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危機に立つカナダの学校図書館

2005年01月18日 | 学校図書館見聞録:アメリカ・カナダ編
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 オンラインで提供されている『カナダ学校図書館の危機』(The Crisis in Canada's School Libraries: The Case for Reform and Reinvestment)という冊子には、私たちが想い描いていた理想とは程遠いカナダ学校図書館の苦悩の現実が報告されています。予算の削減により、司書教諭が数校をかけもちしていたり、パートタイムで勤務していたり、他の教員と対等の教育活動ができないなどの悩みを持っている。オンタリオ州の小学校では、25年前には42%であったフルタイムの司書教諭は今では10%に。アルバータ州では、ハーフタイム以上の司書教諭は、1978年以降550人から106人に減少。ブリティッシュコロンビアの学校区では、生徒一人あたりの図書予算は、年間80ドルから35ドルに減少。同時に、カナダの子どもたちの読書力、リテラシー、情報活用能力も低下している。バンクーバーではほとんどすべての学校の保護者が、図書館の本を買うための寄付を行っているが、その額は学校区が支給する予算とほぼ同額。
 このように、カナダの学校図書館に対する行政の対応や政策は、決して私たちがお手本にするようなものではありませんが、過酷な状況の下で、なおかつ学校図書館を活用した高いレベルの資料活用教育を維持しようと努力している現場の司書教諭や教育省の担当者の皆さんの姿勢から学ぶことはたくさんあると思います。このような文脈のなかで、あらためてFocus on Inquiryを見直してみると、妥協を許さない理想の高さに感動さえ覚えます。

この資料は、カナダ各州の教育省に対して、13項目の勧告をしているので、紹介しておきます。

THE CURRENT CONTEXT
1.正確なデータを確保するために:州の教育省は、図書や使用認可済みデータベースなどのメディアにかかる経費とともに、学校図書館専門職の有資格者とサポートスタッフの現在の水準を正確に反映するデータを収集し公表すること。
2.州の指導力を発揮するために:州の教育省は、省内と州全域において、各教科領域と各種図書館において、そして各学校区にたいしてガイダンスと支援を行うために、司書教諭及びリソースベースラーニング(情報資源を活用する学び)の専門家を最低一名は配置すること。

IMPACT ON STUDENT LEARNING
3.根拠にもとづく決定をするために:州の教育省は、学校図書館が児童生徒の学力、リテラシー、文化に及ぼす影響の調査に資金を投入すること。
4.責任ある事業と財務を行うために:州の教育省は、学校図書館と司書教諭の有資格者が中心的な役割を果たすという認識のもとに、一貫性のある調和の取れた資金投入と経営を行うこと。
5.公平なアクセスを促進し、情報格差を埋めるために:州の教育省は、サスカチュワン州の(学術、公共、学校をふくむ)マルチタイプ図書館システムのような、接続された学びの共同体を構築するために指導力を発揮すること。

IMPACT ON READING
6.読書の促進と学力向上のために:州の教育省は、学校図書館のコレクションを悪化させている条件の見直しと是正を行うこと。
7.適切で新しい資料を保持するために:州の教育省は、学校図書館コレクションの維持・向上のために基準を設けて、目的を特定した資金の投入を行うこと。

IMPACT ON CULTURAL IDENTITY
8.学校図書館がカナダ人としてのアイデンティティの形成に果たす重要な役割を認識するために:
州の教育省は、カナダの本などの学校図書館向け学習資源を選択するために情報資源の提供を行うこと。

BEST PRACTICE
9.理想的な実践を行うための手引きを提供するために:州の教育省は、理想的な実践のモデルにもとづいて学校図書館および司書教諭に関する政策の見直しと改正を行うこと。
10.投資に対して最大の利益を得るために:州の教育省は、司書教諭の役割の見直しと改正を行い、資格の最低条件を義務づけること。
11.学校全体の変化を促進するために:州の教育省及び教育委員会は、効果的な学校図書館の鍵となる要素とその学力への影響を認めること。明確な運営計画と役割の明確化、同僚とのコラボレーション、柔軟な時間管理、リテラシーと情報問題解決の重視、必須の訓練。
12.現場の実践のモデル化を奨励するために:州の教育省は、大学の教育学部と協力して、教員養成機関では必ず専任の司書教諭課程担当者を最低1名は確保すること。
13.適切なコラボレーションと教育評価を奨励するために:州の教育省は、大学の教育学部と協力して、教師と管理職にたいして司書教諭と学校図書館を効果的に活用できるように教育すること。

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