ことばと学びと学校図書館etc.をめぐる足立正治の気まぐれなブログ

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アメリカの新しい学校図書館基準「21世紀の学習者のための基準」

2007年12月22日 | 学校図書館見聞録:アメリカ・カナダ編

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 今年の10月に発表されたアメリカの学校図書館基準「21世紀の学びの基準」の日本語に訳してみましたので、PDFファイルでアップロードしておきます。11月7日に紹介したときの書き込みでは「今週末にも」全文を試訳したいと書きましたが、多忙にまぎれて一ヶ月半も放りっぱなしにしていました。泥縄式に取り掛かったので、訳文については自分でも納得できないところがありますが、内容は理解していただけるのではないでしょうか。とりあえず皆さんにご覧いただいて、ご意見をいただきながら訳文の修正をしていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 

「21世紀の学びの基準」(原文:AASL Standards for the 21st-Century Learner

 「21世紀の学習者のための基準」(日本語試訳)

 さて、私がアメリカの学校図書館基準に関心を持ったのは、1998年に「児童生徒の学びのための情報リテラシー基準」に出会ったときであった。1995年に起きた阪神淡路大震災で全半壊した校舎の再建する過程でメディア環境の構築に関わり、新たな実践に取りかかったばかりの頃だった。当時、国内では、私たちが目指したメディア教育の構想を実現するための指針や先行実践のモデルがあまりにも少なかった。たしかに資料提供や「調べ学習」の優れた実践は数多くあったが、それらを支える理論が希薄に思えた。少なくとも教育学や教育方法学の最近の動向からみて、今後のわが国の教育の在り方を展望する広がりを感じ取ることはできなかった。そのときに出会ったのが『インフォメーション・パワー』(ALA, 1998)とアメリカの学校図書館基準であった。しっかりとした理念に基づく明確なビジョン、それを実現するための具体的な方策が包括的に述べられていて新鮮で魅力的だった。それは、わが国の学校図書館界でも大いに話題にはなったが、基準の背景にある教育の動向を見通して学校教育を捉えなおす試みはどの程度なされただろうか。

 10年を経て出された新しい規準は、前回よりはっきりと社会構成主義的な探究活動に焦点をあてたものとなっている。多様なリソースを学びに取り入れ、学習者同士の協働を促すことを通して学校の教育活動を拡張し、学びを現実社会と結びつける具体的な方策を示すことで、教師と学校図書館専門職が一緒になって21世紀に求められる学びをデザインし実践できる素地が明確になった。その背景としてアメリカにおける多文化共生教育の流れと児童生徒中心のプロジェクト学習の伝統が支えになっていることは容易に推察できる。だが、ひるがえって、わが国の学校図書館を考えるとき、現代の教育課題を世界的視野で展望して具体策を提示するには理論的にも実践でも熟しているとはいえない。それが実現するには、まず従来の枠組みを越えた新しい学校図書館専門職の教育プログラムを整備するところから始めなければならないだろう。

 

時期を同じくして、長年、社会構成主義の立場から学校図書館活動に理論と実践の両面で貢献してきたCarol C. KuhlthauによるGuided Inquiry – Learning in the 21st Century (Libraries Unlimited, 2007)が出版されたことにも注目したい。

Guided Inquiry: Learning in the 21st Century

Libraries Unlimited Inc

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1 コメント

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Unknown (佐藤 美智代)
2008-02-26 17:00:06
IFLAブエノス アイレス大会報告に 宮部頼子氏が
<Skills and Techniques for Information Literacy Instruction: A workshop(「情報リテラシー指導のための技能・技術 : ワークショップ」)に参加した。これはアメリカの若手女性研究者3名が企画・実施したワークショップで,参加者は50名ほどであった。情報リテラシー指導者としての能力開発を意図した,参加型の実践的なプログラムであった。まず情報リテラシー指導におけるアクティブ・ラーニングの重要性が強調された。すなわち何らかの形で利用者自身が参加するタイプの指導が効果的であるということである。参加者はアクティブ・ラーニングに対する各自の考えを話し合い,さらに,9項目の具体的なアクティブ・ラーニング・テクニックのリストを渡されて,自分が最も複雑だと考えるものから,最も簡単だと考えるものまでランクづけすることが要求された。リストには,Active listening guide(関連質問を盛り込んだプリントを配布して,利用者は指導説明を聞きながら,回答を書き込んでいく),Lecture summaries(指導説明のあとで利用者に3分間で,覚えていることをすべて書き出してもらう)等が含まれていた。ランク付けは壁に張り出されたリスト上に一人ひとりがマークしていく方法で行われた。その結果,参加者の中での各項目に対する評価・認識にかなりのばらつきがあることが分かったのは興味深かった。最後に数人単位のグループを作り,このアクティブ・ラーニングに関するお互いの意見交換とまとめを行った。終わってみると,このワークショップ自体がアクティブ・ラーニングそのものであったことに気づかされ,企画実践した3人の若手研究者の手腕に思わず「お見事!!」と唸ってしまった。 >報告されています。

足立先生、この女性研究者は、Jennifer Dorner, MLS
Humanities & Social Sciences Librarian
Assistant Professor

ポートランド州立大学に在籍する研究者で.dorner@pdx.edu.とmailアドレスも公開されていて ご自分のレポートに対する意見を積極的に求めておられる様子です。
私も関心を持ちました。
もう少し、周辺情報をご存知のかたは おられないでしょうか?
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