めいすいの写真日記

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森の中のコンサート カティア・ブニアティシヴィリ

2014-08-18 | クラシック音楽

  今日の未明、NHK BSプレミアム の「プレミアム コンサート」で放映された「カティア・ブニアティシヴィリ 森の中のコンサート
  彼女はグルジア生まれの27歳でパリ在住、将来を期待される美貌のピアニストです。
 

    鳥の声も聞こえてきそうな森の中に小さな舞台を造り、40人程度の観客を前に行った2013年7月に行ったコンサートです。
 場所はドイツ/ブランデンブルク州/ザクロブァー・ヴァルト。ヴァルト(wald)とは森のこと
 ですから、本当にに森の中で演奏したらしい。実際、注意深く聞くと鳥のさえずりがマイクを通して入って来ているのが分かります。
  森の中のでのピアノ演奏というと、ホールと違い天井がないので残響は?と思うけれど
 使っているスタインウェイのピアノは、良い音で取れていました。
  このように全くの自然の中で演奏会を行うというのは、おそらく本人の意思なのでしょうから、きっと本人のこだわりがあったのでしょう。
 しかし、どうして森で行ったかという説明はありませんでした。

 ちょっと心配したのは、強く演奏した時、ピアノの反響板に写る影が揺れること。それは、ビアノを置いている舞台が不安定なのでは
と思いました。また画面で多くの虫が飛んでいるのが分かります。でも、彼女の素晴らしい演奏を聴く上で支障はありませんでした。

  

                            カティア・ブニアティシヴィリ


 この放送では、曲を演奏する前にホテル?でのインタビューによる本人の曲の説明があります。それが演奏への理解を助けてくれました。
 ピアノ演奏だけでなく、言葉での説明がしっかりできる人は、多くの場合、演奏力がある人だと私は思います。

 彼女は姉と一緒に母親からピアノを習ったとの説明があり、「この演奏を母に捧げます」と話ました。
モーツアルトの父親レオボルト、ベートーヴェンの父親、あるいはパガニーニの父親を思い出しますが、女性ピアニストには、母親というのが
興味が持たれるところです。母親が相当なピアニストだったのでしょう。


 曲目は、
 1.カンタータBWB.208 「狩りだけが私のよろこび」から
  「羊は安らかに草を食み」                  バッハ作曲
 2.四季 作品37bから「10月 秋の歌」     チャイコフスキー作曲
 3.スケルツォ 第2番 変ロ短調 作品31   ショバン作曲
 4.ベンガルマスク組曲から第3曲「月の光」   ドビュッシー作曲
 5.ラナ・ゴゴベリーゼによる映画から
   「アーモンドの花咲くとき」                   ギヤ・カンチェリ作曲
 6.間奏曲 変ロ長調 作品117-2        ブラームス作曲
 7.ラ・ヴァルス                      ラヴェル作曲
 8.練習曲 嬰ハ短調 作品2-1                 スクリャービン作曲
 9.練習曲 嬰ハ短調 作品25-7         ショパン作曲
10.スラブ舞曲 ホ短調 作品72-2   (連弾)    ドボルザーク作曲
11.ハンガリー舞曲第1番ト短調   ( 〃 )    ブラームス作曲
12.「ベトルーシカ」から 3つの楽章         ストラヴィンスキー作曲
            ロシアの踊り
            ペトルーシカの部屋
            謝肉祭の部屋
13.あなたは私を愛していないの?
                       グルジア民謡/カティア・プアティシヴィリ編曲
14.パープシコード組曲 第2日か HWV.434から第4曲「メヌエット」
            ヘンデル作曲/ウィルヘルム・ケンプ編曲
(アンコール)
  リベルタンゴ  (連弾)               ピアソラ作曲

