テーマ「夜桜」
奈伽塚ミント
「――別れて……ほしいの」
突然の,ことだった。
仕事が終わってすぐ,僕は彼女に電話で呼び出された。
「あの桜の下で待ってるから」
あの桜――僕と彼女の出会いの場所。
僕はすぐに彼女のもとに向かった。
そして彼女は,そう切り出してきた……。
――突風が吹いた。花びらがハラハラと散っていく。
「どう……してだ?」
僕は,そんな言葉しか言えなかった。何しろ,彼女とは上手くいっていた。そう思っていた。
今日だって,『結婚しよう』なんて言葉を期待していたぐらいだ。
それがどうして――。
「……私ね,……もうすぐ死ぬの」
「……は?」
「……ガン,なの」
一瞬,理解できなかった。
そんな話――そう思った。
だけど,彼女が瞳に涙を浮かべているのを目の当たりにしては信じるより,ほかなかった。
「だから,別れて。あなたを,悲しませたくないの」
「……ふ。ははははは」
僕は笑った。
桜の花吹雪の中。思い切り笑ってやった。
「――な,何がおかしいのよっ!」
「何って……,だってまだ生きてるじゃん」
「えっ!?」
「だって,お前まだ生きてるじゃん。――見ろよ,この桜。散っていくんだぜ?咲いていたくとも,もう散っていくんだ……。でも,さ。お前の『命』って花は,まだ咲いてるだろ?」
「――っ!」
彼女は驚いたように,顔をおおった。
「だったら,思い切り咲き誇ろうぜ?散るその一瞬,最後の一秒まで。僕はそれを見ていたい。
……ダメ,かな?」
「……バカ」
彼女は僕の胸に飛び込んできた。
僕は彼女の小さな体を,折れてしまわないように,花が散ってしまわないように精一杯抱きしめた。
彼女は泣いた。思い切り……。
「思い切り,泣いとけ。僕が受け止めてあげるから――」
ポツリと,そう呟いた。
――そうして,そのまま一晩そこで散りゆく桜を見つめていた。
――それから数ヶ月。
あの桜は散った。
だけど……。
「――ねぇ,ここなんてどう?」
「ん,どれどれ」
『命』って桜は散らずに残った。
――人なんて,もろい物だけど,僕たちは一ひらでも花びらが残されている限り,精一杯咲き誇っていこうと思う。
彼女とならそれができると
そう思う――。
自己評価(独り言)
何と言うか,テーマは「夜桜」であるのに,実際は単に桜がでてきてるだけになってます。別に「夜桜」の話が書きたかったわけじゃないから,まあいいんですけど……。
比較的明るめの結末で終わってよかった気がする。当初の構想では,彼女は当然死亡してしまい,『僕』が感傷に浸る……みたいなお話になる予定でした。――そんな話ばっかりじゃなぁ。そう思って急遽変更されてよかったです(いや,ほんとに)。
それにしても,現実でこんな話があったら感動というより爆笑で終わってしまうのではないでしょうか?こんな『彼女』はいるかもしれませんが,『僕』はいないでしょう。いたら見てみたい気はしますけど……。
ちなみにこの二人,この後結婚しました。最期の会話は式場探しの話です。一応……。
――ということで雑文Part2です。確か2ヶ月,早くて1ヶ月くらい前に書いたものです。その頃は先にテーマを決めてそれにあった文を即興で書くということをやってました。その時の一つがこれです。とりあえず読んでみて下さい。
『連載シナリオ』/prologue第二回は今日の夜くらいには(今も一応深夜だが)公開する予定です。
ご意見,ご感想相変わらず待ってますので,どんどんコメントしてやって下さい。ホント些細なことでもいいので。よろしくお願いします。
奈伽塚ミント
「――別れて……ほしいの」
突然の,ことだった。
仕事が終わってすぐ,僕は彼女に電話で呼び出された。
「あの桜の下で待ってるから」
あの桜――僕と彼女の出会いの場所。
僕はすぐに彼女のもとに向かった。
そして彼女は,そう切り出してきた……。
――突風が吹いた。花びらがハラハラと散っていく。
「どう……してだ?」
僕は,そんな言葉しか言えなかった。何しろ,彼女とは上手くいっていた。そう思っていた。
今日だって,『結婚しよう』なんて言葉を期待していたぐらいだ。
それがどうして――。
「……私ね,……もうすぐ死ぬの」
「……は?」
「……ガン,なの」
一瞬,理解できなかった。
そんな話――そう思った。
だけど,彼女が瞳に涙を浮かべているのを目の当たりにしては信じるより,ほかなかった。
「だから,別れて。あなたを,悲しませたくないの」
「……ふ。ははははは」
僕は笑った。
桜の花吹雪の中。思い切り笑ってやった。
「――な,何がおかしいのよっ!」
「何って……,だってまだ生きてるじゃん」
「えっ!?」
