My Life After MIT Sloan

組織と個人のグローバル化から、イノベーション、起業家育成、技術経営まで。

日本復活にあたって、韓国や台湾に学ぶべきか、先を行くべきか

2010-09-21 13:13:16 | 1. グローバル化論

日本の製造業が、かつてのような成長が出来ず、韓国や台湾の企業に追いやられている今、
日本企業を追いやっているサムスンやTSMCなどの企業に低姿勢で学ぶべきなのか?

週末に本屋さんに行くと、ビジネス書の一角は韓国や台湾のやり方に如何に学ぶべきか、という本で占められている。
私もこういう類の本は好きなので、結構読んでいる。例えば次のような本。
(画像クリックすると一応Amazonのページに飛びます。参考まで)

日本「半導体」敗戦 (光文社ペーパーバックス)
湯之上 隆
光文社

日本の半導体産業が、本当に市場が必要とするレベル以上の不必要な「品質」にプロダクトアウトにこだわっているのに対し、台湾や韓国の企業がコモディティ化する市場のニーズに対応し、必要な品質だけを安いコストで提供している様子を描きだしている。
昨年話題になった本だけど、未読の方は一読の価値あり。

サムスンはいかにして「最強の社員」をつくったか―日本企業が追い抜かれる理由
李 彩潤
祥伝社
これも既に古典で有名な話も多いが、新興国に若い社員を派遣しローカルに意思決定が出来る人材を育てる「地域専門家制度」や世界中からどうやって優秀な社員を採用するかなど、主に人材育成の面で卓越したサムスンの手法を紹介している

韓国最強企業サムスンの22の成功習慣
チョン・オクピョウ、(訳)蓮池薫
阪急コミュニケーションズ

蓮池さんが訳をやってる、ということで思わず買ってしまったが、サムスンの経営陣が如何に日本企業をお手本にして前に進んでいるのかが良く分かる。出てくる他企業事例に日本企業の事例が非常に多く、これだけ勉強しているのか、と舌を巻く。文章が読みやすく、1時間程度でさらっと読める本。

日本人のビジネスマンは勉強家が多い。
みな日本の将来に危機感を覚え、韓国や台湾で突出してきた企業に学ぼうと必死なのだ。

こういう状況で思い出すのが、80年代後半から90年代にかけてのアメリカの状況だ。
当時は、日本企業が隆盛を誇り、アメリカの製造業が大きく衰退し、アメリカを象徴するような企業の一部は市場の片隅に追いやられつつあった。
この経緯の一部は、以前の記事「日本企業の苦しみを25年前から味わっていたアメリカ企業-My Life After MIT Sloan」にも書いた。
「自分達は製造業の国だ」と信じていたアメリカが、多くの分野で日本の製造業に追い越され、その自信を喪失していた。

T型フォードの時代から、品質の高さと生産性に高い自信を持っていたアメリカの自動車業界では、
どうせ小型車しか出せないと思っていた日本企業が、カムリのような大型セダンから、レクサスのような高級車まで次々とシェアを奪っていった。
ソニーや松下(現パナソニック)は、家電の代表ともいえるテレビ市場でRCAやZenithといった米国企業を追いやり、世界シェア1位、2位を取り、一方RCAなどは崩壊の一途をたどっていった。
シリコンバレーが生み出した新しい産業である半導体業界ですら、日本企業にやられていた。
インテルを抜いて世界首位を3年間も維持していたNECなどの日本企業に大きな注目が集まっていた。

当時のアメリカの製造業は、まるで今の日本と似たような状況にあったわけだ。

こういう状況に追いやられていたアメリカが当時やったこと。
一つは、ダンピング規制や自動車輸入規制に代表される、日本企業に圧力をかけるということ。
もう一つは、第一線の経営学の研究者が日本企業の研究を盛んに研究を行ったことだ。
何故、日本企業は米国企業よりも品質が高くコスト競争力のある製品が作れるのか
何故驚異的なサイクルタイムで新しく斬新な商品を市場に投入し、米国企業を追いやっているのか、
その意思決定はどのような仕組みでなされ、どのような組織的な強みがあるのか、などなど。

昨年、MITで経営学に関する論文を読み漁っていた私は、当時の米国の経営学者が書いた論文に、日本企業研究が余りに多いのに驚いた。
当時はトヨタ生産方式やソニーのブランドマネジメントについて巨大プロジェクトが立ち上がっていたが、
ほかにも、NEC、松下、キヤノンなどの日本の企業の経営に学ぼう、という論文が数多くある。
現在、日本の経営学者がサムスンやLG、TSMCの研究などをしている姿に重なるものがある。

ではこういう日本の企業研究って、結局アメリカの復活の役に立ったのだろうか?

