先日買った本を読み終えた.小出裕章・著『原発ゼロ』.
福島の原発事故の実態と,原子力開発をめぐる国・企業・科学者たちの責任,一刻も早く行なわれるべきエネルギー政策の転換について,小出氏のいくつかの講演内容をベースに,改めて丁寧に解説した一冊.福島各地で見つかったという「黒い物質」のことは今回初めて知ったし,除染作業が新たなビジネスチャンスとなってゼネコンの参入を招いている現実には,「復興」さえ金儲けの一環なのかと,胸が悪くなる.また,原子力というものが,放射能というおよそ人の手に負えない公害を伴うことや,一貫して軍事上の目的のもと研究され,社会的・経済的弱者へ被ばくを押し付けながら発展してきたことにも,じゅうぶんな言及がある.私たちの国が,あれだけの惨事から一向に何も学ぼうとしないことに深く失望しつつも,専門家の一人として自身のあり方や道義を確認しようとする,著者の謙虚さが節々に顕れており,読み手としても襟を正したくなる思いだ.
小出裕章: 原発ゼロ
幻冬舎ルネッサンス,2014,
ISBN978-4-7790-6093-9
福島の原発事故の実態と,原子力開発をめぐる国・企業・科学者たちの責任,一刻も早く行なわれるべきエネルギー政策の転換について,小出氏のいくつかの講演内容をベースに,改めて丁寧に解説した一冊.福島各地で見つかったという「黒い物質」のことは今回初めて知ったし,除染作業が新たなビジネスチャンスとなってゼネコンの参入を招いている現実には,「復興」さえ金儲けの一環なのかと,胸が悪くなる.また,原子力というものが,放射能というおよそ人の手に負えない公害を伴うことや,一貫して軍事上の目的のもと研究され,社会的・経済的弱者へ被ばくを押し付けながら発展してきたことにも,じゅうぶんな言及がある.私たちの国が,あれだけの惨事から一向に何も学ぼうとしないことに深く失望しつつも,専門家の一人として自身のあり方や道義を確認しようとする,著者の謙虚さが節々に顕れており,読み手としても襟を正したくなる思いだ.
小出裕章: 原発ゼロ
幻冬舎ルネッサンス,2014,
ISBN978-4-7790-6093-9