Aちゃんとの最後のレッスン

　Ａちゃんと3年間のレッスンが終わった。

　公務員宿舎にお住まいだと聞いたとき
（転勤までどのくらいあるのかな？）
　と　頭をよぎったが
　《うちは転勤はないんです》
　と聞きずっとレッスンができるものだと思っていた。

　今年に入り、事情でお引越しと聞いたときは
　ちょっとショックだった。

　最初のころは、Ａちゃんは
　ちょっとでもミスタッチするとそれはそれは大騒ぎ。
　30分の中28分が大泣きなんてザラで、
　防音室にもかかわらず隣の待合室の生徒さんが
　心配そうに中を覗き込むこともしばしばだった。

　ひとりごとノートには、
　ママの嘆きやつぶやきが書かれていたが、
　それでも症状はだんだん改善の兆しが見えてきた。

　もちろん、弾き間違えると
　ご機嫌が悪くなるのは変わらなかったが、
　それでもいつの間にか
　《最近、涙なしでレッスンしてますよね》
　と私たちが笑えるようになったのは
　Ａちゃんのレッスンを始めて
　一年ぐらいたったころだったろうか。

　本当に、子供らしい
　目のキラキラしたチャーミングな生徒さんだった。
　Ａちゃん。
　向こうに行ってからもピアノがんばってね。
　発表会のお知らせ待ってます！
　またね。


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