My Life After MIT Sloan

組織と個人のグローバル化から、イノベーション、起業家育成、技術経営まで。

日本にシリコンバレーが必要な理由

2010-06-03 10:32:09 | 3. 起業家社会論

最近、私はどこに行っても「日本に帰ったら、日本にシリコンバレーを作る仕事をする」と言っている。
私が余りに熱く語るものだから、ほとんどの人の反応は「すごい。それは面白い!」なのだが、
中には「そんなことしてどうなるの?」「何それ、起業家の楽園を作るとかそういう意味?」という懐疑的な反応もある。
だから
そろそろ、私の立ち位置を明らかにしておいた方がいいかと思い、ブログに書くことにした。

私が「日本にシリコンバレーを作る」と言うとき、その意味は、

シリコンバレーのように、起業家、経営のプロ、資本、技術、人材が有機的に結びついている。
だから優秀な人が起業しやすく、必要に応じて人材・技術・資本を補給しながら成長しやすい環境。

ということ。
以前のブログ記事でも何度も書いてきているように(代表例)、シリコンバレーやボストンのような起業家の街にはこの環境がある。
だから、起業家がどんどん生まれ、しかも成功すべきものがちゃんと成功する。
でも日本には無い。
だから作る、ということ。(もっともそれを作るのは一筋縄ではいかない→考察例

何故そんなものが日本に必要なのか?
私は、それが日本の更なる経済成長に必要不可欠だと思っているからだ。

国が経済成長を続けるには、マクロ経済的には(労働)人口が増える、一人当たり生産性が増える、の二つが鍵だ。
しかし、全く違う方向-産業史から見ると、ある程度の経済成長を遂げた国が更に大きく発展するには、新しい産業が次々に生まれて、大きくなる、というのが不可欠だと私は思うのだ。(仮説)
新しい産業が生まれることが、人口が増え(移民とかで)、生産性が向上する要因になると思っている。

そして、そのような新しい産業を生むのは常に、既存産業と技術を守ろうとする大企業ではなく、ベンチャーなのである。
だから起業家が次々と出て、GoogleやYahoo!のように大きく成長し、次の産業の波を牽引するくらいじゃないと、日本のような成熟した国が更に成長するのは不可能に思うのである。

アメリカを見てみよう。
この国は1960年代までは「ものづくり」の国だった。
鉄鋼、造船、そして自動車、機械、電機といった製造業が、
企業名で言うと、US Steel、GM、フォード、GE、RCA、IBM、モトローラといった企業が、
1960年代までのアメリカの経済成長を支えてきたのだ。
ところが昨日のGapminderの分析で書いたように、1960年代終わり頃から元気な日本の新興企業に押されたりして、アメリカの「ものづくり」は凋落し、低成長時代へ突入する。

その後、マイクロソフトやシスコ、サン・マイクロシステムズ、グーグル、フェースブックなどのベンチャー企業が次々に生まれ成長することで、新しい産業が生まれた。
それらに追いやられた、旧技術に属していた多くの企業-たとえばIBMやAT&T-が、IT方面へと鞍替えすることで、大きく世界でのシェアを伸ばし、経済発展に貢献した。

もちろん、今でも米国のGDPの多くを占めるのは、農業と製造業である。
製造業はアメリカが経済成長を続けるために今でも重要な役割を果たしているし、大企業の役割も大きい。
IBMやAT&T、GMのような大企業と、それを支える沢山の製造業の中小企業群が無ければ、多くの人が失業し、アメリカの経済は停滞するだろう。

しかし、IBMやAT&Tは経済を支えてはいるが、自ら新しい産業を生み出しているのではないのだ。
あくまでベンチャー企業のマイクロソフトやサンやシスコが、IT産業と言う新しい分野を牽引したから、
IBMやAT&Tのような大企業が、変革せざるを得ない状況になったのだ。
言ってみれば、ベンチャー企業が、新しい産業を産み、牽引しているのである。
そしてそれが生まれたのはシリコンバレーのような環境なのだ。

例えてみれば、ベンチャー企業というのは料理におけるスパイスのようなものだ。
御飯や具材などの中身(旧産業に属する大企業や中小企業)が、国全体を支えているが、
ベンチャー企業がぴりりと大きな産業を刺激してくれないと、これらの企業は変革できないのだ。

今、シリコンバレーやボストンではITに加え、バイオテクノロジー、新エネルギー分野のベンチャー企業が盛んに生まれている。
それらは今後、製薬業界を変え、石油・電力などのエネルギー業界や自動車業界を大きく揺るがし、変えていくだろう。
その刺激によって、経済を支える沢山の大中小の企業が、塗り替えられたり、変革を余儀なくされたりして、国全体が成長していくのだ。

