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気が向いたら読書感想を書き、ねこに癒され、ありがとうと言える日々を過ごしたい。

『有頂天家族 二代目の帰朝』

2015-03-13 12:00:00 | 本の話・読書感想





『有頂天家族 二代目の帰朝』 森見登美彦 著(幻冬舎)
 ぶあつーい!というのがまず最初の感想でした(感想じゃねぇ 苦笑)
 この『有頂天家族』は前作がアニメになったり舞台化されたりして、そのどちらも観てたので、脳内変換が忙しいというかごちゃ混ぜで混乱気味というか……。
 でもこの続編を読み終えて、ああこれはまたアニメ向きだのう……と思いましたともさ♪
 前作を読んでからの方がぜったいにいいです。ていうか前作知らないと何だかよくわからんと思う。ついでに他の森見作品キャラがちらっと登場するのでニンマリw
 愛すべき狸達と天狗達です。



ええと、最後のページまで来て、まず思った。「えっ、ここで終わり?!」

はい続きますねこれは。ものすごく続きますね、ていうか続きが気になるので早く書いて森見さん!(←鬼)

前作では向かうところ敵なしだった弁天さんが、まさかの展開。

主人公は狸の矢三郎くんで、また狸達がコロコロしてますが、ストーリーの軸は弁天さんですよね。

分厚いし、かなり怖い。京都の各地というより、京都に蠢く狸と天狗と人間の心の中、つまり空も地も水の中も関係なくあっちこっちで異世界やら異空間やらあの世やら地獄やらと繋がってるし!地獄の釜の蓋がこんなに身近に開いてたらおちおち古美術の前に立てへんやないですか……。

読んでるあいだじゅうずーっと、矢三郎くんたち狸の存在に救われてました。

またその意味で、綾辻先生の『深泥丘奇談』シリーズのホラーテイストに近いなあと。出てくる地名も(深泥丘はフィクションというかパラレルワールドですが)ほぼ重なってるし。

こうしてみると、京都は確かに使い勝手のいい場所なんですね。日常でも非日常でも、ファンタジーでもホラーでも、コメディでもシリアスでも、どんな設定でもイケる。

繰り返しますが、今回の新作では、けもけもしい毛玉達が居なかったら、かなりブラックでしたね……。ヘヴィというかシビアというか。
京都の上空に地獄が出現するところでした……危ない危ない。

狸達の敵・金曜倶楽部も怖けりゃ、下鴨家の敵・夷川家の海星ちゃん以外の面々がこれまた前作以上にゲスでえげつないし、天狗大戦も真剣勝負、将棋盤も屏風絵図も人間も温泉も怖い。

二代目と弁天さん、わたしはロンドンで面識どころかお友達だったんじゃないのと思ったんですが、これは意外。ついでに赤玉先生が伊達に天狗じゃなかったことがわかって見直した(苦笑)。腐っても天狗は天狗、赤玉先生って凄かったのねぇうんうん。

とにかく矢三郎君たち下鴨家の敵はとことん敵でした。狸達の敵(人間と鞍馬天狗たち)もほとんど敵でした。つらい。

狸達がコロコロかぷかぷしてなかったら、泣くところでしたよ。

だからなのか、夷川の海星ちゃんがよりいっそう可愛い。南禅寺さんもアロハのおじいちゃんも良い狸。けもけもしい狸達が癒しでしたね。
中でも矢一郎兄さんが素敵でした~!詰めが甘く本番に弱く頑固で融通が利かず生真面目すぎでキレると虎になる長男ですが、何が大事なのかの芯が通ってるから気持ちいい御仁、ていうか御狸(そんな言葉たぶんない)
また、矢三郎君の中に、お父さんの仇を追い詰めるという復讐心がちゃんと根付いていたのも意外といえば意外。「面白きことは良きことなり」を信条に面白おかしく生きてる表面的な顔の裏に、こんな一面があったのね……。あと、弁天さんへの想いと、狸としての現実的な見方がパラドックス起こしてないところも。

分厚いだけあって、矢三郎くんたち狸の世界の感情移入や、弁天さんと二代目という若い天狗の弱さ脆さ、金曜倶楽部の人間達の鬼のごとき冷酷さと貪欲さ、下衆はどこまでも下衆で、そんな世界に転がる毛玉達の矜持と可愛さ……、そういうものが隅々にまで行き渡っていて、面白かったです本当。

二代目のプライドや立ち居振る舞いがキラッキラしてて、タイトルにあるように二代目が騒動の中心なのかと思いきや、読んでいくうちに分かってくるのは彼がロンドンから京都に帰ってきたことでスイッチが入る狸たち天狗たちの大騒動で、赤玉先生が凛として見えるほどに弁天さんも二代目もまだ若い。
毛玉たちにしても、下鴨四兄弟をはじめ金閣銀閣と海星ちゃん、玉欄さん、とにかくみんな生き生きしてる。
一方。
もはや正確な年齢も分からないようなキャラクタ達の老獪さと破れかぶれな未来のなさ。
若さと老いたる者の見事な対比。
狸鍋にされてもう歳をとらない下鴨総一郎さんと、四兄弟の母上の健全な心根と瑞々しさは、その中間として良いクッションになってるなあ。
この両親だから助け合える四兄弟。
阿呆の血のしからしむるところに従い、人間と天狗と狸達をつなぐもの。

クライマックスからエンディングにかけては、なんだか切なくなりました。

赤玉先生のセリフにしょっちゅう出てくる、「しょうむな(い)」。しょうもない、という関西弁のさらに京言葉ですが(古い大阪の言葉でもあったような……)、舞台は京都でもキャラクタ全員が標準語の中でこの「しょうむな(い)」が山椒のように効いて京都を思い出させてくれますね。

さて、続編ではどんな面白いことが待ち受けてるんでしょうね、今から待ち遠しいです♪




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