江藤拓農水相が地元佐賀市内で開いた「政経セミナー」で、「コメは買ったことがない」「コメは売るほどある」などと発言し、批判を受けている問題。国会で陳謝し続投の意向を示していた江藤農水相ですが、野党の追及や世論による非難の声を受け、一転、5月21日に辞表を提出しました。
高止まりしている米価の問題を抱えたままの大臣就任からおよそ7カ月での辞任劇に、任命権者である石破茂首相への責任追及の声が上がる一方、野党各党の皆さんは「自滅だな」「してやったり…」とにんまりしていることでしょう。
米価問題については、備蓄米の放出といった対策は講じたものの、米価を維持したいJAや消費者を顧みない農林水産省の「やる気」が全く感じられず、私自身「大臣更迭は適切な判断」とは思うのですが、その一方で、このくらいの「失言」を理由に担当大臣の首が飛ぶというのも「いかがなものか」と思わないではありません。
ネット情報に煽られて「やめろ、やめろ」と感情的に騒ぎ立てる野党やメディアを見ていると、「政治の大衆化」というのはまさにこういうことなのだろうなと感じます。また、例え「人気商売」とはいえ、どこから飛んでくるかわからな批判に常にびくびくしながらでは、政治家としていい事なんてとてもできないのではないかとも思うところです。
こうした状況に対し、5月21日、関西テレビの情報番組に呼ばれた橋下徹元大阪府知事は、「何かあればすぐ辞めろとなってしまうのは危険」と指摘したと伝えられています。
江藤農水相の「コメ」に関する失言について問われ、「謝って許されないのかなぁ」と首を傾げた橋下氏。「政治を見るときには、表面的な言葉だけで見るんじゃなくて、政策能力で見なきゃいけない」「きれいな言葉ばっかり発して、能力ない人でいいというのか。いい言葉を使ったところでコメの価格が下がるわけではないし…」とコメントしたということです。
さて、そう言えば江藤大臣の後任には、メディアやネット世界に対し強い発信力を持つ小泉進次郎元環境相が就任するとのこと。夏の参議院議員選挙を前に、満身創痍の石破茂首相もいよいよ(大衆対策の)「切り札」を切ってきたということでしょうか。
5月22日の読売新聞オンラインは、農水大臣への小泉進次郎氏の起用について、与党からは局面打開を期待する声が相次いだと報じています。高止まりが続く米価の情勢は、6月の東京都議選や夏の参院選の行方に直結する。小泉氏には短期間で「結果」を出すことが(政治的に)求められているところであり、その手腕(への期待)が選挙の結果を大きく左右するということでしょう。
記事によれば、小泉氏は2015年10月から党農林部会長を務め、全国農業協同組合連合会(JA全農)の改革に取り組んだ実績があるとのこと。公明党も「ビジョンと発信力がある」(斉藤代表)などと小泉氏への期待を隠さないということです。
これに対し一方の野党は、抜群の知名度を誇る小泉氏が野党の追い風ムードを一変させかねないと警戒していると記事はしています。国民的に人気が高い小泉氏に「農相として成果を上げて参院選で全国行脚されたら厳しくなる」(日本維新の会中堅)というわけですが、もっとも、野党議員の多くは短期間で米価を引き下げるのは困難ではないかと見ているということです。
国民民主党の玉木代表は党会合で「適正価格のコメを多くの消費者に届けることを速やかに示さないと、大変厳しい状況にすぐ直面する」と指摘。また、立憲民主党の野田代表も、記者団に対し「コメの価格形成や流通の改善などで徹底した審議を進めていく」と語ったとされています。
さて、ここで気になるのは、野党の皆さんは本当に(国会議員=全体の奉仕者として)消費者の立場に立ち、政府の施策が成果を上げコメの価格が(早期に)下がることを(真剣に)求めているのかということ。
国政選挙を前に少数与党が(ある意味「国民生活に直結する」)課題を抱え四苦八苦している状況にあって、与党が成果を上げない(つまり米価が下がらない)方が野党に都合がいいのは分からないではありません。とはいえ、新農相が再び舌禍に問われ世論に叩かれることを期待したり、ましてや政策が思い通りにいかないことを望んだりしていては、日本の政治自体への信頼を失うことになるでしょう。
国政に携わる皆さんには是非、政局を優先することなく、党利党略を捨て本当に国民の利益を考えて(長期的な視点から)対応していただきたいと考えるのですが、果たしていかがでしょうか。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます