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★ベルの徒然なるままに★

映画、ゲーム、アニメ、小説、漫画・・・管理人ベルの、大好きな物をいっぱい集めた徒然日記です。

映画『紙の月』

2014年11月21日 | 映画鑑賞記
昨日は、日記に書き来ました通り、単館映画館で『FRANK フランク』を。
そして、その後、いつものシネコンで『紙の月』を見て来ました。

『FRANK フランク』は、もう、凄くツボってしまいました。
決して、コメディって感じの作品ではなく、いろいろと深くて重いものを感じたのですが、でも、こういう作品好き。
見終わった後からも、心にじわじわと染み入るものがあって。
繰り返し見たいと思う作品でした。

単館だけど、もう一回、行こうかなぁ~。

まだ、ちょっと興奮が冷めやらないのですが、落ち着いてから、後日、きちんと感想を書きたいと思っています。




という訳で。

今日は、昨日見た、もう一つの映画。

『紙の月』の感想を♪


何か、見ていて引き込まれる雰囲気の予告編が、ずっと心に残っていました。

なので、密かに公開を楽しみにしていて。早速見て来たという訳です。


■映画『紙の月』予告編




契約社員として銀行に勤める平凡な主婦が引き起こした巨額の横領事件のお話。

私は原作小説も未読ですし、NHKのTVドラマ版も見ていません。



・・・とりあえず、思ったのが。

宮沢りえさんがとても綺麗で、物語には引き込まれましたし、映画としてはとても面白かったのですが。。。。

私個人的には、ヒロインに全く共感も同情も出来なくて。

なので、彼女が犯してしまった、とてつもない罪に関しても、いまいち、ピンと来なかったのですよねA^^;;

 
ヒロインの梨花は、契約社員として銀行で働く、ごく平凡な主婦。
っていうか、旦那さんも優しそうですし、傍目には、幸せな主婦にも見えるのですよね。

でも、実は、旦那さんは仕事に夢中で、彼女に対して関心が薄目だったり、ちょっと空気が読めないところがある・・・というか。悪気はないんだけど、思いやりや配慮に欠ける鈍感な部分のある人。

そんな夫に不満を持っていたのか、彼女は、ふとしたきっかけで知り合った、顧客の孫である大学生の光太と深い仲になってしまいます。

最初は、軽い不倫のような関係だったのですが。

光太が、家庭の経済的な事情で、学費として150万ほど消費者金融から借金していることを知ります。

光太の祖父で、彼女の勤める銀行の顧客でもある平林孝三は、金持ちで、200万円ものお金をポンっと気軽に定期預金に出来たりするのに。
孫が学費で苦しんでいても、助けてやろうとすらしていない。

そんな平林に憤りを覚えた梨花は、定期にと預かった平林の200万円を偽装し、着服。

自分のお金ということにして、光太に貸し出します。

しかし。

彼女の横領はそれだけでは済まず。

折しも、夫は海外に単身赴任。
若い光太にのめり込んでいき、段々と金銭感覚が麻痺していき、どんどん豪遊を繰り返し。
そして、遂には顧客の金を次々と着服していくのでした。


・・・というなん物語だけど。

私は、まず、なぜ彼女が、大学生の光太と不倫関係になったのかが、唐突過ぎて理解不能でした。

てか、ちっょとネットで調べてみたら、原作だと旦那さんがちょっと性格悪そうな感じの人で(束縛が強かったり、彼女の収入が低い事を馬鹿にしたり)、夫婦関係が完全に冷え切っていることのとなのですよね。

それならまだしも、この映画では、普通に見て夫婦関係も、そんな悪そうには見えませんでしたもの。

確かに、腕時計の一件とか、旦那さんは無神経なところのある人だなぁとは感じましたが。
でも、それだけかな。

そういう無神経なところなどに不満があるのなら、夫婦なんだし、ちゃんとそういう「想い」を伝えれば良いのだし。旦那さんが自分に関心が薄いのなら、もっと、「私をカマって!」アピールでもすればよいのに~と思わずにはいられませんでした。

そういうこともせず、なんだか、勝手に一人で空しくなって、で、大学生の若い男の子と不倫?

