0・A ”2005年7月”
彼女が僕の元を去ってから,半年余りが過ぎ去ろうとしていた。
気がつけば冬は終わりを告げていて。年も明けて,だらだらと過ごしているうちに季節は夏になっていた。
思えば彼女と出会ったのも夏だったように記憶している。普段は曖昧な僕の記憶だけれど,はっきりとそれは覚えていた。
それほどに,あの出会いは印象的だった。本当はそんなありふれた言葉にしてしまいたくはないほどに,僕の中ではあの出会いは綺麗な思い出として残っている。
彼女は,今,どこで,何をしているのだろう。
僕はこうして夏の暑い空気に包まれながら,窓辺で空を――抜けるように青い空を見上げている。あの日の記憶を確かめるように。
彼女は僕のことを覚えているだろうか。
僕は半年が過ぎた今でも,忘れられないでいる。こんなにも彼女を想っている……。
気がつけば,午睡の中に落ちていた。熱気のせいか体からは汗が噴き出し始める。
そんなごくごく普通の夏の午後。突然,夏とは思えない――まるで冬から抜け出してきたかのような,一陣の冷たい風が吹いた。
それに気づいて僕は慌てて目を覚ます。
夏にこんな風が吹くはずはない。だけれど僕は,この風を知っている。そう,それは既視感(デジャビュ)。
彼女と過ごしていたときは,いつもこんな風が吹いていた気がする。
僕はそれを認識して,そして――。 <続>
彼女が僕の元を去ってから,半年余りが過ぎ去ろうとしていた。
気がつけば冬は終わりを告げていて。年も明けて,だらだらと過ごしているうちに季節は夏になっていた。
思えば彼女と出会ったのも夏だったように記憶している。普段は曖昧な僕の記憶だけれど,はっきりとそれは覚えていた。
それほどに,あの出会いは印象的だった。本当はそんなありふれた言葉にしてしまいたくはないほどに,僕の中ではあの出会いは綺麗な思い出として残っている。
彼女は,今,どこで,何をしているのだろう。
僕はこうして夏の暑い空気に包まれながら,窓辺で空を――抜けるように青い空を見上げている。あの日の記憶を確かめるように。
彼女は僕のことを覚えているだろうか。
僕は半年が過ぎた今でも,忘れられないでいる。こんなにも彼女を想っている……。
気がつけば,午睡の中に落ちていた。熱気のせいか体からは汗が噴き出し始める。
そんなごくごく普通の夏の午後。突然,夏とは思えない――まるで冬から抜け出してきたかのような,一陣の冷たい風が吹いた。
それに気づいて僕は慌てて目を覚ます。
夏にこんな風が吹くはずはない。だけれど僕は,この風を知っている。そう,それは既視感(デジャビュ)。
彼女と過ごしていたときは,いつもこんな風が吹いていた気がする。
僕はそれを認識して,そして――。 <続>