「だって,お前まだ生きてるじゃん。――見ろよ,この桜。散っていくんだぜ?咲いていたくとも,もう散っていくんだ……。でも,さ。お前の『命』って花は,まだ咲いてるだろ?」
「――っ!」
彼女は驚いたように,顔をおおった。
「だったら,思い切り咲き誇ろうぜ?散るその一瞬,最後の一秒まで。僕はそれを見ていたい。
……ダメ,かな?」
「……バカ」
彼女は僕の胸に飛び込んできた。
僕は彼女の小さな体を,折れてしまわないように,花が散ってしまわないように精一杯抱きしめた。
彼女は泣いた。思い切り……。
「思い切り,泣いとけ。僕が受け止めてあげるから――」
ポツリと,そう呟いた。
――そうして,そのまま一晩そこで散りゆく桜を見つめていた。
――それから数ヶ月。
あの桜は散った。
だけど……。
「――ねぇ,ここなんてどう?」
「ん,どれどれ」
『命』って桜は散らずに残った。
――人なんて,もろい物だけど,僕たちは一ひらでも花びらが残されている限り,精一杯咲き誇っていこうと思う。
彼女とならそれができると
そう思う――。
自己評価(独り言)
何と言うか,テーマは「夜桜」であるのに,実際は単に桜がでてきてるだけになってます。別に「夜桜」の話が書きたかったわけじゃないから,まあいいんですけど……。
比較的明るめの結末で終わってよかった気がする。当初の構想では,彼女は当然死亡してしまい,『僕』が感傷に浸る……みたいなお話になる予定でした。――そんな話ばっかりじゃなぁ。そう思って急遽変更されてよかったです(いや,ほんとに)。
それにしても,現実でこんな話があったら感動というより爆笑で終わってしまうのではないでしょうか?こんな『彼女』はいるかもしれませんが,『僕』はいないでしょう。いたら見てみたい気はしますけど……。
ちなみにこの二人,この後結婚しました。最期の会話は式場探しの話です。一応……。
――ということで雑文Part2です。確か2ヶ月,早くて1ヶ月くらい前に書いたものです。その頃は先にテーマを決めてそれにあった文を即興で書くということをやってました。その時の一つがこれです。とりあえず読んでみて下さい。
『連載シナリオ』/prologue第二回は今日の夜くらいには(今も一応深夜だが)公開する予定です。
ご意見,ご感想相変わらず待ってますので,どんどんコメントしてやって下さい。ホント些細なことでもいいので。よろしくお願いします。
無理にいちゃもんをつけるとしたら、キャラが本音を簡単に語りすぎ。ってところです。
おれでしたら、こんな風にしますってのも書こうとしたんだけど、なんか書いたあと偉そうで自己嫌悪になりそうなのでやめとくw
ネタが素敵なのでいろいろ料理できそう。
「桜」でぼくも一編かいてます。
http://blog.goo.ne.jp/dosagen/e/bef99c3833ad74d37f915bd71a98910d
ちょっと長いんですが、暇つぶしにどぞ。
現実に考えればかなりあやしいっつーか
裏で凄い額の保険金が動いてそうっつーか
ごめん、これ以上書くと作品を汚しそうなのでやめとくw
BGMが良ければすんなり観客も世界に入れそうな感じがしますね。
短編である以上は二人の距離感の山場とか作れないんで
これくらいで終わってしまうのはしょうがないのかも。
アイロンでうんしょうんしょと引き延ばして
色々なエピソードを混ぜるともっと今より良い感じの話とか出来そうですね。
確かにキャラは本音すぎるかなぁ。けどはにゃさんの言うとおりこの長さだと,本音にせざるをえないというかなんというか……。時間があるときにでも,改稿というか内容を加えてみようかな。いっそゲーム計画第三弾のシナリオとして採用するとか。とにかく今は『連載シナリオ』ですね。後で二回目公開しますのでよろしくです。
あえてケチをつけるなら
「思い切り,泣いとけ。僕が受け止めてあげるから――」
この部分の僕って所かな?
前半の「思い切り,泣いとけ。」と「僕」の言葉の印象が少しズレてるように感じました。
「短いのによくまとまってるなぁ」については,「短いのに」ではなく「短いから」なのかも。長編は時折支離滅裂だったり,ご都合主義で設定が付加されていたり……なんてことが。なので公開中のシナリオも少し不安ではあるんですが……。まあ,なにぶん素人な私なので今後もあたたか~く見守ってくださると幸いです。
ワドがミントさんにやられっぱなしなのをみるのが楽しいねw
どうもほんとに参ってる感じだw
2作出すと、二瓶さんの作業が増えるので1作でいきましょう。
あと60枚は長い場合の目安なので、少ない分には気にしないでもいいと思いますよ。ちなみにおれは30枚くらいです。
やはり一作品ですね。了解です。>しなたまさん