しかも、いきなりホテルシーンとか!!??

凄い唐突感があったのですけど・・・。

いや、まあ、もしかしたら、彼女が旦那さんへの愛情が冷めるまでの過程は描かれてないだけで、もっと色々あったのかもしれませんが。。。。

映画を見ているだけでは、関心が薄いとか、無神経な所がある、だけの印象しか受けなかったので。

彼女が何をそこまで空しく思っていたのかかが分からなかった。

とはいえ。

自分に関心が薄く、おそらく、「女」としては見てくれていない夫への不満と、一度しか会ったことがないのに、自分の事を覚えてくれていて、しかも好意をもってくれる・・・いや、それ以上に「女」として見てくれている若い男の存在が嬉しかったんだろうなぁとは想像出来ました。

しかも、その光太が、大学の学費の件で悩んでいる。
大金持ちの祖父は、助けようともしない。

という感じで、彼女の歪んだ善意から、金を横領。渡しちゃう訳ですね。

ここら辺も、共感出来なかったトコの一つ。

確かに、冒頭では、平林は、金持ちなのにケチな偏屈エロ爺さんに見えなくもなかったです(これは、ラストになって、印象が変わりますが)。

「アンタんとこには、お金が余ってるのに、学費に困ってる孫に、なんで、そのお金を出してあげないの?? だったら、私がちょっと細工して、このお金を、光太の手に渡るようにしてあげれば良い!」

っていうような気持ちからなのでしょうが。

この彼女の感覚自体がね。

歪んだ善意っていうか。間違った倫理観な気がします。


時々、物語中に挿入される、梨花がミッション系の学校に通っていた子供時代のエピソード。

めぐまれない国の子供達への寄付をするために、親の財布から5万円もの大金を盗んで寄付した・・・という、梨花の過去が描かれますが。

そのことをシスターに注意されたら、

「皆が寄付した5万円と、私が親の財布から盗んだ5万円も、恵まれない国の子供の手に渡れば、同じ5万円なのに。それの何がいけないのか」

って言ってましたよね・・・。

なので、多分、彼女の善意とか金銭感覚とかは、子供の頃から、ちょっと歪んでいて。

今回のようなことを起こす、素養のようなものがあったのではないかなぁと思いましたです。

物語の最初の方で、営業の帰りに、百貨店で高額な化粧品を買って。手持ちが1万円足りなかったから、ちょっとだけ、顧客から預かったお金を借りて、後で、ちゃんと戻しておく・・・というシーンもありましたが。

これも、絶対やってはイケナイことですよね。

だから、最初から、何か、彼女の中のお金に対する倫理観って、少しずれていたのかなぁと。
そして、もしかしたら、彼女自身も、それはイケナイことって知っていながら、夫への不満とか、若い男の子への愛情とかで、今まで抑えていた物が、全部噴き出してしまったのかも・・・。


因みに、彼女が最初に横領したお金の持ち主・平林。

最初は、金持ちな癖にケチなエロ爺さんに見えましたが。

物語のラストでは、それが勘違い・・・というか、印象が変わってきます。

もしかしたら、物語冒頭にそう見えたのは、梨花のフィルターを通して彼を見ていたからかもしれませんね。

ケチに見えた平林ですが、実は、お金の管理に厳しい人だっただけなのかも、ですし。

彼が頑なに、孫に援助しなかったのも、若い内から簡単にお金が手に入る~という味を知ったら、人間としてダメになると考えていたからかもしれない。

現に、梨花が豪遊させ放題にしていた光太は、段々おかしくなっていきますよね。

大学を辞め、テキトーにラクして儲かる話に惹かれて行ったり。
はたまた、ホテルだかレストランだかのラウンジでも、スタッフさんに対して、凄く横柄な態度を取ったり。

やっぱり、お金って、「分相応」っていうものがあると私は思うのですよね。
で、つい、分不相応なことをやっちゃうと、人間、狂ってしまうような気がするのです。
お金って、そりゃ、無いより有る方が良いけど。
持ちなれない大金を手にすると、人は、身を持ち崩していく。破滅しちゃう。
私は、そう思っています。
魅力がある分、人を狂わせるのですよ。