GEやHPなどの古くからある大企業は、復活に当たってトヨタやキヤノンなどの研究を活用した、といわれているので、役に立っている部分もあるといえる。
例えば、GEの経営理念になっている「シックスシグマ」はトヨタの生産方式に影響を受けたものだ。
HPもプリンタ業界で最も強大な競合として、キヤノンの市場戦略に学んだと言う。

でも「大部分の日本企業研究は、日本が失われた10年に突入するとともに廃れて、余り使われていない」とMITの先生方は言っていた。
例えば、インテルの復活に当たって、あれだけ散々行われたNECの理念と組織の研究が使われたことはなかった。
それよりも彼等はマイクロソフトなどと協業しながら自社の規格を標準化し、デファクト化していくという新しい方法で、世界首位を取り戻していった。

何より昔ながらの製造業以上に、アメリカの威信を取り戻していったのは、マイクロソフトやApple、Googleといった、新しい産業に属する新しい企業だった。
こういう企業は今までとは異なる価値観で新しい製品やサービスを上梓し、次々に日本企業がかつて奪った地位を取り返している。

そう考えたとき、日本がこれから復活するために必要なのが、韓国や台湾に学ぶこととは余り思えない。
それ以上の日本の復活は、米国でマイクロソフトやGoogleがそうだったように、新しい分野の新興企業からもたらされるのではないだろうか?
そのためには、こういう新しい企業が育つ環境を作ることの方が、韓国や台湾など日本を追い上げ始めた企業に学ぶより、ずっと大切に思える。

優良な企業や人材は国を問わず出る。韓国にも、アメリカにも、インドにも。
だから、それは一つのケーススタディとして常に学べばよい。
でもこれを勉強して、日本の製造業を復活させるんじゃない。
アメリカで日本の事例研究が、結局復活の原因にはならなかったように。

コモディティ化して、勝敗が決まった古い産業にこだわらず、
日本がリードする余地がある新しい産業で、新興企業が成功しやすい環境を作る方が、ずっと日本の復活に繋がるだろう。
そういう事例は、韓国や台湾の大企業にはない。
参考にするなら、恐らく新産業で復活を遂げたアメリカの方が参考になるくらいだ。
追い上げてきた国に学ぶのはいいが、先を行って、新しい産業を育てようと思う方が、恐らく日本の復活に繋がるんだろう、と思って、本を閉じた。

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22 Comments

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製造業が日本をリードした時代の終焉 (大手町)
2010-09-21 17:42:26
Lilacさんに同意です。
そもそも、日本を現在の地位に押し上げた原動力は製造業のおかげですが、今後は製造が日本を牽引することはないでしょう。
日本で製造が壊滅するかどうかは不明ですが、日本が復活する際に、再度製造が日本をリードすることはまず考えられません。

製造は、国が発展途上国から先進国に移って行く時に"のみ"、国の主要産業になります。
産業革命時のイギリス・ビッグ3のアメリカ・日本、歴史的にすべてそうでした。
そして国がピークに達した後、製造業は衰えていきます。
イギリスは植民地経営に軸足を移しましたが、大戦後に植民地経営ができなくなってからは50年間とも言われる英国病に突入し、90年代以後ようやっと金融といったルールづくりの産業で復活しつつ有ります。
アメリカは、日本に製造でコテンパンにやられた後は、IT・バイオといったイノベーションで食っていく方向に大きく舵を切りました。
日本の「失われた10年」とか「20年」とかなんて、この後もまだまだ続きますよ。日本が製造(ものづくり)や改善(Operational Excelence)を誇りとしているうちは。

