NHK BSシネマ 2020.10.2
Le vent se lève, il faut tenter de vivre
風立ちぬ、いざ生きめやも ポール・ヴァレリー
山口百恵、三浦友和共演の第4作で、堀辰雄の代表作とされる小説を元に、戦争という時代の流れに翻弄されながらも,純愛を貫き通す青年と少女を描く感動のドラマ。
太平洋戦争中の昭和17年、軽井沢の別荘で療養する元外交官の娘節子の元に集まる学生たちのなかに、ひそかに節子に好意を寄せる青年達郎がいた。
結核に侵され始めた節子は、軽井沢から八ヶ岳山麓の富士見のサナトリウムに入院する。やがて恋に落ちた2人は婚約する。
しかし、節子の体は次第に悪化していく。それを見守り続ける達郎。戦争が進むにつれ、学徒動員が行われることとなる。達郎も諏訪湖の連隊に入ることになり、別れが待っていた・・・。
【監督】若杉光夫
【原作】堀辰雄
【音楽】小野崎孝輔
【出演】
水沢節子・・・山口百恵
結城達郎・・・三浦友和
水沢欣吾・・・芦田伸介
【製作年】1976 東宝製作
初めての出会いの頃、節子にお見合い話が持ち上がるが、節子は邪魔をしてほしいと達夫に頼む
中央右奥、八ヶ岳連峰 病室からは八ヶ岳連峰が望める。
富士見のサナトリウムの二人。その頃の結核の治療法は栄養を取り、安静にし、体に負担を与えないようにするくらいであった。昼でも夜でも窓を開け、新鮮な空気を取り入れる。
結核の治療法が劇的に変わったのは戦後、1960年頃から始まった抗生物質の利用によるところが大きい。
達郎は散歩の途中「風立ちぬ、いざ生きめやも」と節子に話しかける。
サナトリウムの庭であやとりをして、くつろぐ二人
達郎は父親から、節子は病弱だからと結婚を反対されていた。しかし、戦地へ行く兄が学徒の達郎に生き抜く強い気持ちを持たせるようにと父にアドバイスし、達郎は結婚を許される。急ぎ富士見に戻った達郎は節子へ婚約を告げる。
看護婦さんから婚約のお祝いを受ける節子
【感想】
薄幸の節子の役を演じる山口百恵が好演している。結核という不治の病を患う翳りのある役に良く合っている。
三浦友和も節子に対する真摯な愛を貫き通し、献身的に尽くす青年の役を見事にこなしている。
堀辰雄原作の小説「風立ちぬ」は、結核を患う女性に対する思い、美しい自然とサナトリウムなどの様子が子細に書かれ、生と死を超越して幸福を求めていく過程が名文で綴られた傑作であるが、この映画にもそうした雰囲気が出ている。
また、小説には、一切書かれていないが、戦時中、徴兵され戦地へ向かう青年達の当時の思いも多く描かれている。「皆にお目出とう,頑張って」と言われて出陣しなければならなかった気持ちが身に染みて来る。戦時の雰囲気が実際にどんなものであったか分からないが、良く表現されているのではないか。