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MEMORANDUM 今日の視点(伊皿子坂社会経済研究所)

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#2829 退職代行はなぜ利用されるのか?

2025年05月20日 | 社会・経済

 東京商工リサーチが2024年6月に発表したアンケート調査で、全国の企業5149社の人事担当者に対し、「2023年1月からの期間に退職代行業者を活用した従業員の退職はありましたか?」との質問を行ったところ、全体の9.3%が「あった」と回答したということです。

 これを「多い」と見るか「少ない」と見るかは人ぞれぞれでしょうが、「辞める」という意思表示すら自分でできないのであれば、そもそも本人が社会人としての適格性を欠いているか、それともそこまで追い詰められているのかのどちらかなのでしょうか。

 退職の意思を本人に代わって企業に伝える「退職代行」。5月15日のTBSニュースによれば、1年のうちで最も忙しくなるのが5月で、特にGW明けに利用者が増えるとのこと。依頼者の男女比はおおむね半々で、利用者の6割が20代だという話もありました。

 採用や人事異動で(新しい)職場に入って1か月と少し。自分なりに頑張ってみたけれど、「どうも、思っていたのと違う」という感覚が膨らむのはこの頃かもしれません。一方で、大学の同級生や同期の人たちからは、SNSなどを通じて職場での充実した仕事ぶりや楽しそうな人間関係なども聞こえてきたりして。「今ならまだやり直せる」…そんな思いに駆られて連絡を取るのが、ネット広告で見つけた退職代行業者なのかもしれません。

 企業の人手不足感が高まる中、第2新卒などの若手を中心に売り手市場となり、仕事を辞めても転職しやすい状況が続いているのもまた事実。中には「もう職場の人の顔も見たくない」という人もいるのでしょうが、多くの場合は(お世話になった会社に)「退職を伝える」というストレスの伴う作業を人に変わってもらえる(つまり、お金で解決できる)なら…と、気楽に利用されているような気もします。

 とはいえ、代行業者を通じて退職を伝えられるというのは、職場の上司や同僚人事担当者にとっては(それなりに)ショックな出来事かもしれません。「何がいけなかったのだろう」とか、「そこまで嫌われていたのか」など思いを巡らし、「最近の若いもんは…」と家に帰って家族に愚痴る管理職も多いことでしょう。

 退職代行を利用して辞めた元従業員に対し、人事担当者はどういう印象を持っているのか。5月15日の東洋経済ONLINE(『退職代行は大迷惑!人事部の本音に納得の理由』によれば、アンケート調査の結果、(去られた会社サイドからは)多くの厳しい言葉が聞かれたということです。

 「お客様や関係者の迷惑を省みず突然行方をくらますのは、社会人としていかがなものか」 「退職代行を使うのは、『私は礼儀も常識もなく、最低限のコミュニケーションもできません』と宣言しているようなもの」などなど、我々昭和世代の目で見ると、「それはそうだよな」と頷けるような言葉が続いています。

 しかしその一方で、退職代行の利用を生む会社側の問題点を率直に反省する声も多かったと記事はしています。「若手が上司に相談せずいきなり辞めるというのは、明らかに職場のコミュニケーションに問題があるということ」「採用のあり方を見直す警鐘だと受け止めている」との受け止めもあったということです。

 退職代行を利用した退職者に無理やり連絡を取っても、結局、彼(彼女)が会社に戻ってくることはまず考えられない。で、あれば、「退職代行の利用」という結果を嘆いたり相手を非難したりするよりも、その原因となっている自社の問題点に目を向けるほうがよほど今後のプラスになるのは間違いありません。

 インターネットを開けば、「OITOMA」「SARABA」「MOMURI」「辞めるんです」など、気の利いた(ある意味「お気楽」な)ネーミングのたくさんの退職代行業者のネット広告が並んでいます。それぞれのサービスにどのような違いがあるかはわかりませんが、こうしてたくさんの業者が林立するのも、それだけの市場(というか需要)があればこそ。自社の将来を担う若者が「退職」の二文字を言い出せない、職場の誰にも相談できない環境になってはいないか?…経営者の皆さんはもう一度チェックしてみる必要がありそうです。



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