★ベルの徒然なるままに★

映画、ゲーム、アニメ、小説、漫画・・・管理人ベルの、大好きな物をいっぱい集めた徒然日記です。

映画『スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師』

2008年01月21日 | 映画鑑賞記
先週土曜日、初日で見てきました~。
ティム・バートン&ジョニー・デップの新作映画は、ホラー・ミュージカルです。

主役のジョニー・デップ以外にも、ハリー・ポッター・シリーズでお馴染みのスネイプ先生ことアラン・リックマンが、主人公の復讐相手として出演。また、「ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団」でベアトリックス・レストレンジを熱演したヘレナ・ボトム・カーターも出演で、いろいろと楽しみにしていました。

物語は・・・と言いますと。
19世紀ロンドン・フリート街。
平凡だけれども幸せに暮らしている理髪師が居ました。彼の名前はベンジャミン・パーカー。美しい妻と、生まれたばかりの娘との幸せな日々・・・。
しかし、彼の妻の美貌に目を付け横恋慕した、悪徳判事ターピンは、なんとかして、パーカーの妻を自分のものにしたいと企みます。そして、無実の罪で、パーカーを逮捕し終身刑を告げ、流刑地に流すのです。

それから15年後。
名前をスウィーニー・トッドと改め、ターピンに復讐するためにパーカーはロンドンに帰ってきました。かつて、自分たちが住んでいた家を訪れ、その家主でパイ屋の女主人でもあるミセス・ラベットから、自分が投獄された後に、残された家族に起こった悲劇を聞かされます。
ターピンに辱められ、それを苦に、毒を飲んだ妻。
そして、残された、赤ん坊だった娘は、そのままターピンに引き取られ、今でも、ターピンの屋敷に監禁状態で暮らしている・・・と。
憎きターピンに復讐するため、まずは、理髪師として仕事を再開させるトッド。けれど、彼の過去を知る者が現れ、彼を強請ったため、勢い余って殺してしまうのでした。
その死体の処理に困っていたトッドに、パイ屋の女主人ラベットは、「ある提案」をするのでした。そして、その提案に乗ったトッドは、それを巧く利用して、いずれは、ターピン殺害を目的とし、自分の理髪店に、「ある改装」を施すのでした。
ラベットがトッドに持ちかけた「提案」と、トッドが自分の見せに施した「ある改装」とは・・・身の毛のよだつような恐ろしいものでした・・・・。


以下、激しくネタバレ感想なので、これから鑑賞の方はお気をつけ下さいませ。


復讐に取り憑かれた理髪師がどんどんと人を殺していき、その死体を、パイ屋の女主人が食肉として加工し、自分の店のパイに入れて焼き、客に食べさせる・・・という、とんでもないお話です(@A@; さすが、R15な映画A^^;;
映画を観る前から、なんとなく、あらすじは知っていて、しかも、R15・・・。血と残虐系がとにかく大嫌いで、自分の血を見ても貧血を起こしそうになってしまう私ですので、かなり、ビクビクしながら見ていました・笑 とはいえ、大好きなデップ&リックマン出演となると、見ないわけにも行きませんっっ。

確かに、かなり、残虐です。殺人のシーンも多いですし、もう、カミソリで頸動脈を一気に!!!って感じで、血しぶきが飛び散りまくりな映像です。でも、映像自体が全体的に、薄暗い黒っぽい映像で、その中で血が赤く表現されるのですが・・・黒っぽい背景とコントラストを為しているせいか、血の色が、なんというか、作り物っぽい「赤色」なのですよね。なので、血しぶきなどは飛び上がりまくりであるものの、映像的にリアリティさというのは、あまり感じませんでした。なので、血が苦手な私ですが、意外にも、大丈夫でした。まあ、気持ち悪いといえば、悪いですが。血が本当にダメという方にはオススメしません。
ホラーで、恐くて、気持ち悪い話ではあるのですが、ミュージカルになっているからか、どこかコミカルで、おかしくて、でも、哀しげな・・・そんな映画でした。あらすじだけ聞くと、だれだけ気持ち悪くて恐い話なのか・・・という印象ですが、映画自体は、そんなに恐いという感じでは無かったです。むしろ、哀愁漂う映画というか。
例えば、トッドが、どんどん人を殺していくシーンがあるのですが。
そのシーンも、ミュージカルなので、歌を歌いながら、彼は客の喉を切り裂いていきます。そして、殺した後は、彼が仕掛けを作った椅子のペダルを踏むと、床の一部が開き、手を使うことなく、死体は椅子から、パイ屋の調理場に自動的に落ちていくのです。トッドが歌を歌いながら、【客の喉を切り裂く→椅子のペダルを踏む→死体が地下に落ちていく】・・・というのが、すごくスピーディに、リズミカルにどんどん進んでいくので、まるで、人殺しをしているのではなく、魚か何かをさばく作業をしているかのような、はたまた、踊りを踊っているかのような、そんな雰囲気です。
また、死体をパイにして売ろうと提案するラベットも、すごく残虐で非人道的な提案をしているにもかかわらず、すごく無邪気に悪びれたそぶりもなく、そういった内容を口にするのです。
本当はすごく恐いこと、酷いことなのに、全く罪にすら思っていない二人の行動が、滑稽でもあり、また、不気味でもありました。けれども、自分の欲望のためなら、無実の人間をも平気で陥れる判事を筆頭に、貧富の差の激しい社会、子供を奴隷のように鞭で扱う雇い主など、あまり良いとはいえない社会背景は、あまりにも暗く汚く、彼らの悪行ですら覆い隠してしまいそうに思えました。所詮、汚い世界には、どこまでも、悪がはびこっていく・・・というのは、恐いと言うよりは、むしろ、人間の愚かな滑稽さや哀愁が感じられるほどでした。
そして、それだけに、トッドの娘であり、ターピンに監禁されていた娘のジョアナや、そんな彼女に一目惚れし、なんとか彼女を助けてあげようとする船乗りのアンソニーの純粋さ、穢れの無さが、引き立っていたように思います。