製造で国が一時的にしか栄えないのは、製造のKFSが最終的には安価な労働力だからで、市場には常にライバルが居る産業だからです。
製造で国が栄えるのは、安価だった労働力が、先進国になり高価な給与での労働力に切り替わるまでの、一刻の間のみです。
オーナー企業にありがちな決断力の強さとか、世界各国での現地でのマーケティングとかが韓国系の強みとして言われますが、それらは個別の問題です。
いくらサムスンでも、フラットディスプレイの値段がソニー・パナソニックより安いから売れてるのです。現代もトヨタと同じ値段なら、皆トヨタを買うでしょう。
そして、日本製品がこれらの追い上げてくる国と同じ値段で提供するのはほぼ不可能です。

日本に根本的に今必要なのは、国全体の変革です。国がピークアウトに入ると、イノベーションで食うか、ルールづくりで食うかでしか国力を保てません。(国力を保てなくてもよい、というのであれば、イタリアタイプの観光・独自文化路線もあるでしょうが、別の話なので今は考えない)
・製造への過度な期待を諦めること。多すぎる総合家電・自動車等を数社に再編すること
・日本の今のリソースでイノベーションを起こせる産業にリソースを重点投入する環境を作ること。国内人材が流動化する労働法と判例にすること
・イノベーションを興すに必要な高等教育での人材(エンジニア・起業家)輩出・税体系・組織文化の枠組みを醸成すること
※国が金を入れるとダメになるから、民間が動ける枠組みと税のインセンティブや行政処理のスムーズさなどで支援

日本の製造業衰退と、韓国・台湾などの追い上げは歴史の必然です。個別のケースで興味深いものはあるかもしれませんが、大枠で彼らとのベンチマークをとっても無意味です。もはやチャレンジャーではないのですから。脱・改善!
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確かにね (Hidezumi)
2010-09-21 17:53:40
来週1週間くらいかけて考えようと思っているのですが、この「国を一気に変える変革」っていうのが、問題解決を難しくしてるんじゃないのかなあと思います。じゃあどうするんだよというのを考察してみようと考えています。

さてさて、アメリカがTQCとかを学んだのは無駄ではなかった(つまり日本は韓国や台湾に学ぶべき)と考えます。

双方の暗黙知(日本だけではなく)を考察して定型化したので、彼ら自身の見直しにもつながった。そして、「今のやり方じゃダメだ」ということに気がついたことで、変革の意欲が生まれた。そして彼らは考察するだけじゃなく実際にやってみた。(このあたりが、Learning Organizationの理論を精緻化させたんでしたよね…)

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コメント返信 (Lilac)
2010-09-21 22:42:08
@大手町さん

概ね同意です。ただ「製造は、国が発展途上国から先進国に移って行く時に"のみ"、国の主要産業になります。」と言うところが本当かな?ちょっと考えてみます。
ただ、製造業に限らず、一度ピークアウトした技術なり産業なりが再びけん引役になることはないのでは、というところは同意。

自動車業界がよりグリーンに動いているように、電気自動車など、旧産業から生まれた新しい産業領域がけん引役になることはあるのかなと思います。
そのときは旧産業の枠組みを越え、異なる産業通しが結びついたものになるのでしょう。

>個別のケースで興味深いものはあるかもしれませんが、大枠で彼らとのベンチマークをとっても無意味です。もはやチャレンジャーではないのですから。脱・改善!

改善して良くなる部分は確かにある。でもそれじゃ追いつけない、と私も思います。
昔、進化論に「赤の女王仮説」というのがありました。
Alice in Wonderlandの赤の女王然り、「他の人たちが全速力で走る速度の2倍で走らないと、世界に残れない」という話。
恐らく韓国・台湾に学ぶだけでは不十分で、それ以上の速度で走る部分がないと残れないんですよ。
それが私は、新エネルギーや環境技術なのか、新素材なのか、何か日本が先導できる、現状まで強かった組み立て製造業以外での産業での発達じゃないか、と思ってるわけです

@Hidezumiさん
おっしゃるとおりで、私もアメリカが日本に学んだのは無駄ではなかったと思ってます。
暗黙知の定式化は確かに意味はあったと思います。
ただし、それが今のアメリカの復活を呼んだんじゃないというのがポイント。
リーンオペレーションで生まれ変わった企業は確かにいくつもありましたが、それが今のアメリカの再興を生んだわけではないという。

同じように、韓国や台湾の事例には非常に良いものが沢山あり、日本の初心を思い出させるものも多く、学ぶべきだと思います。
ただ、それで復活するわけじゃない、ということ。
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Unknown (Lilac)
2010-09-21 22:50:11
@まあ消されてもかまわんのだけど さん
じゃあ消しますわ。
皆がわりと楽しくコメントしてる場なので、場がつまらなくなる発言は避けてください。
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Unknown (ああああ)
2010-09-21 22:56:07
日本が新たに生み出しそうな産業というとIPS細胞に代表されるような細胞ビジネスですかね。
確かにバイオ関係の壮大さは素人目に見ても夢があるし物凄いポテンシャルを秘めているように見える。
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Unknown (機械系の学生)
2010-09-22 06:31:55
自分は経済学とか経営学が専門ではないので,そちらの専門の方がどのように考えているのかよく知らないのですが,一応,技術者の卵の機械系の学生からの視点で見させてもらいます.

現状を見ていると,やはり日本企業は世界中のあらゆる企業に追い上げられ,追い抜かれている分野もあると思いますし,事実そうだと思います.特に家電のような分野では顕著にその傾向が見られますし,世界で見てみると,シェアで圧倒されている地域もあるようです.

特に,液晶パネルでは,もはや価格競争力では対抗できず,自分の目で見ていないので何とも言えないのですが,品質の点でも甲乙つけがたいとも聞かれます.寿命の点では評判があまり聞こえてこないのでよくわかりませんが,液晶パネルのレベルの技術では,ある程度の水準から上では,もう差がつかなくなってきたんだと思います.十数年前では信じられないでしょうが,全体の技術レベルが向上したことによって,液晶パネルは「普通の」技術になったんだと思います.

もちろん,研究開発に多大なリスクと時間と資金と労力がかかったことはその通りです.ただ,技術が流れてしまった後では,そのことを持ち出しても手遅れです.研究開発を行わず,技術だけを貰って(あるいは,真似して)いるのだから利益が出て当然,と批判するのはごもっともなんですが,技術大国になる過程では,日本もアメリカの技術を真似してきたという歴史があると聞きます.IBMの件がそれに当たると思います.決して真似がいいとは思いません.パクリなんてものは許しがたいものですし,知的財産権,特許を侵害することは,社会全体の価値を下げることになると思います.

最初から新しい技術が開発できるとは到底思えません.真似から始まり,試行錯誤をしていくうちに,研究開発力が付いていくものだと思っています.

ですから,本当の勝負はこれからなんだと思います.基礎的な技術が韓国,台湾等に流れてしまった後,表現が正しいかどうか分かりませんが,これからは応用的な技術,新たな技術をいかに作っていくかがカギになると思います.

技術者,エンジニアの立場からだけ言えば,5年ほどでは真似できない技術領域にまで常に達していることが求められると思います.常に5年ほど他国の先を行き,真似されたころには既に昔の技術になっているというような状況になれば,技術力でアドバンテージを得ることができます.追いつかれないことが当然いちばんいいのですが,それは現実的に難しいと思います.


経済の面から考えると,やはり規格で世界基準になることや,あらゆる地域でのニーズを的確に拾うことだと思います.

まず,規格に関して.技術でいかに優れていようと,規格争いで敗れてしまうと,ビジネスとして成立しないのは歴史が証明しています.この辺は自分が説明するのは恐縮ですので...

世界中で,ニーズは違いますよね.先進国の中でもニーズは異なると思いますが,特に,先進国と途上国のニーズは劇的に違います.この辺りを的確にとらえることは必須の要素だと思います.しかも,途上国ビジネスは,win-winの関係になるように持っていくのが難しいようなので,ビジネスモデルの構築が最大のカギだと思います.
先進国のニーズ...これが最大の課題と思います.自分が今何がほしいか?そう聞かれると,特にないです,というのが答えになってしまっています.日本のようなインフラも行き届き,家電製品も揃ってしまっているような国では,ニーズ自体が乏しいということがあると思います.買い替え需要のみしかないということになってしまえば,市場は成長するはずないですよね.
ここ最近の新技術という点では,3Dテレビなんかがありますが,個人的には,あれはオーバースペックすぎて欲しいと思いません.メガネかけなくていいものも出る予定だそうですが,今のハイビジョンテレビで,テレビの進化は終わったと思っています.(それ以上は求めていないという意味で)

ニーズがない中で,いかに競争するか?というより,何で競争するか?そんな時代が,あと30年くらいしたらくると思います.