でした。バラエティに富んだ選曲からも豊かな才能をうかがい知ることができます。

 1曲目のバッハのカンタータは、時に耳にする曲なので、穏やかな気持ちで演奏を聴く気持ちになります。
本人の言葉「このカンタータは、地上に生きることの素晴らしさ、生あるものを愛する素晴らしさを表現しています。」
 3曲目のスケルツォ 第2番、とても良い演奏と思いました。先日のクラシック倶楽部で放映された、現在では巨匠と呼ばれて
いるマレイ・ペレイアが同じ曲を弾きましたが、それよりも、ずっとメリハリの利いた演奏で、ショパンの力強い部分と叙情的な部分を
上手く表現していて、印象深く聞くことができました。「スケルツォは楽しい子供時代を思わせますが、一方で悲劇的でもあります。」
とは、本人の言葉です。
  4曲目の「月の光」では、「母が 他の世界へのあこがれを抱くようになった頃-その夢見るような最初の瞬間を表現しているのが
ドビュッシーの音楽です」と本人の説明。でも、それは自分自身のことではないのですか?
 5曲目、ブラームスの間奏曲。「ピアノを初めてブラームスを多少知るようになった頃から、彼は厳格な作曲家だとよく言われましたが、
理解できませんでした。彼の音楽は、むしろとても感情的です。内気でシンプルに表現するのが苦手だったのだと思います。この間奏曲
は、成熟した愛を描いています」。この間奏曲の説明には合っているような気がします。
  6曲目「ラヴァルス」はラヴェルの管弦楽曲として知られている曲。「ラヴェルの《ラヴァルス》は、それほど好きではないのですが、
母のために練習しました。」との本人の話ですが、ピアノ曲では技巧を必要とする曲。ピアノの鍛錬の曲だったのでしょう。この演奏会
では彼女の凄腕を見せることになったと思います。
 12曲目の「ペトルーシカから 3楽章」は、バレエ音楽「ペトルーシュカ」からストラヴィンスキーがピアノ独奏用に編曲した曲で、
高度な技巧が要求される難曲。 
ややもすると無機的な表現になってしまいそうですが、人形ペトルーシュカの楽しげで諧謔的な動きを見事に表現しています。
おそらく、カティア・ブニアティシヴィリが、この演奏会の中心に据えた曲と思います。その演奏ぶりには、本当に唖然とせざるを得ません
でした。この演奏会での秀逸ともいえる出来映えでした。
 「ストラヴィンスキーの《ペトルーシュカ》は 何度も練習してきた曲で、私にとって音楽的に とても豊かな歴史と大切な意味合いが
あります。17歳の時、ヴェルビエ音楽祭でテミルカ-ノフの指揮で演奏しました。彼を通じて、この曲の管弦楽版を学べたなんて
幸運だったのでしょう。
オケの音色が色彩のように耳に残っていて、その後ピアノだけで弾くときも大きな助けになりました。」との本人の話がありました。

                                                 ピアソラ作曲   リベルタンゴ              

   姉(グヴァンツァ・ブニアティシヴィリ)とのドボルザークとブラームスの2曲の舞曲の連弾は、姉妹だけあって息の合った連弾を聞かせ
てくれました。そして、ピアソラのリベルタンゴは本人が「いつも即興的に弾く曲」というだけあって即興的な演奏を見事に聴かせてくれました。

 繊細で華麗で優しさもある表現力、そして驚異的な超絶技巧による強さ、激しさ。ちょうど私の誕生日に、魅力に満ちた容貌のカティア・
ブニアティシヴィリの演奏を初めて”観る”ことができ、とても幸せな気分になりました。

「マザーランド」という彼女のCDが出ていて、この演奏会の一部の曲を聞くことができます。2014年レコード芸術特選

 「カティア・ブニアティシヴィリはウクライナのキエフで行われた国際コンクールに入賞するなどして
キャリアを積み、名声を得てきた人。
 アルバム「マザーランド」というと「癒やし系」のような感じである。しかし、母なる優しさ
というよりも、強く、激しい面、アグレッシブでキリリとしたところを評価されてきたピアニスト。
 アルゲリッチの再来とよく言われる人でもある。」
(NHK FM 8月30日放送 クラシックの迷宮~私の視聴室 カティア・ブニアティシヴィリ 片山杜秀 )