MEMORANDUM 今日の視点(伊皿子坂社会経済研究所)

 伊皿子坂社会経済研究所のスクラップファイルサイトにようこそ。

#2220 ベルマーク運動の罪

2022年07月30日 | 教育

 6月19日の女性のための総合情報サイト「週刊女性PRIME」に掲載されていた、『コロナを言い訳に断ってきたイヤなこと』と題する記事。「全国の女性1000人に聞いた(再開して欲しくないイヤなことの)TOP5」の第1位は、195人が挙げた「職場の同僚や友人との飲み会」の再開というもの。そして僅差の第2位は、こちらも全体の約2割(121人)の女性が挙げた、「脱マスクでメイクが必要に」なったというものでした。

 ここまでは、「なるほどな」「やっぱりな」という感じだったのですが、続く第3位が「子どもの学校行事の再開」というもので、堂々の131票を獲得していることには若干の驚きを禁じ得ませんでした。

 回答には「PTAの会合や運動会などのイベント準備が煩わしい」との悲鳴や、ママ友との付き合いの面倒くささを訴える声が多数残されているということです。学校でのPTA活動などについては、以前から活動内容の不合理性や運営の不透明さから「時代遅れ」との指摘を耳にしてきましたが、さすがにこれほどまでに(世のお母さん方に)嫌われているのは驚きといえば驚きです。

 確かに、周囲の(働く)お母さん方に聞いても、PTAの活動や役員への就任を強制されたり、平日の昼間の会合に出席を求められたり、さらには「誰得(誰が得するのかわからない)」なイベントの準備をさせられたりと、不満は募るばかりのようです。

 そんな話を聞いていた折、6月25日の総合経済誌『週刊東洋経済』に、「ベルのマークは非合理的な社会への警鐘」と題する興味深い記事が掲載されているのが目に留まったので、小欄にその内容を残しておきたと思います。

 子どもの学校の代表的なPTA活動のひとつ「ベルマーク運動」によって、ゴールデンウィークの貴重な一日をつぶされたという愚痴を友人から聞かされたと、筆者は記事に記しています。

 ベルマーク運動は、各校の備品整備を目的に、文部科学省の認可を受けた財団が行う活動として広く公立学校に定着している。協賛企業の商品に付いているベルマークを集めて財団に送ると、1点を1円に換算して協賛企業から資金が提供されるというもの。PTAはその資金を学校に必要な各種備品の購入代に充当する仕組みだということです。

 記事によれば、この仕組みには60年以上の歴史があるということで、(そう言えば)私自身も当時の担任の先生に言われ、母親の目を盗んではお菓子や食品など、家じゅうの商品から手当たり次第にマークを切り取ったのをよく覚えています。

 子どもの数が多く、学校の備品整備が追い付いていなかった時代、この制度が一定の役割を果たしたのは確かだろうと、筆者は記事に綴っています。

 しかし、大人になって、この活動が、学校にマークを持っていけばそれで終わりではないことを知った。集まったマークを協賛企業ごとに仕分けし、点数を計算して、それぞれの会社の整理袋に入れたうえで、財団に送る必要があるということです。

 一般的に、この作業を担っているのはPTAで、学校が開いている平日の昼間に、親が動員される学校も多いと記事はしています。

 数十人の大人が半日作業しても、得られる経済的価値はごくわずか。その拘束時間分を働いて時給を寄付した方が合理的という声にも納得できる。増してや最近は共働きの家庭も多い。わざわざ有給休暇を取得して、子どもと遊ぶ時間を犠牲にしてまでもやるべき作業ではないだろうというのが筆者の見解です。

 それでは、全国でこの運動を中止したらどうなるのか。子どもと外出する時間が増えて消費が増えるかもしれないし、仕事をして所得が増える親がいるかもしれない。どちらもGDPの増加に寄与するもので、協賛企業にとっても(外装のデザインコストなどを考えれば)寄付などの別の形で社会貢献をした方が効率がいいはずだと筆者は話しています。

 友人の子供の学校のPTAでも、過去に(一部の親たちから)運動廃止の提案があったが、「先人の気づき上げてきたものを自分の代で終わらせられない」との反対でとん挫したとのこと。いかにも日本的で笑ってしまうが、停滞する日本にはこの手の非効率・非合理が山のようにあるのだろうというのが、この記事で筆者の指摘するところです。

 さて、私も(私の親たちも)子どもの頃に参加させられてきたベルマーク運動。令和の時代まで延々と続けられてきていることがまず驚きですが、その間のデジタル技術の進歩にもかかわらずシステム自体が全く変わっていないことにも、学校という場所の持つ「保守性」のようなものが伺われる気がします。

 もとより、ベルマークのような取り組みについては、「みんなで集め合う気持ちが大切なのだ」といった「精神論」を持ち出す人もよく見かけます。しかし、戦時中の「千人針」ではないのですから、子どもたちによる廃品回収やペットボトルのキャップの回収なども含め、同調圧力を使って「努力」を無駄遣いするこうした効率の悪い取り組みはさっさとやめるべきだと私も思います。

 因みに、ベルマーク運動を主宰しているベルマーク教育助成財団は文部科学省認可の公営財団公人で、その設立や運営には朝日新聞や文部科学省OBなどが大きくかかわっていると言われています。

 半世紀以上に及ぶ活動で全国レベルのネットワークや利益の仕組みが固まってしまうと、市町村レベルの教育委員会や個別の学校長、ましてや一介のPTA会長では、なかなか簡単に「一抜けた」とは言い出せないプレッシャーのようなものがあるのでしょう。

 しかし、元来、学校教育に必要な備品の整備は自治体の役割のはず。ベルマーク運動などの保護者による労働奉仕に頼っていてよいはずがありません。コロナの影響も一段落したこの際、PTAの会員諸氏は(子どもを人質に取られているから…などとは言わず)はっきりと声を上げるべきだと思うのですが、果たしていかがでしょうか。



最新の画像もっと見る

コメントを投稿