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MIUコンサルティングオフィス・社会保険労務士三浦剛のブログです。

コンプライアンス経営へ No.69(労基法上の時効)

2011年06月05日 | 会社の法律ミニレッスン
会社の法律ミニレッスン企業へのコンプライアンス(法令遵守)の要請は高まっています。
 「知らなかった」では済まなくなってきています。日曜日、「会社の法律」をお勉強!

 第69回は、「労基法上の時効」です。

 労働基準法第115条(時効)
『この法律の規定による賃金(退職手当を除く。)、災害補償その他の請求権は二年間、この法律の規定による退職手当の請求権は五年間行わない場合においては、時効によつて消滅する。』

 退職手当に関する時効のみが5年、その他の請求権は2年。

 どうして2年?については、
 最も重要な賃金などの請求権を1年では、労働者保護に欠けます。逆に、10年では使用者(会社)には酷です。それで、2年と言うことのようです。

 賃金請求権、休業手当請求権、年次有給休暇時の賃金請求権、災害補償請求権などがこの適用(2年)をうけます。と言うわけで、未払い残業代の請求の場合もさかのぼれるのは2年になります。

 ただし、退職金については5年。高額になるし、労使間での争いも生じやすいことが理由でしょうか。

 年次有給休暇の請求権も、行政通達で「法第115条の規程により2年の消滅時効が認められる」(昭22.12.15 基発第501号)とされています。

□民法では
 一定期間の経過による権利を取得する「取得時効」と、一定期間の経過による権利が消滅する「消滅時効」の2つがあります。

 民法第162条(所有権の取得時効)
『二十年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その所有権を取得する。
2  十年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その占有の開始の時に、善意であり、かつ、過失がなかったときは、その所有権を取得する。』

 所得時効は、
   悪意または過失による占有の場合…20年
   善意かつ無過失による占有の場合…10年

 民法第167条(債権等の消滅時効)
『債権は、十年間行使しないときは、消滅する。
2  債権又は所有権以外の財産権は、二十年間行使しないときは、消滅する。』

 消滅時効は、
   債権の時効…10年
   債権又は所有権以外の財産権…20年

 民法第174条(一年の短期消滅時効)
『次に掲げる債権は、一年間行使しないときは、消滅する。
一  月又はこれより短い時期によって定めた使用人の給料に係る債権
二  自己の労力の提供又は演芸を業とする者の報酬又はその供給した物の代価に係る債権
三  運送賃に係る債権
四  旅館、料理店、飲食店、貸席又は娯楽場の宿泊料、飲食料、席料、入場料、消費物の代価又は立替金に係る債権
五  動産の損料に係る債権』

 これによると、月給・週給・日給のように月単位より短い期間で決めた使用人(労働者)の給料の債権に関する時効は1年と言うことです。

 と先ほどの賃金請求権が2年になって経緯で出てくる1年と10年は民法から出てきています。民法は一般原則を定めていますが、特別法である労働基準法が、それとは異なる2年を時効と定めていますので、特別法の2年が優先されることになります。