私は一人,街を歩いていた。
冬空の下。外気は凍えるほど冷たい。唯一温かさを感じるのは頬を伝うもの。
この時間,人の往来は決して少ないわけではなく普通ならば視線が気になっているだろう。けれど今の私にすれば,そんなものはどうだってよかった。
緩慢な動きで,しかし一歩ずつ進んでいく。その分だけ私は恭一から遠くなっていく。体だけじゃなく,心までも離れていく気がした。何度引き返そうかと思ったけれど,その度に自分に言い聞かせた。
――もう取り返しがつかないんだ,って。
恭一と私は所詮ただの同級生なんだ。最後の最後,その一瞬まで。私の言葉を否定してくれるんじゃないか。「違うよ」って言ってくれるんじゃないか。私のことを引き止めてくれるんじゃないか。そんな淡い期待が胸にあった。けれどもそもそもそんなはずはないんだ。私が勝手に恭一を好きになって,勝手に付き合ってるような気になって……ただそれだけの話。今更そんなこと言えない。
――私は。私は恭一と,これ以上離れたくなかった。友達でかまわない。そう思った。
だけど涙は止まらない。寂しいのか? 苦しいのか? 悲しいのか? 痛いのか?
――多分全部だ。
恭一がいなくて一人きりで寂しい。
私の思いが恭一に伝えられないことが苦しい。
恭一とこんなことになってしまって悲しい。
胸が――だから胸が張り裂けそうなほどに痛い。
そんな弱い私。弱いから,強く見えるように振る舞うことしかできない。
あの時も,私自身のポリシーなんかより大切なものがあったはずなのに……。――(続く)
(7)へ
冬空の下。外気は凍えるほど冷たい。唯一温かさを感じるのは頬を伝うもの。
この時間,人の往来は決して少ないわけではなく普通ならば視線が気になっているだろう。けれど今の私にすれば,そんなものはどうだってよかった。
緩慢な動きで,しかし一歩ずつ進んでいく。その分だけ私は恭一から遠くなっていく。体だけじゃなく,心までも離れていく気がした。何度引き返そうかと思ったけれど,その度に自分に言い聞かせた。
――もう取り返しがつかないんだ,って。
恭一と私は所詮ただの同級生なんだ。最後の最後,その一瞬まで。私の言葉を否定してくれるんじゃないか。「違うよ」って言ってくれるんじゃないか。私のことを引き止めてくれるんじゃないか。そんな淡い期待が胸にあった。けれどもそもそもそんなはずはないんだ。私が勝手に恭一を好きになって,勝手に付き合ってるような気になって……ただそれだけの話。今更そんなこと言えない。
――私は。私は恭一と,これ以上離れたくなかった。友達でかまわない。そう思った。
だけど涙は止まらない。寂しいのか? 苦しいのか? 悲しいのか? 痛いのか?
――多分全部だ。
恭一がいなくて一人きりで寂しい。
私の思いが恭一に伝えられないことが苦しい。
恭一とこんなことになってしまって悲しい。
胸が――だから胸が張り裂けそうなほどに痛い。
そんな弱い私。弱いから,強く見えるように振る舞うことしかできない。
あの時も,私自身のポリシーなんかより大切なものがあったはずなのに……。――(続く)
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気になるやんけ~。