徒然なるままに。

徒然に小話を載せたり載せなかったり。

go off ((警報・時計などが)鳴る)

2006年03月10日 | スレイヤーズ
 目覚まし時計はあるが、それは滅多に役目をなさない。

 毎朝、決まった時間に目が覚める。
 夏で暑かろうが冬で寒かろうが、目が覚めて数十秒で布団から出る。
 そう広くはない居間に出、台所に入ってコーヒーを淹れる。
 居間に戻ると、テーブルの上に新聞が置いてあった。
 頼んだわけではないのだが、新聞は毎朝小さな同居人――居候、とも言うが――が持ってきてくれる。
 コーヒーの入ったカップを片手に新聞をめくる。
 静かな朝だ。
 カチャリと音がして、ドアが開く。ついで、ぱたぱたと小さな子どものスリッパの音。
 スリッパの音は自分のすぐ傍までくると、止まった。

「おはようございます、ゼルガディスさん」
「ああ」
「……………」

 新聞から目をそらさずに応えると、声の主は不満そうに――見たわけではないが――口をつぐんで、それから大きく息を吸い込んだ。

「お・は・よ・う・ご・ざ・い・ま・す!」
「………………………………おはよう」
「はい、おはようございます

 とりあえず満足したらしい。軽い足音が去っていく。
 静かな朝だ。静かな――――――

 ガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガン

「……………」

 突如として響いた騒音に、ゼルガディスは黙って顔を上げた。
 この部屋で起きた音ではない。同じ階で二部屋しかないのだから当然といえば当然だが、これは隣の部屋から響いてくる音である。
 ここ暫くこの音を聞いていなかったのだが――

「……近所迷惑という言葉を知らんのか、あいつは」

 外見にもその年齢にも似合わず賢い彼女だから、知っているだろうが。
 ちなみに、騒音はまだ続いている。まだ布団の中で粘っているらしい。

「相変わらず物凄い音ですねえ、これ」
「……アメリア」
「はい?」
「止めてこい。ついでに、あの馬鹿を叩き起こしてやれ」
「はーい。っていっても、もうガウリイさんリナに叩き起こされてると思いますけどね」