だから、平林は孫にお金を与えなかったのかなぁ~と。

っていうか、最後の方で横領がバレ、背に腹は代えられなくなった梨花が、ブラウスの前を肌蹴て、平林から色仕掛けでお金を手に入れようとしますが。

「あんた、何か勘違いしてないか?」

と言った平林の一言。

うん。

やっぱり、梨花の感覚は、最初から、ちょっとズレていたのかもしれない・・・と感じました。


そして、彼女と対比するように描かれていた、小林聡美さん演じる、銀行のベテラン職員・より子。

ただただ、自分を律し、仕事に専念する、真面目で地味な女性。
梨花も、場合によっては、より子のように、地味な女性のままで終わっていたのかもしれませんよね。

でも、それでは終わらなかった。

彼女は変わった。

人間、何かの抑制がハズれちゃうと、こここまで変わってしまうのか・・・とも思いました。


物語の冒頭から、どんどん変わって行く梨花が、とても印象的です。

宮沢りえさんの演技、凄く良かったですよ。


最初は、お化粧も、服も、地味で。

銀行で働く真面目な主婦・・・って感じなのですが。


光太と不倫をし、豪遊をしていく内に、どんどん変わって行きますよね。

普段の通勤に着ている服装も、オシャレになっていくし、メイクも派手になっていく。

でも、それと比例するかのように、彼女の家の中は、散らかり放題で汚くなっていく。

ロクに掃除もしていないような汚い部屋で、追い詰められたように、偽の証書を作ったりしている姿も心に残りました。

若い男の子と恋をして、派手にお金を使って。
一見、どんどん華やかになっていくかのような梨花の外見だけど。

でも、彼女の内面は、あの、散らかり放題の汚い部屋と同じなのではないかなぁ~と。
あの汚い部屋こそが、彼女の荒んだ内面だったのではないでしょうか?

ってか。

プリントゴッコとかで、印鑑って偽装できるものなの!!??(笑)

物語の舞台が1994年ということで。

ブリントゴッコとかもだけど、ケータイもなく緑色の公衆電話とか、なんか懐かしいような気もしました(笑)

っていうか、今の時代だったら、彼女のようなやり方での横領は出来ないシステムになっているのかも~ですよね。


それから、予告編では「衝撃の結末」って煽ってたけど。

うーん。
別に衝撃でもなんでもない・・・ちょっと消化不良感が残ったのは否めませんでした。


とにかく、見ていて、怖くて怖くて。

別に、私が横領している訳でもないのに、なーんか、自分が罪を犯しているような後ろめたさが、鑑賞中、ずっと心に付き纏って離れませんでした。

ヒロインには、決して共感できませんでしたし、私なら、こんな転落はしないと思ったりもしたのですが。

でもでも、そうじゃないのかもしれませんよね。

このヒロインの梨花だって、銀行のパートさんから始めて、試験を受けて契約社員になった時には、まさか、自分が若い男の子と不倫したり、巨額の横領をしたりする~なんて、全く思っていなかったでしょう。

人生、何が起こるか分からない。

他人の目から見れば、理解出来ないような、「そんなバカな」と思うようなことがきっかけで、人間って、何かのタガが外れてしまい。そして、一度、タガが外れてしまったら、あとはもう、坂道を転がり落ちるように転落していくだけ・・・。
きっかけは違えど、誰しも、梨花になってしまう可能性は、もしかしたらあるのかもしれない・・・という人間の怖さは感じました。

そう思うと、鑑賞後は心がズーンと重くなってしまいました。


怖い映画です(>_<)