古代ギリシャのポリスは前回述べましたように、小高い丘(アクロポリス)に建てられる神殿を中心に、そのふもとのアゴラには広場、劇場、競技場、市場等が作られたのが特色です。
その中でも、とりわけ神殿建築に力が注がれました。
それは、一重にゼウスやオリンポスなど神々を信じる信仰心が極めて強かったからと言えます。
柱と梁で構成される神殿は、柱と柱の間の距離(スパン)、柱の直径に対する柱の高さ、梁(アーキトレーブ)の高さ、梁上部の装飾要素(フリーズとコーニス)、さらには、柱を直線的に建てるのではなく一定のふくらみ(エンタシス)をもたせる等、視覚的に最大限に美しく見せる努力と工夫をしていました。
神殿で試みられたこれらの美的意識、造形的感覚はいかにギリシャ人の芸術的思考が進んでいたかを感じさせます。
そして、“オーダー”と呼ばれる柱頭部の装飾を生み出しました。
オーダーは、ドリス式、イオニア式、コリント式の3種類があります。
オーダーは、以降のヨーロッパ、とりわけルネッサンス以降の建築で多用され、その後もヨーロッパだけでなく世界中で使用され続けています。
オーダーが今から2000年以上も前の古代ギリシャにおいて生み出された事を考えると、現在言うところの意味は若干違いますが、英語の“普遍的”という意味において、“ユニバーサルデザイン”だなあとつくづく感じます。
一般庶民の住居はオリエント地域(古代メソポタミア及び古代エジプトを包括する地域)同様日干し煉瓦造で、残念ながら遺構は非常に少ないです。