ことばと学びと学校図書館etc.をめぐる足立正治の気まぐれなブログ

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『知の広場』と『Here Comes Everybody』のこころざし:時代が求める図書館とは?

2011年06月18日 | 知のアフォーダンス

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知性の在り方が問われる現代にあって、教育の明日を拓くために学校図書館はどのような役割を担うべきか? この問いにたいする私の答えは、一言でいえば、ただ本を借りるための図書館にしないことだ。最近は、CDやDVDを借りたり、インターネットにアクセスできる学校図書館も多い。これからは電子書籍も提供されるようになるだろう。そして、何よりも授業や学習に必要な資料を提供することが学校図書館の重要な役割であるとされている。だが、印刷物であるか最新のテクノロジーであるかを問わず、ただ資料や情報を提供するだけでは、時代が求める学びを拓く力にはならない。人が集い、出会いと対話が生まれ、思いがけない発見や学びを生み出す可能性をもった図書館が必要である。そこで行われるさまざまな活動に参加することをとおして子どもたちがコミュニケーション能力や社会性を培い、これからの社会に必要な知性と創造力を育んでゆく。そんな図書館の活動は、当然、教室の授業を活性化し充実させるのに役立つし、子どもたちが社会を眺める窓にすぎなかった学校を、社会に参加するための入り口へと変える原動力にもなる。それには、教師とともに「拡張的な学び」をデザインしコーディネートする学校図書館職員の存在が不可欠である。優れた専門職が、個々の職場を越えて相互のコミュニケーションと協力をはかりながら、その能力を十全に発揮して働くことのできる環境をつくることが急務である。そう考えて、1994年に学校図書館に関わるようになって以来、取り組んできた私の活動と、その背景となっている個人史を語り、記録として出版したのが、先日紹介した『Here Comes Everybody 足立正治の個人史を通して考える教育的人間関係と学校図書館の可能性』(自費出版)である。

 これを読んでくださった青柳啓子さんから、イタリアの公共図書館の取り組みを紹介した『知の広場 図書館と自由』(アントネッラ・アンニョリ著、萱野有美訳、柳与志夫解説、みすず書房)と共通項が多いことを知らせていただいた。さっそく読んでみたら、まさに、その通りだった。こんなに楽しい図書館の本は読んだことがない!そう思えるほど私が求めてやまなかった図書館の姿が描き出されている。公共図書館と学校図書館、イタリアと日本との違いはあるが、そのこころざしに共鳴し、意を強くした。しかも、日本語版の発行日が『Here Comes Everybody・・・』と同じ2011年5月10日ではないか! これは、ユングのいうシンクロニシティ(意味のある偶然の一致)ととらえるべきだろうか。少なくとも、これらの本が、この時代を生きる私たちが意識下で渇望している何かと同期していることはまちがいなさそうだ。そのあたりのことを、8月8日(月)に開催される『Here Comes Everybodyを語る会』(詳細は下記)でも大いに語り合いたいと思う。 

知の広場――図書館と自由
クリエーター情報なし
みすず書房

 以下は、asahi.comに掲載された『知の広場』のレビューである。

http://book.asahi.com/review/TKY201106070152.html

 [評者]辻篤子(朝日新聞社論説委員)[掲載]2011年6月5日

■予期せぬ人・体験と出合う場

 「すべてが欲しい、今すぐに欲しい」

 情報でも映像でも音楽でも、そんな個人の欲求をネットがいとも簡単に満たしてくれる時代である。

 図書館はいわばその対極にある不自由な存在かもしれない。だからこそ、創造力や社会の知性を育てる文化活動の場として重要性は増す、とする。欲しいものだけでない、予期せぬものとの出合いが、豊かな人生には欠かせない。

 著者は、イタリアでの実績をもとに、そんな場としての図書館作りを豊富な具体例とともに提言する。

 本が、読んでくれる人をじっと待っている静かな図書館はもう存在しない。人々が集い、さまざまな体験をする「屋根のある広場」がこれからの姿だとする。

 広場のイメージはいかにもヨーロッパ的だが、千代田区立図書館で、出版社や古書店ともつながった新たな場作りに取り組んだ柳与志夫氏の熱のこもった解説が、私たちの身近にひきつけてくれる。

 

足立正治の『Here Comes Everybody』を語る会

日時:2011年8月8日(月)第1部13:30-17:00 第2部18:00-20:00

場所:兵庫県民会館 304号室

プログラム:

第1部 語る会:講演や鼎談など

第2部 夕食と交流の集い

申込締切:7月10日

詳しい案内は下記にあります。

http://www.kh.rim.or.jp/~masa-sem/HCE/annai2.pdf

本の入手方法は下記までお問い合わせください。

masa-sem@goo.jp

(残部が少なくなっていますので、これからお申込みいただいても、増刷のために、しばらくお待ちいただくことになるかもしれませんが、あらかじめご了承ください)

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