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ケニチのブログ

ケニチが日々のことを綴っています

小松一彦+東響=伊福部「釈迦」他

2019-10-29 | 音楽 - 伊福部昭
 先日買ったCDを聴いた.小松一彦指揮,東京オラトリオ研究会&東京交響楽団による,伊福部昭・交響頌偈「釈迦」ほか.

 終始極めて遅いテンポを採りながら,譜面の細部までニュアンス豊かに作り込んだ演奏.合唱・管弦楽ともに,概ね安定した技術とアンサンブルに一貫しているが,初演ライヴならではの熱気と溌剌さの反面,不慣れゆえの粗さも目立つ.とはいえ,アクセントとカンタービレをめいっぱいに生かした小松の力強い曲作りは,伊福部の巨大な音楽によく合致して快適.録音は鮮明であるものの,長い残響のなかに音像がやや遠くぼやける印象も.

 併録の「SF交響ファンタジー」も,ちょっとほかでは聴いたことのないような,凄まじい大音響.


伊福部昭: SF交響ファンタジー第1番 & 交響頌偈「釈迦」
東京交響楽団,
小松一彦 (指揮),
東京オラトリオ研究会,大正大学音楽部混声合唱団,
TOWER RECORDS,QIAG-50112

川瀬賢太郎+都響=伊福部「交響譚詩」他

2019-10-20 | 音楽 - 伊福部昭
 昼すぎ,サントリーホールにて行なわれた,川瀬賢太郎指揮+東京都交響楽団による,『プロムナードコンサート』をSと聴いた.僕のめあてである伊福部始め,どのナンバーも,活力ある前のめりのテンポと,控えめながらも息を多く遣ったカンタービレの共存する快適な演奏.都響は,ホルンセクションがやや頼りなげであるほかは,明るい音色に安定したアンサンブルで,川瀬の求めるアクセントの効いたメリハリの曲作りによく応えていた.


プロムナードコンサートNo.383
【演奏者】吉野直子 (ハープ),川瀬賢太郎 (指揮),東京都交響楽団
【日時】2019.10.20 14:00-
【場所】サントリーホール
【曲目】
■スカルソープ: オセアニアより
■J.シュトラウス2世: エジプト行進曲
■ロドリーゴ: アランフェス協奏曲
■ワトキンス: 火の踊り (ソロアンコール)
■伊福部昭: 交響譚詩
■ラヴェル: ボレロ

井上道義+日本フィル=伊福部昭「日本組曲」他

2019-09-29 | 音楽 - 伊福部昭
 昼すぎ,相模女子大学グリーンホールにて行なわれた,井上道義指揮,日本フィルハーモニー交響楽団による,相模原定期演奏会を聴いた.僕のめあての伊福部は,各パートを十分に鳴らし,オーケストラ全体をソロイストの集まりとして振舞わせた賑やかな曲作りで,盆踊や佞武多を情景として見ているというよりは,そのなかに入って祭の雑踏に揉まれるかのようである.ただ,極端に遅いテンポ設定に然したる理由が感じられず,どうにも間延びしがちで,その結果メリハリなくずっとうるさい,という歯切れの悪さはぬぐえなかった.また,井上の訳の分からない指揮に原因があるとはいえ,それにしたってアインザッツが揃わなさすぎで,少なくともおととい・昨日と実演を重ねておいて,彼らはいったいなにをしていたのだろう,との疑問.
 「メモリー・コンクリート」は,さまざまな効果音や馴染みあるメロディーの借用,視覚上のしかけなどの工夫に富んでいるが,あいにくそれ以上の何ものでもなく,ひたすら退屈な30分.コンセプト自体が作曲の唯一の目的になって,肝心の音楽を伴っていないのであり,聴かされるこちらの率直な感想としては,「だからなに?」の一言である.

 後半のリスト二題では,アリスの溌剌のピアノに刺激されて,一転快活なアンサンブルに持ち直した様子で,なかなか楽しめた.彼女に捧げられたアンコールも,ありふれた選曲ながら,耳慣れた音楽が優しく響いてくるひとときだった.と,思いきや,最後の最後でまた,終結和音を台無しにするホルンのミスが出て,いくぶん後味の悪い幕切れに.


日本フィルハーモニー交響楽団 第14回 相模原定期演奏会
【演奏者】アリス=紗良・オット (ピアノ),井上道義 (指揮),日本フィルハーモニー交響楽団
【日時】2019.9.29 14:30-
【場所】相模女子大学グリーンホール 大ホール
【曲目】
■伊福部昭: 「日本組曲」より
■井上道義: メモリー・コンクリート
■リスト: 死の舞踏
■サティ: グノシエンヌ第3番 (ソロアンコール)
■リスト: ハンガリー狂詩曲 第2番
■H.アーレン: 虹の彼方に (アンコール)

岩城宏之+都響「伊福部昭の管絃楽」

2019-08-03 | 音楽 - 伊福部昭
 先日買ったCDを聴き終えた.岩城宏之指揮+東京都交響楽団による,『伊福部昭の管絃楽』.

 どのナンバーも正確かつ強弱の起伏の大きな演奏.岩城率いる都響は,一部でリズムがふらついたりフレーズの扱いがぞんざいであったりと,まるでリハーサルなしで臨んだような行き当たりばったりの観がないではないものの(当時の楽団が伊福部曲に不慣れだったとも思わないのだが...),持ち前の技術の高さで何とか譜面もしくは音楽に食らいついているかのようだ.また,「日本狂詩曲」の後半や「ラウダ」では,打楽器群がほどよいアクセントを付けて快活なアンサンブルを聴かせるので,全体の印象はさほど悪くない.録音は鮮明.

 併録のインタビューと改訂前の「協奏風狂詩曲」は資料としては貴重であるが,たまたま空いたディスクの余白を埋め合わせたにすぎず,都響のライヴアルバムにはまったくの蛇足である.なお,前者で若き日の伊福部は,いつになく楽式上の作曲テクニックへの言及に終始し,コンテンポラリー至上主義の楽壇にあって,いくぶん神経を尖らせていたことが伺われる.


伊福部昭の管絃楽 (2CD)
安倍圭子 (マリンバ),
岩城宏之 (指揮),東京都交響楽団,
フォンテック,FOCD9638/9

伊福部昭「古稀記念交響コンサート」

2019-05-07 | 音楽 - 伊福部昭
 先日買ったCDを聴き終えた.芥川也寸志指揮+新交響楽団ほかによる,伊福部昭『古稀記念交響コンサート』.

 どのナンバーも,新響の粗っぽいながらも熱気あるアンサンブルで進行する演奏.とくに,リハーサルに立ち会った作曲者によって,フレージングやアクセントなど,譜面上に指示しきれなかった細かなニュアンスが加えられていることは随所で耳を引く.録音は残響が少なくややドライな印象であるが鮮明.

 最後のディスクに収められた門下座談は,機嫌よく音楽論を打つ伊福部に対して弟子らが遠慮なく応酬したり,「タプカーラ」への当初の楽壇の冷ややかな反応のありようが生々しく語られたりと,案外聴くべき点の多いもの.また,後半はもはや収録そっちのけでオーケストレーションの私的レッスンへと移行していくという,「お約束」とも言うべき内容に思わず苦笑する.


伊福部昭: 古稀記念交響コンサート 1984 (3CD)
芥川也寸志 (指揮) & 新交響楽団 ほか,
フォンテック,NOOI-5011~13