★ベルの徒然なるままに★

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映画『魍魎の匣』

2008年01月07日 | 映画鑑賞記
昨日の話ですが、映画『魍魎の匣』を観に行ってきました。
原作は京極夏彦さんの同名小説。
京極さん、大好きな私は、このシリーズは、大学時代に読みあさりましたです。
因みに、この作品はシリーズ2作目で、シリーズ1作目の『姑獲鳥の夏』も何年か前に映画化されました。
基本的に、キャストは前作とほぼ同じでしたが、メインキャラクターの関口役が、永瀬正敏さんから椎名桔平さんに変わっていましたね。

ではでは、感想です。

舞台は、戦後間もない日本。
連続少女バラバラ殺人事件という猟奇事件が世間を脅かしていました。
なぜか、体や頭は見つからず、少女のバラバラになった腕だけが、アチコチから発見されては世間を震撼させていたのです。

そんな中、探偵の榎津礼二郎は、元映画女優の柚木陽子からある依頼を受けます。
その依頼とは、行方不明になった陽子の一人娘を捜索して欲しいということ。
陽子は未婚の母。その一人娘である加菜子の父親は、実は大富豪とのことで。その血族が、皆死に絶えようとしている中、唯一、その家系の血を引く者として、莫大な財産の筆頭相続人になってしまったらしいのです。加菜子を相続人として跡を継がせたいともくろむ富豪の雇った弁護士が加菜子を連れ去ったとのこと。陽子としては、加菜子にはすべての相続権を放棄させ、母娘二人、静かに暮らしたいということを願っており、何が何でも、可菜子を取り戻したいと榎津に頼むのでした。

他人の過去の記憶が見えるという特殊能力を持っている榎津は、その力を頼りに、なんとか加菜子の居場所を突き止めるのですが・・・その時は、加菜子は、何者かに駅のホームから突き落とされ、電車に轢かれてしまった直後でした・・・。一命をとりとめた加菜子は、そのまま、権威ある医者のいる研究所に運ばれるのですが・・・。

一方、ほぼ時を同じくしたころ、都内にある「実録犯罪」という雑誌社の社内から、箱に詰められた少女の腕4本が発見されるという事件が起こります。
またしても、腕だけが見つかるバラバラ事件。

その現場近くにたまたま居合わせた、作家の関口巽と、女性記者の中禅寺敦子は、事件に関心を持ちます。そして、「実録犯罪」の社員・鳥口の協力も得て、単独、捜査に乗り出します。
すると、バラバラ事件の背景に、世間を騒がせている悪徳新興宗教団体が絡んでいることを突き止めるのでした。

まったく関連性が無いように思えた、元女優の娘・加菜子の電車事故と、バラバラ殺人事件、新興宗教団体、権威ある医者の山奥にある不気味な研究所。
少女をバラバラにするというテーマで小説を書き続ける、謎の新人小説家・・・。

これらが、一つのラインに重なったとき、すべての謎が明らかになり、おぞましいまでの真実が解明されるのでした。


原作小説は、何度か読み返していたのですが、細かいところを忘れていたので、新鮮に物語を見ることが出来ました。
映画と小説は別物と考えて楽しんだ方が良いのは分かっているのですが、ついつい、原作小説と比較してしまうファン心理・・・ということでA^^;;
若干、気になった点もありましたですが。

まず、「映画」としては、面白くできていたと思います。ただ、原作の独特の雰囲気は出せていなかったような気も・・・。
とはいえ、前作「姑獲鳥の夏」は、原作の雰囲気を出そうとして、かえって失敗していた感が強かったので・・・そういう意味では、とても見易く、分かりやすい作品に仕上がっていて、映画として楽しめる作品になっていたと思いますね。
ただ、やはり、登場人物の独特な魅力が描け切れてなかったのは、ちょっと残念かな・・・。
偏屈な性格の陰陽師兼古本屋の京極堂・・・こと、中禅寺秋彦、かなり重度の鬱気質のある作家・関口巽、他人の記憶を見るという特殊能力を持つが故か、かなりの変人の榎津礼二郎・・・と、このシリーズに出てくるお馴染みのメインキャラクター達は、どれも、すごい個性というか、アクの強い変人だらけなのですよねA^^;
でも、映画では、京極堂も親切な優しい人でしたし、榎津も、自ら進んで捜査をするような熱心な探偵になっていましたてし、何より、激しい鬱病の関口が、めっちゃ普通の人・・・というか明るい人だったのが、すごく衝撃でした。
やはり、偏屈な登場人物だらけにしちゃうと、どうしても、見ている側も感情移入出来ないですし・・・だからこそ、敢えて、登場人物のアクを抜いて、普通の人っぽくしたのかなぁと思いました。
原作ファンとしては、あの、一風も二風も変わった登場人物達の絡みを読むのが楽しいので、ちょっと淋しい気も致しましたが、でも、特に違和感はなく、返って良い感じになっていたと思いました。

とにかく、京極夏彦さんの小説では、同時に全く関係ないと思われる複数の事件が、複数の場所で別々に起こり、それが、最後には見事に繋がってくる・・・という作品傾向でして。
だからこその、読んでいるだけで筋トレになりそうな分厚い本なのでしょうが、やっぱり、それだけ、内容も複雑ですよね。
その複雑な内容を、よく、2時間ちょっとという時間内にまとめ、しかも、分かりやすく仕上がっていたなぁと、その手法には感動しました。
伏線も、結構張られていたと思いますし。
まあ、普通に見ていたら、犯人はすぐに分かっちゃうのですが、それでも、おどろおどろしい造りで。途中で、犯人が分かってしまっても、面白かったです。

そして。
バラバラ事件というだけあって、結構、エグイ映像もありましたです(><)
小説で読んだときは、あまり何も想わなかったのですが、やはり、映像で見ると、恐いですよね~。

また、戦後直後のかなりゴミゴミした混沌な感じながらも、活気のある東京の街並みなど、良かったと思います(中国でのロケだそうですね)。


複数の事件がいろいろと絡み合った上での結末なので、もしかしたら、原作を読んでいないとかなり分かりにくいストーリーなのかもしれないです。が、私は、しっかりと意味も分かり、楽しめましたです。
・・・ちょっとエグくて、鑑賞後、食欲無かったけどね(^^)b

全体的に見て、「絡繰」という名にふさわしいミステリ映画だったと思います。
戦後の混沌の中での猟奇事件、怪しげな新興宗教、戦争が生んだおぞましい医学的戦略、そして、マッドサイエンティスト。
どれも、狂気的ではありますが、どことなく、人間の哀しさ、寂しさを孕んでいて。
一概に「恐い」と言えない、何か、蠱惑的な魅力があったと思います。


そうそう。
以下、微ネタバレ。

最後の最後・・・ラストシーン、結構も恐いと思いましたです。
あの「ホウ」っていう言葉は、原作を読んでいないと絶対に分からないと思うのですが・・・。その少し前のシーン、箱に入った加菜子に、雨宮が電車の中で語りかけている所。
箱の中身を、同じ電車に乗っている少年が覗き込んで見ていましたよね・・・。

これって、ちょっとリドルストーリーっぽい終わり方って言うか。
もともと、箱の魅力に取り憑かれていた、久保竣公も、少年時代に箱詰めされた女性のバラバラ死体を見たのが、おかしくなったきっかけ・・・だったのですよね。
で、そんな久保竣公の幼少期と同じようなものを見てしまった、第三者の少年・・・。彼も、また、第二の久保竣公になっちゃうのかなぁ~って思えて。恐いエンドだなぁと思いました。

原作とは、また違った楽しみ方が出来ました。