今日の話題はぐっとお気楽に、自動車のデザインの流行について。
フロントマスクからボンネットにかけての(なんとなく)ノッペリした醤油顔が特徴のHVやEVが幅を利かせている最近の自動車業界。燃費を意識した空力重視のスタイルに薄目のLEDヘッドライトを配したそのデザインが、みんなプリウスやクラウンに見えてしまう現状は、昭和のマイカーブームを知る身としては残念でなりません。
まあ、坂道系アイドルグループを見ても、どれが桜坂でどれが乃木坂だかさっぱり区別がつかない我が身を思えば、齢を重ねるというのはそういうものかもしれません。「昔はよかった…」というワケでもありませんが、(とはいえ)ミニバンやSUV、そしてファニーな顔をした軽自動車ばかりが路上で幅を利かせているのを見ると、何となく寂しい気分になるのは事実です。
思えば、車雑誌が若者たちの間で飛ぶように売れていたバブル直前のひと時、赤いファミリアやワンダーシビックなど、価格も手ごろなFFハッチバックが20代の若者たちの定番でした。そして、その後に訪れたスキーブーム。バジェロやハイラックスサーフなどのオフローダー人気が高まる一方で、トレンドを強力に引っ張ったのは何と言ってもメルセデスの300TEやボルボエステート、国産ではスバルレガシーなどに代表されるステーションワゴンでしょう。
ハッチバックやRVよりも値段は少しお高めでしたが、その分全体的にソティスフィケイトされ、大人の香り漂うたたずまいにハッチバックを卒業したバブル期の若者たちが飛びついたのも時代の流れというものだったような気がします。
さて、ヨーロッパなどに出かけると今でも路上で新車のステーションワゴンをよく見かけるし、なかなか「カッコいいな」とも思うのですが、どういうわけか令和の日本ではほとんど目にする機会を失いました。乗用車感覚で走れて足元もしっかりしている。そのうえ、荷物も積めるしスタイリッシュとくればもっと人気があってしかるべきとも思うのですが、なぜ彼らは日本の巷から消えたのか。
そんな疑問に答え2月14日の自動車情報サイト「くるまのニュース」が、『かつて大ブームとなった「ステーションワゴン」なぜ人気低迷? “絶滅危惧種”となった最大の理由とは?』と題する記事を掲載しているので、指摘の一部を残しておきたいと思います。
昨今、国内外の自動車メーカーがSUVを数多くラインナップする一方で、「ステーションワゴン」は消えゆく存在となっている。1990年代から2000年にかけての全盛期、各メーカーがラインナップしていたステーションワゴンは、現在ではスバル「レヴォーグ」とトヨタ「カローラツーリング/カローラフィールダー」のわずかに2車種しかないと記事は指摘しています。
気づけば(ファミリー層を中心に)車高が高くて車内の頭上空間も広いSUVがもてはやされるようになり、国産ワゴンは数車種にまで激減。少し前までは、ホンダ「シャトル」やマツダ「マツダ6ワゴン」が販売されていたが、(コロナ禍かを経て)どちらもすでに生産終了に追い込まれたということです。
なぜ国産ステーションワゴンはここまで廃れてしまったのか。日本でステーションワゴンのブームの火付け役なったのが、1989年に登場したスバル「レガシィツーリングワゴン」。折からのスキーブームに乗り、それまでの“商用バンの派生モデル”というイメージを一新したと記事はしています。水平対向ターボエンジンに4WDを組み合わせた “高性能ワゴン”という新ジャンルを生み出した。このスバルのヒット作を皮切りとして、各社が次々とステーションワゴン市場へ参入するほど盛り上がったということです。
その頃のステーションワゴンのメリットといえば、低い車高でセダンのような優れた走りや乗り心地を実現しつつ、荷物をたくさん積むことができる広いラゲッジスペースを備えているという実用性。当時も、荷物をたくさん積めるミニバンやワンボックス、本格四輪駆動車「クロカン」などがあったが、これらは重心が高いこともあって、セダンのような走行性能や乗り心地は期待できなかったと記事は解説しています。
そのため、走行性能・快適性能・積載性能を兼ね備えたステーションワゴンが求められたのだが、現在はどうだろうか。技術の進化もあり、現在は重心が高いSUVでも走行性能を高めることが可能となった。SUVであればラゲッジスペースを広く確保することもできるほか、高めの車高で乗り降りしやすく視界も良好だと記事は言います。 最低地上高も高く設定されていることから、悪路の走破性も期待できるとあって各社がSUVを中心とした商品ラインナップに舵を切り、魅力的なモデルが多数登場したということです。
どんなシーンでもオールマイティに活躍するSUVの台頭により、背が低いステーションワゴンを選ぶ理由が徐々に薄れていった。それに伴い、国産メーカー各社がこの分野から撤退したというのが、現在のステーションワゴンを取り巻く状況に対する記事の認識です。総合安定性というハードルを技術で乗り越えた日本の自動車メーカー。気が付けばステーションワゴンはその存在価値を失い、使いやすさや実用性に勝るSUVが台頭していたというところでしょうか。
結局のところ、ムードやスタイルよりも実用性。経済の縮小に合わせ、コスパを重要視するようになった日本の消費者の嗜好が、現在の状況を作り出したということなのかもしれません。
確かに、視界が良くて乗っていて楽ちん、たくさんの荷物を積めるミニバンやSUVは合理的な選択と言えるでしょう。しかし、今の若い人たちにも、平たくて大きい車に乗ることのステータスやワクワク感のようなものも感じて欲しいなぁと考えるのは、昭和世代のノスタルジーというものなのでしょうか。
一方、景気の良い欧米には現在でもステーションワゴンの需要があり、輸入車ではさまざまなモデルが選べるのもまた事実。街を走るクルマがSUVばかりになった今だからこそ、あえてステーションワゴンに乗ってみるのもいいかもしれないと結ばれた記事の指摘を、私もさもありなんと読んだところです。