途上国が途上国じゃなくなったとき,つまり,地球上での格差がなくなってしまったとき,産業は,工業の時代から,結局,農林水産業に戻ってしまうと思うんですが,どのようにお考えなのでしょうか...?
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Unknown (k)
2010-09-22 11:09:09
スイスの時計産業のようにするしか日本の製造業の道はないのかなー?なんて思ってます。
如何に単価の高い製品を富裕層に買わせるか、その為のブランド力の底上げ、ですね。

でもデザイン性等のセンスを要求される分野って正直日本人のそれは相当怪しいです。
経済人と呼ばれる人も芸能、文化関係は本当にトンチンカンなこと言ってるなーと思うのも多々あります。
なにより日本大衆のセンス自体も相当疑わしい・・・
世界的に評価された北野武監督の「ソナチネ」なんて日本じゃ打ち切りに合ってますからね。一方アメリカで大コケして嘲笑されるアルマゲドンが日本じゃ感動の名作扱い
謎です。
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Unknown (yugo)
2010-09-22 12:49:28
新しい産業を作らない限り、日本の失われた20年が終わらないという点は非常に同意します。


製造業の例じゃないですが、某ファミレスチェーンと仕事をしたときに「我々は絶対にサイゼリアには勝てない」と言っていました。

構過去繰り返された労組との話し合いで、休憩室や労働条件、福利厚生設備等々に面積を割かれ、利益を生む面積の割合がサイゼリアとは全く違うからだそうです。

JALの例や日産の例からも、古い企業ならではのおりが、日本の大企業には溜まっています。
これは、lilacさんが出されたコダックやRCAの例とも同じでしょう。
組織が大き過ぎてイノベーションの歯車が合わないために変化できないのでしょう。


カルロス・ゴーンのような過去に囚われない専門経営者による改革で一定の成果を生むかもしれません。

しかし、限界はあるでしょう。
それは改善でしかないからだと思います。
韓国のようにIMF管理になり、強制的に血を流せば、おそらく別ですが。
(私見ですが、日本がIMF管理になり、
強制的に世界に出ていく組織を作れば、あっという間に、強くなるでしょう。ミドル人材の基礎能力は日本の大企業は他に類を見ないほど素晴らしいと今でも、思っています。)


大手町さんのいうような、日本の全体の改革はみんな考えていることでしょう。
・人材流動化を前提とした労働法体系
・イノベーション人材による起業文化の醸成
・失敗しても再復活を可能とするルール(銀行の個人保証の禁止等)の確立

でも、新しい産業を興すのに一番必要なのは、きっと「思想」ではないでしょうか。

ビルゲイツがソフトフェアの権利という思想を、
グーグルが世界の情報を整理するという思想を、
ヘンリー・フォードが大量生産による低価格・大量消費(そして高賃金)という思想を、

もっと小さいものでも、ワクワクする企業には何らかの思想があります。
ネットライフ生命の不明瞭な料金体系を明らかにするとかね。

彼らだって、最初からそういう意図があったわけではなく、結果的に噛み合ったからこそ、
生み出された思想なのかもしれません。

でもニーズから考えるよりも、(当時の)常識に反しても、賛否両論を呼ぶ思想があり、実行できる技術・意思をもっている起業家が、新しい産業を興せるのでは?。
なんて考えています。

返信する
Unknown (student)
2010-09-22 18:02:56
 自分は技術に関心を持つ経営学を専攻している学生ですので、その視点からコメントしたいと思います。

 Lilacさんのおっしゃった新しい産業で今後の日本を牽引して行けるということに全面的に賛成します
 自分も全く同じことを考えていて、同じ考えの人に会えてうれしく思います。

@機械系の学生

>上国が途上国じゃなくなったとき,つまり,地球上での格差がなくなってしまったとき,産業は,工業の時代から,結局,農林水産業に戻ってしまうと思うんですが,どのようにお考えなのでしょうか...?