だから、私は日本にもシリコンバレーが必要だと思う。
日本の経済を支える、製造業とそれらを担う大企業を変革し、成長させるのも大切だ。
技術を持ち、一番優秀な人材を有しているのは、日本では今でもこれら製造業にいる企業たちだ。
それを変革させないと日本は立ち行かなくなる。
だから、私はコンサルタントなんて仕事を職業に選んでいる。
(ちなみにバリューチェーンの下流にいる大企業が変革すれば、それらと取引してる日本の多くの中小企業たちは変革を余儀なくされる)

しかしながら、上に書いたように次々にスタートアップが生まれ、新しい産業を作って、大企業を脅かすくらい成長してくれないと、これらの大企業は変わってくれないのだ。
うなぎとごはんだけじゃうな丼は美味しくならない。山椒が必要なのだ。

だから、私は日本にシリコンバレーを作ろう、と真面目に思っている(註1)。
停滞している日本の経済成長の「山椒」として絶対に必要だと思うから。

 

註1: 今考えてるのは二つ。
日本の問題をちゃんと分析して、どうすれば起業家が成長しやすい環境を作れるか模索すること。
下記のブログエントリのような分析をちゃんとやるということだ。
これは会社に帰ってから、机の下(Under the desk)でやりつつ会社のプロジェクトに仕立てようと思っている。
だから具体的な提案とか、議論の相手とか、情報提供とか、大歓迎です。
日本や欧州にシリコンバレーが出来ない理由とその対策 (1/2) -My Life in MIT Sloan
日本や欧州にシリコンバレーが出来ない理由とその対策 (2/2) -My Life in MIT Sloan

学者のように論じてばかりでは何も起こらないので、自分が出来ることは同時に草の根でやっていこうと思っている。
技術と経営をつないで起業しやすくする場を、日本に作る-My Life in MIT Sloan

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日本のシリコンバレー (mamoruk)
2010-06-03 11:55:38
奈良先端大というところで助教をやっています。自分も日本にシリコンバレーを作れると思っています。技術と人材は揃っているのですが、経営のプロが見つからないとかそこまで意欲のある人がいない(起業するハードルが高い)とか、そういうところが足かせになっていますね。

あとこういう新しいことに挑戦できるのは、中心部にいる人ではなく、周辺部にいる人だとも思います。そういう意味では奈良は理想的な環境なんですけどね。関東より関西のほうが気候的にもシリコンバレーに近いですし(気候はエンジニア的にはかなり重要な要素だと思います(笑))。

奈良先端大は理系の大学院大学ですが、文系の人も2割くらい、社会人学生も1割、留学生も(自分の研究室では)3割、飛び級して来る人も毎年いれば、留年しまくったり社会人辞めて来る人もいて、ストレートで来ている人の方が少ないくらい、多様な環境で、こういうところで人が育つのはいいなぁ、といつも思っています。

とりあえず手始めにいまはインターンシップに行く人を増やそうとしています。海外のインターンシップにも年間数名送り込みたい、と。Apple に1人日本からの博士の学生をインターンとして紹介しましたが、彼は今週から働いているようです。アカデミアとのつながり(行ったり来たり)も大事だと思います。アメリカでは助教や准教授くらいの人がサバティカルで1-2年間 Twitter とか Yahoo! とかで働いているのを見るとうらやましいです。

学生さんも、インターンシップに行くのが当たり前になってくると、そのうちスタートアップ企業でインターンシップやアルバイトする人も増えてきて、「これなら自分もできる」とか「こんなところがまずかったから自分たちはこうしよう」とかいう人が出てきてくれるものと思っています。(PFI という会社はまさにそんな感じですね http://www.is.s.u-tokyo.ac.jp/utis/ob/ob/talk2_01_01.html ) 5年10年の仕事になるでしょうが、割と世の中変わりつつあるなと感じています。

立場は違いますが、(自分も含め)若い人たちの力で日本を元気にしたいですね。
Unknown (シゲ)
2010-06-03 12:24:27
大学の工学部で研究するものです.
興味深くエントリーを読みました.
自分の技術で起業するのが目標です.しかし,研究開発部分のコア以外では起業への傷害(ノウハウやネットワークが少ない)が大きく,各方面の専門家と有機的に協業できるプラットホームが欲しいと思っていました.
アメリカの大学に籍を移し(これまた大変難しいことなのですが…),シリコンバレーのベンチャー関連の人々と協業できるようになるしか,目標達成へのパスが無いのかと考えていたので,他の選択肢ができるのは大歓迎です.
是非,是非,「日本のシリコンバレー」実現させてください!
Unknown (Eric)
2010-06-03 12:38:11
素晴らしいビジョンです。私はアメリカに越して以来ベンチャー企業の集まる都市に住んできました。これらの地域ではスタートアップを目指すたくさんの若者がビジネスプランを練り、本気で市場を変えようと取り組んでいるし、VCの資金やエンジェルファンドが身近な人に実際に供給される様子を見て、こうやってディスラプティプイノベーションや新しいビジネスモデルが生まれ価値を生み出していくのだと感動する事がありました。先日も書かれているように出る杭は打たれるケースも多々ありますが、それを上回るエネルギーがここにはあります。つい先日も戦略コンサルに勤めてた友達が起業するというのでお祝いをした所でした。

