ことばと学びと学校図書館etc.をめぐる足立正治の気まぐれなブログ

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専門職に求められるコミュニケーション能力をめぐって

2009年04月01日 | マミム・メモ

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 今日41日、多くの企業で入社式が行われた。今年度の採用をめぐっては、内定企業から自宅待機や関連会社への転籍、内定辞退などを迫られるケースが問題になったが、329日付朝日新聞朝刊には、10年春の新卒採用計画に関して主要企業100社を対象に行った調査結果が掲載されていた。採用を減らす企業が増えるなか、採用にあたって重視する点として「コミュニケーション能力」を挙げる企業が最多の74社にのぼり、「行動力」(51社)、「人柄」(32社)、「熱意」(31社)が続く。その一方で「マナー」「語学力」「成績」を選んだ企業はなく、「学生時代の活動」(9社)も少数派だったという。採用試験に面接やグループ討論を取り入れる企業も多く、記事は、「与えられたテーマについての考え方を知るだけではなく、討論の中で現れる他者とのかかわり方を通じ、コミュニケーション能力を見極めようという姿勢がうかがえる」としている。

 阪神淡路大震災を契機として1997年から新しくなった学校図書館の運営に携わるスタッフを数年にわたって公募した際に、私が選考基準の最優先においたのも「コミュニケーション能力」だった。司書や情報リテラシーの指導者として「自分のやりたいこと、やっていること、やったことを具体的に示す」ことを求めた。だが、それだけでは期待に応える仕事をしてもらえるかどうかを見極めるのに十分とはいえない。応募書類と面接から読み取ろうとしたのは「専門職としての自覚と志の高さ」である。応募者とことばを交わしながら「この人は専門的な知識や技能を実際の行動に結びつけることができるだろうか」と自分に問うてみた。念頭にあったのは、半田智久氏がその著書知能環境論 頭脳を超えて知の泉へNTT出版、1956)で「熱い知」と呼んでいるものである。それは、「感性」、「夢を描く力」(想像力)、「知の欲動」(実践に駆り立てる力)、「意志」で構成されているというのだが、それらを総合的に判断するのはたやすいことではない。それでも面接を重ねるうちに、時折、何かドンと胸を打つものを感じることがあった。押しつけがましさやあからさまな自己主張ではない。専門的な知識と技能に裏付けられた自信と謙虚さが胸を打ったといえばいいだろうか。「自分は、この人から学ぶものがある」と感じる。この人なら、スタッフ同士や他の教職員あるいは学校外の人たちと対等に交渉や連携を行い、チームで何かに取り組むときにも、自らの専門性や個人的な特性が求められる場合には必要に応じていつでもリーダーシップが取れるにちがいない。援助職に徹しながらリーダーシップを取れるということは、子どもに対しても、ただ彼らのニーズや要求に応えるだけでなく、時機を逃さない積極的な介入によって成長と発達を促進する役割を担えるだろう。それは、これからの教育者(親、教師、周りの大人たち)に求められる能力でもある。

 専門職の採用にあたって自分の専門外である図書館に関する知識と技能を直接的に問うことはなかった。だが、職員は、それぞれの立場で専門的な職務を確実にこなしながら、互いの立場を超えて対等に議論や協働を行う中で積極的に学び、それぞれの能力を飛躍的に向上させていった。それによって、学校図書館がこれまでとは見違えるほど活性化し、学校の教育活動のインフラとして定着してきたことはいうまでもない。

 このささやかな経験を振り返ってみても、冒頭に挙げた主要企業の採用基準は、まったく頷けるものである。

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