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ケニチのブログ

ケニチが日々のことを綴っています

青山透子「日航123便 墜落の新事実」

2017-09-15 | 政治・社会
 先日買った本を読み終えた.青山透子・著『日航123便 墜落の新事実』.

 日航123便墜落事故の公式事故調査に対して,当時の関係資料や証言への取材をもとに,改めて分析・批判を試みる一冊.これに関してはすでに,米田氏が2011年の著書(「米田憲司・御巣鷹の謎を追う/2013-11-29」)のなかで,事故当夜,墜落現場に出入りしていたと思われる自衛隊の動向を追い,救難の遅れの理由に関する明快な推論を行なったが,事故原因そのものについては合理的な疑問を述べるにとどまっていた.いっぽうこちらは,さらに考察の範囲を広げ,墜落前の事故機を追尾していたファントム機の目撃談,通常の墜落事故には見られない遺体の燃えようや,現場を覆うガソリン臭の存在などから,墜落前後の経過に係る大胆な仮説を立てている.ただ,やはりその筋書きを裏付けるためには,公式調査があまりに多くのことを隠蔽・改ざんしていると思われ,著者自身が前書きで一蹴した陰謀論に,結局,その内容自体でも,また客観的根拠の弱さとしても,かなり近くなってしまっているのは残念.それでも,事故機の飛行高度について,公式調査の発表と,実際に数多くの目撃情報が語るそれとが著しく食い違っていることや,当日NHKに「救命活動を阻む銃撃」というショッキングな誤報が流れたことは,今回初めて知ったし,キーアイテムとして登場する子どもたちの文集のことも然りで,この事故の単なる資料集として突き放して読めば,それなりの情報量はある.なお,事故機クルーたちの対応に関しては,元客室乗務員の著者ならではの詳細な記述があるが,ボイスレコーダーに残るコクピットの会話に基づくものを除いては,いずれも身内びいきから来る創作にすぎず,全くの蛇足である.また,書物全体の特徴として,重要な場面にさしかかると,文章に過剰に力が入って突っ走る感じがあり,そのたびに読み手を置き去りにしてしまうのはマイナスポイント.


青山透子: 『日航123便 墜落の新事実 —目撃証言から真相に迫る—』
河出書房新社,2017,
ISBN978-4-309-02594-0

青木謙知「飛行機事故はなぜなくならないのか」

2017-06-16 | 政治・社会
 先日買った本を読み終えた.青木謙知・著『飛行機事故はなぜなくならないのか』.

 航空史上の主立った事故・トラブルを具体的に挙げながら,それらの反省から空の安全がいかに高められてきたかが語られる.事故原因には,関連機器の不備からヒューマンエラーまで様々なものが含まれているが,いずれにしても事故がゼロになることはないことが判る.残念なのは,せっかくこれだけの情報量を持っていながら,なぜだか話題があちこちに飛ぶし,凄惨なはずの事故詳細もずいぶん冗漫な文章で,読み手は今ひとつ緊張感を保てないことだ.


青木謙知 著: 『飛行機事故はなぜなくならないのか —55の事例でわかった本当の原因』
講談社,2015,
ISBN978-4-06-257909-4

K.マルクス『共産党宣言』

2017-05-04 | 政治・社会
 先日買った本を読み終えた.K.マルクス著=堺利彦訳『共産党宣言』.

 来たるべき共産革命の意義・目的と,階級間の対立構造を簡潔に解説したもの.翻訳年代が古いため,漢字・仮名遣いや言い回しが少々難しいが,流し読みするのに大きな障害になるほどではない.


カール・ハインリッヒ・マルクス著=堺利彦訳: 『共産党宣言』
ゴマブックス,2016,
ISBN9-784777-134670

平田オリザ「下り坂をそろそろと下る」

2016-08-13 | 政治・社会
 先日買った本を読み終えた.平田オリザ・著『下り坂をそろそろと下る』.

 演劇人の立場から,衰退途上にある日本社会の情況と今後の見通しについて書き綴った一冊.文化の地域格差や日本人特有の排他性に言及するあたり,いかにもエンターテイナーらしいが,論文全体としては世間一般的な話題が多く,ごく平凡な内容.


平田オリザ: 下り坂をそろそろと下る
講談社,2016,
ISBN978-406-288363-4

A.ガンダーセン『福島第一原発 —真相と展望』

2016-08-03 | 政治・社会
 先日買った本を読み終えた.A.ガンダーセン著『福島第一原発 —真相と展望』.

 原子力発電に携わるエンジニアの立場から,福島の事故について丁寧に解説する.そこで何が起こったのか,またその後どうなっているのか,分かりやすく記述してはいるが,やや冗漫で,今となってはとくに目新しい点は見当たらない.ただし,終章では一転,原子力依存から脱するには,この国の電力業界のあり方を根本的に転換せねばならないことが,畳みかけるような明快な文章で語られる.


アーニー・ガンダーセン著=岡崎玲子・訳: 『福島第一原発 —真相と展望』
集英社,2012,
ISBN978-4-08-720628-9