日本は独自の文化や国民性が強くありますので、どのようにLilacさんがビジョンを達成されるのか非常に興味があります。応援しています。
すでに環境は整いつつある (ツバメ)
2010-06-03 13:22:18
>「日本に帰ったら、日本にシリコンバレーを作る仕事をする」

先端技術大学院大学など結構おもしろいことやっているところがあるので技術的には環境は整いつつある。。。知財はお金と同じで、使わなければ意味がない。。。特許をとると法外なロイヤリティ収入で楽してもうけようとする人が多いが、そうしてしまうとせっかくのすばらしい特許も社会に普及しなくなってしまう。技術を普及させて社会に貢献するという視点も大事だと思う。

ビルゲイツはおもしろいことやっているよ。Lilacさんにはおすすめです。。。

http://www.intellectualventures.com/Home.aspx

シリコンバレーの要素ってなんだろう?? (松本孝行)
2010-06-03 14:19:51
私はシリコンバレーに行ったことがないのでよくわからないのですが、シリコンバレーがシリコンバレーであるための要素っていくつかあると思うのですが、それを日本でかき集めるにはどうしたらいいんでしょうね。
結構たくさん交流会とか勉強会とかはいろんなところでもありますし、ビジネスプランコンテストなんかも東京・大阪でありますし、大学でもあります。これだけじゃ足りないってことですもんね。

ヒト・モノ・カネ・情報で考えると、若いころに一番足りないのってヒトのような気がするんですよね。大学と社会がもう少し緊密に連携できるような状況があってもいいかと思ったりします。

しかし面白いですね、日本にシリコンバレーかぁ…かっちょいいです♪
Unknown (Unknown)
2010-06-03 14:39:57
今年大学を卒業して来年から就職する者です。
現在人材の海外流出が増えていて、自分も将来的には海外に行こうと考えてました。でもこの記事見て感じたのは、自分の力じゃ変えられないから海外に行くってやっぱり悲しいってこと。日本は好きですし、大切な友達、家族もいる。海外にいく前に頑張られる範囲で日本を変えることを私も考えてみよう、今はそう思います。将来は日本のシリコンバレーで働くぞーw
ありがとうございます (MINA)
2010-06-03 18:07:45
素晴らしいです。
日本はもうダメだしかないネガティブ・ブログが多い中、こうした明確に方向性を打ち出すエントリがあると本当に嬉しいです。
今回のLilacさんのエントリを読んで私にも目標が生まれました。
私も現在欧州のMBA(とてもLilacさんとは比べものにならないレベルですが)を目指して勉強中ですが、もしお役に立てる日が来たら是非お手伝いさせて下さいw
素晴らしい (lecat)
2010-06-03 19:53:45
暗いニュースしか届いてこない今日にあって、未来に希望が持てるエントリーです。

現在、企業でプログラマーをしていますが、Lilacさんの夢と同じ夢を見たいと純粋に思いました。
私も協力したいです。

今、出来ることは何があるか考えます。
アドバイスなどあれば是非。
是非 (kj)
2010-06-03 20:45:15
工学&情報系の大学院生でロボットヴィジョンに関する研究をしているものです。
是非、そのような環境ができるように助力できたらいいなと思います。そのためには自分もスキルアップをしないといけないなと思うのでがんばっていろいろなことを勉強します。
Unknown (Roberto)
2010-06-03 21:32:01
大変面白いビジョンですね。
MBAを卒業された方が「実行者」として積極的に市場を変革する仕事に携わって行こうとされるのは嬉しい限りです。
どうしてもBSを出ると、IBや外資ファームなどに戻る(移る)という「安全な道」「手っ取り早く投資を回収する道」を選んでしまう方が多いのを残念に思っていました。
私もIB、某外資ファームなどを経由して、今はとあるファンドの役員を努めていますが、できれば日本の労働市場(起業環境)の変革を実現したいと考えています。
なかなか難しく、気合ばかりが先行してしまっていますが(笑)

応援しておりますので、頑張ってください。

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