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ケニチのブログ

ケニチが日々のことを綴っています

山際康之「兵隊になった沢村栄治」

2016-07-26 | 政治・社会
 先日買った本を読み終えた.山際康之・著『兵隊になった沢村栄治』.

 第二次大戦中の職業野球が,いかに政治・軍事利用されていったかが,沢村栄治の人生を軸に描かれる.副題にある「偽装工作」とは名ばかりで,野球連盟は生き残りにこだわって当局におもねり続けたにすぎない.惜しむらくは,ところどころで著者の日本語が拙く,読み手に余計なフラストレーションをあたえる.


山際康之: 兵隊になった沢村栄治 —戦時下職業野球連盟の偽装工作—
筑摩書房,2016,
ISBN978-4-480-06900-9

奥崎謙三『ゆきゆきて「神軍」の思想』

2016-05-15 | 政治・社会
 先日買った本を読み終えた.奥崎謙三・著『ゆきゆきて「神軍」の思想』.

 「神軍平等兵」を自称する著者が,独房内で書き溜めた,理想世界とその実現についての考察.250ページに及ぶ大作ながら,その内容は意味不明を極め,また何らの根拠や具体性にも欠いており,僕には一行たりとも理解できなかった.ただし,支離滅裂な感じはなく,全体としては無矛盾である.彼の壮絶な人生から想像されるような過激さも,意外なことにまったくない.


奥崎謙三: 『ゆきゆきて「神軍」の思想』
新泉社,1987,
ISBN4-7877-8717-9

牧村朝子『同性愛は「病気」なの?』

2016-05-12 | 政治・社会
 先日買った本を読み終えた.牧村朝子・著『同性愛は「病気」なの?』.

 これまでの社会が同性愛・同性愛者とどのように付き合ってきたか,順を追って紹介する一冊.同性愛なる概念の誕生から,「病気」として「治療」されたり,「犯罪」として迫害され続けた歴史を振り返りながら,もちろん現代も決して楽観的な状況ではないことが述べられる.フランスで同性婚した著者のことは軽いエピソードが語られるのみで,個人的な経験からの本格的なアプローチはない.終始一貫される,読み手へ話しかけるような文体は,好みが分かれるところかもしれない(僕は少し苦手).


牧村朝子: 『同性愛は「病気」なの? 僕たちを振り分けた世界の「同性愛診断法」クロニクル』
星海社,2016,
ISBN978-4-06-138580-1

西村匡史『悲しみを抱きしめて』

2016-04-04 | 政治・社会
 先日買った本を読み終えた.西村匡史・著『悲しみを抱きしめて』.

 日航123便墜落の遺族と関係者たちの近況を追いかけた記録.事故原因などへの考察はほとんどなく,彼らの時間がいかにあのときに止まっているか,いっぽう長い歳月のあいだにどんな思いで悲しみを克服したのか,人間性ドラマがもっぱら詳述される.個々の内容はリアルで胸に迫るものがあるが,書物全体としてのテーマが今ひとつはっきりせず,また終始美化的であるのは鼻に付く.


西村匡史: 『悲しみを抱きしめて 御巣鷹・日航機墜落事故の30年』
講談社,2015,
ISBN978-4-06-272905-5

西川純『高校教師のためのアクティブ・ラーニング』

2016-03-10 | 政治・社会
 先日買った本を読み終えた.西川純・編『高校教師のためのアクティブ・ラーニング』.

 近年にわかに教育現場を賑わせている(混乱させているとも言う)アクティブ・ラーニングの,根本的な定義と高等学校における実践例を紹介したエッセー集.ここでは,生徒集団によるアクティブ・ラーニングの輝かしい効果と,意外なまでの手軽さが強調されており,次世代の教育法としての可能性を感じるに足る内容である.しかし,僕がこのごろ興味があるのは,少人数グループによる言語活動の充実であり,ちょっと手にする本を間違えた思いである.また,従来の授業形式に固執する教師たちから発せられるであろう不安に対しては,今のところ大丈夫だからこれからも大丈夫,というような逃げ方をしており残念.そこは是非,この半世紀で次々に教育改革に成功しているヨーロッパ諸国の情況とアクティブ・ラーニングの関係について,少しでも言及があるとよかった.実例の紹介にこだわるあまり,理論的に弱くなってしまった観が強い一冊であった.また,アクティブ・ラーニング導入のそもそもの動機を,もっぱら文科省の示達に求めるあたりも,独立した教育者らしい態度とは言えない.


西川純・編: 『高校教師のためのアクティブ・ラーニング』
東洋館出版社,2015,
ISBN978-4-491-03158-3