数々の歌も、独特のメロディで、物語にとてもマッチしていて、魅力的でした。サントラ、欲しいなぁ~。

私は、映画を観ながら、死んだとされていたトッドの妻が、実は生きている・・・というのは、薄々感じていました。
というのが、最初登場したときには、お婆さんなのかな・・・と思っていた物乞いの女が、段々と、まだお婆さんではなく、若い女性であることが分かった来ましたよね。その段階で、もしかして、この浮浪者の女性は、トッドの元妻なのでは・・・という疑問があり(確かに、ラベットは、「ヒ素を飲んだ」とは言ったけれども、「死んだ」とはひと言も言ってなかったわけですから)、それは、ラストのラスト、トッドが殺人現場を見られたと思い、その浮浪者の女性を殺した所ではっきりと分かりました。汚い格好をしていても、顔が、一緒でしたしね。
あのシーンは、物語の最大の見せ場というか、意味のあるシーンだったのでは・・・と思いました。
というのも、15年前親子三人で幸せに暮らしていたあの場所に、まさしく、親子三人が揃っていた場面だったのですものね。
殺人鬼となった父親。
気が狂って、物乞いとなった母親。
そして、何も知らずに、アンソニーによってターピンの元から救出され、一時的にトッドの店屋の箱の中に隠れていた娘。
互いに互いが家族と知らず、昔幸せに暮らしていた場所に集っていた・・・。
それは、すごく皮肉で哀しい結末ですよね。
それより何より、自分の娘とは知らず、箱の中に隠れていた娘を殺そうとしたトッド。そして、図らずも、そんな娘の命を救ったのは、気がふれてしまった、彼女の母親であり、トッドの妻であった女性。
哀しすぎる展開ですよね・・・。

また、トッドを愛していたからこそ、彼の妻が死んだと偽っていたラベットもまた、自分の恋に目がくらみ破滅したわけですね。
色んな所で歯車が狂って、皆、死んでしまったわけですがも、それが、なんとも皮肉ですね。結局、自由と恋を手に入れたジョアナとアンソニーだけが幸せになれたのかな? やはり、純粋さ、穢れなき者の勝利・・・ですか???
でも、それだけが、この哀しい物語の中の、唯一の救いだったと思いました。

ターピンに復讐することだけを、ずっと生き甲斐にしていた割には、ラスト、ターピンを殺すシーンは、すごくアッサリしていた所からも、これは、トッドのターピンへの復讐の物語・・・というよりは、トッドの破滅の物語・・・いえ、トッドだけでなく欲に取り憑かれた人間の業や愚かさ、罪と、その罪の代償の物語・・・という風に思えましたね。もっと言うと、欲に取り憑かれた人間がどれだけ愚かで滑稽なのか・・・ということかな。

自分の色欲のために、罪のない男を無実の罪に陥れ、その妻を陵辱したターピン判事の業。
復讐に取り憑かれ、その目的の為なら、罪のない人までをも殺し続けたトッドの業。
そして、恋に目がくらみ、戻ってきたトッドに真実を告げず、その犯罪に荷担したラベットの業。
彼らは、結局、己の犯した罪の代価として命を支払うハメになったのでしょう。
それは、すごく愚かしいけれども、でも、すごく哀しいことにも思えました。

恐くて、かなり気持ち悪いけれども、でも印象的な映画でした。
とはいえ、見た後は、食欲無くなりましたね。
とりあえず、お肉は当分食べたくないし、お肉を使った料理もしたくないかもA^^;;

俳優さんも魅力的でしたね。
ほんと、今回のトッドやシザーハンズ、チョコレート工場など、白~~~いお顔から、スパロウ船長のように浅黒いお顔まで、役柄のバリエーション色々で、ジョニー・デップの素顔が分からなくなりそうです。
そして、悪役の判事は、スネイプ先生でお馴染みの、アラン・リックマン。
何気に、エロ本コレクターな判事に、ちょっとウケました。
というか、裁判官の権威の高いイギリスで、悪役判事の設定って、ちょっと面白いなぁと思いました。
そしてそして、もっと気になったのが、判事の手下にティモシー・スポール。顔を見て、すぐに分かりました~。「ハリー・ポッター」シリーズで、ロンのネズミに化けていたワームテールの人ですよね。
さらには、トッドの殺人の最初の犠牲者になった理髪師ピレリに、サシャ・バロン・コーエン。どこかで見た顔だと思っていたら、「ボラット」の主演のコメディアンさんですよね。「ボラット」のとてつもなくお馬鹿なイメージがあまりにも強かったので・・・こういう役もされるのだなぁとしみじみ感動いたしました。