 自分の場合、産業は三つの方向に向かうと考えます。


一つ目は従来の製品に独自のデザインや機能を加えて付加価値を付けた製品を売るということが考えられます。

 具体的にはシャープの四原色テレビやアップルの製品全体が考えられます。
 これらの製品は先進国でも大規模に売れていますから発展途上国が全て先進国になったとしても十分に売れると思います。
 問題はいかにデザインと機能で差別化するかです。

 二つ目の方向は世界的な問題を改善するような商品を作って販売することが考えられます。

 具体的には今後50年間は環境問題が最も大きな問題となることから太陽光発電等を中心とする産業が発達し、それは環境問題が解決しない限りこの傾向は止まらないと思います。
 また、環境問題が解決しても資源問題、安全保障問題もありますからそれらの応じた製品が今後売れると思われます。有名な成功例としてはアメリカのファーストソーラー社、ドイツのQセルズ社などがあり、それらの企業はいずれも太陽光パネルで大企業になりました。


第三の方向はだれも予測しなかった潜在的なニーズを具現化させた産業です。

これはいままで市場が無かったために最も大きな産業になりえると思います。潜在的なニーズの具現化とは今までは考えたことないような事を指します。具体的にはインターネットやコンピューター、テレビ等があります。

 機械系の学生さんは今欲しいものは特にないとおっしゃいましたが、100年前にインターネットやコンピューター、テレビ等が無い状態で普通に町の人に欲しいものを聞いても「テレビが欲しい!パソコンが欲しい!」とは出てこないと思います。
 従って、人々のニーズが無いような調査結果があったとしてもそれは人々が何も望まないことを指しているのではなく、何かしら潜在的なニーズがあるのではないかと思います。もし、それらのニーズを具現化させた産業が起これば今後に大きな潮流を巻き起こすと考えています。

長文失礼いたしました。
返信する
Unknown (大手町)
2010-09-22 20:28:59
みなさん、ブログの本文並の量のコメント残されてますねぇ。
@Lilacさん
> 自動車業界がよりグリーンに動いているように、電気自動車など、旧産業から生まれた新しい産業領域がけん引役になることはあるのかなと思います。

電気自動車のようにイノベーションが起こるのであれば、製造業でもピークに達した国でも主要産業として継続できる可能性はあると思います。が、連続してイノベーションが起きる産業というのは限られています。次々にイノベーションを起こせないと、改善×コストの戦いになり、時間の問題で追いつかれてピークアウトに入ります。

@yugoさん
>強制的に世界に出ていく組織を作れば、あっという間に、強くなるでしょう。ミドル人材の基礎能力は日本の大企業は他に類を見ないほど素晴らしいと今でも、思っています。)

基礎教育の高さと「空気を読める」集団性のために、日本の現場社員能力は世界的に有数でしょう。しかし、この現場の能力の高さがイノベーションを阻害していると思っています。
マネージメントが現場の優秀さの上にあぐらをかいている、という意味以上に、集団の密結合故にリーダーシップを発揮するのが困難な環境です。
(日本では現場の人間の労働時間が一番長く、エグゼクティブは重役出勤と呼ばれる労働時間。海外では給料の高い人間の労働時間が他より短いということはありえない。日本では現場からの積み上げで意思決定がなされるため、役員が物事を変更することや異なる選択肢を持つことが困難なためです)
かくして、日本では、集団合議制をサポートする、人当たりがよくリスクを取らない人が、役員を占めます。
現場でも経営でも、リーダーシップはイノベーションを起こすのに必要な前提条件です。
これまでの集団体制から、ダイバシティを備え、job descriptionに基づく明確な業務範囲を個々人が責任をもって遂行する体制への移行が必要になります。つまり、イノベーションを起こす必要がある業界では、従来の古き良き日本型運営を捨て、異なるバックグラウンドの人間が過半数を占めることで組織の活性化を起こす必要があるということです。
今の日本のリーダーシップを必要としない集団合議制は、老若男女問わず日本人のメンタリティに深く染み込んでいるもののため、私は日本は再浮上出来ない可能性が高いと思っています。
#ルールづくりで仕切るのも同様に無理でしょう。日本人は笑いのネタになるぐらい英語すらできないのに、ルール策定で支持を得られる動きは相当困難

私が上記でリーダーシップと呼んでいるのは、yugoさんの思想と呼んでいるものと一部意味が重複する機能があると思います。
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