何となく奈伽塚ミント・純情派

不覚にも連続更新ストップ。
少々夏バテ気味だったし
定期更新に切り替えかも?

そんなこんなで奈伽塚ミント

とある雑談から生まれた企画(6)

2004-06-23 22:58:36 | 『テーマ小説』
 私は一人,街を歩いていた。
 冬空の下。外気は凍えるほど冷たい。唯一温かさを感じるのは頬を伝うもの。
 この時間,人の往来は決して少ないわけではなく普通ならば視線が気になっているだろう。けれど今の私にすれば,そんなものはどうだってよかった。

 緩慢な動きで,しかし一歩ずつ進んでいく。その分だけ私は恭一から遠くなっていく。体だけじゃなく,心までも離れていく気がした。何度引き返そうかと思ったけれど,その度に自分に言い聞かせた。

 ――もう取り返しがつかないんだ,って。

 恭一と私は所詮ただの同級生なんだ。最後の最後,その一瞬まで。私の言葉を否定してくれるんじゃないか。「違うよ」って言ってくれるんじゃないか。私のことを引き止めてくれるんじゃないか。そんな淡い期待が胸にあった。けれどもそもそもそんなはずはないんだ。私が勝手に恭一を好きになって,勝手に付き合ってるような気になって……ただそれだけの話。今更そんなこと言えない。

 ――私は。私は恭一と,これ以上離れたくなかった。友達でかまわない。そう思った。

 だけど涙は止まらない。寂しいのか? 苦しいのか? 悲しいのか? 痛いのか?
 ――多分全部だ。
 恭一がいなくて一人きりで寂しい。
 私の思いが恭一に伝えられないことが苦しい。
 恭一とこんなことになってしまって悲しい。
 胸が――だから胸が張り裂けそうなほどに痛い。

 そんな弱い私。弱いから,強く見えるように振る舞うことしかできない。
 あの時も,私自身のポリシーなんかより大切なものがあったはずなのに……。――(続く)
(7)へ

実は――

2004-06-23 16:29:18 | 雑記
 約四日間にわたって更新が停止していたよ~。理由は,はにゃんのコメントで見たかもしれないけどPCがおかしくなってたから。日本語入力ができなくなってたんだよ……。
 昨日,どうにか手助けをもらって回復したんだよん♪ということで久しぶりに更新。
 ようやく短期連載小説が終わったよん♪夜にはテーマ小説も更新できるといいけど――。まぁ,今後また更新していくのでよろしく。ではでは。

『短期連載小説』始めました!(4)

2004-06-23 16:17:37 | 『短期連載小説』
     「Dear My Hero」
              (第四回)

 目が覚めると,夕陽が沈もうとしていた。
 どうやら泣き疲れて眠ってしまったらしい。
 教室に一人きり……彼は行ってしまったみたい。
 私はそっと胸の上で両手を重ねた。
 目を閉じる――。
 再び開いた時,何かが変わっていた――なんてことはない。
 それでも時は流れていく。

 私のヒーローは行ってしまったけれど,魔法使いは消えてしまったけれど,彼はここにいないけれど,私は今,ここにいる。
 人に話しても,到底信じてもらえないだろうけど私は知っている。確かにこの三年間が現実だったことを。
「……また,言えなかった」
 次に会う時には,ちゃんと彼に伝えられるように私は向き合って生きていこうと思う。
 私は彼の代わりになることなんてできないけれど,彼の思いを誰かにつなげることはできる。
 私が誰かのヒーローに,誰かの魔法使いに,私が私にとっての彼になれるように――。
 すぐには変わることなんてできないかもしれない。だから一歩ずつ踏みしめて歩いていこう。後悔しないように,彼が後悔しなくていいように。
「……よしっ」
 扉を開けて私は新しい一歩を踏み出した。
「りょうくん……ありがとう」
                                                  (fin)