれば(ずいぶんと)軽くなったと記事は言います。これは、自分たちの収入で親を養っていたものが、公的年金(社会的扶養)に移行していったからだというのがその理由です。

 もし公的年金がなかったら、私たちは両親や祖父母を自分たちで扶養しなければならない。兄弟姉妹が多くいた時代は、みんなで手分けをして両親や祖父母を自力で扶養することができた。しかし、少子高齢化が進んだ現在、高齢者の私的扶養には、昔以上の大きな負担が必要になると考えられると記事はしています。

 (一度冷静になって)自分が受給する側になったときの(もらえる額の)話ばかりでなく、「支える側」として考えてみる必要がある。超少子高齢社会となり高齢出産も増えた現代社会において、年金がなければ、親を扶養する金額が大きな負担となる。親を扶養する負担が大きければ、子育ての金銭負担とも重なり、社会は成り立たなくなる可能性すらあるということです。

 さて、「自分が支払った金額」と「自分がもらえる金額」を比較して、「損だ」「得だ」と論じられることの多い年金制度ですが、本来、年金制度とは、「貯金」や「投資」とは性格を異にするもの。世代をまたがる「相互扶助」のための仕組みとして多くの公的資金が投入されており、社会の安定を確保する機能を担う仕組みとして大きくとらえる必要があるということでしょう。

 実際、政府も(そうした理由から)この年金制度を破綻させることはできないし、社会の変化にあわせてかたちを変えても(有効に)存続させるので、「現行の制度のままでは大変なことに…」という心配は無用だと、記事はその結びに記しています。

 確かに、誰もが平等に歳をとっていく。そうした現実を考えれば、老後の暮らしは「自己責任」と、突き放して済む問題ではありません。

 とは言え、これからの老後の生活には「2000万円以上が必要」という政府の試算もあるようです。子供や家族ももはやあてにはならないこの時代。個人としては、年金に頼りきりにならないよう(しっかり)準備をしておくことが益々求められるのだろうなと、記事を読んで改めて感じたところです。

 



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