無心になった人間の さまざま【K's EYE】

2010-02-28 23:41:49 | K's EYE
 バンクーバーオリンピックも残すところあとわずかとなりましたが、
 今日はスピードスケートの女子団体追い抜きが行われ、
 穂積雅子、小平奈緒、田畑真紀の日本チームが、
 見事銀メダルに輝きました!

 決勝では100分の2秒差で金メダルを逃してしまったのは悔しいですが、
 日本女子スピードスケート史上初の銀メダルは立派です^^

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【今日のちょっといい話】

◇無心になった人間の さまざま

 幕末に死刑執行人として名を馳せた、
 山田浅右衛門(あさえもん)という人がいる。

 山岡鉄舟(てっしゅう)が彼に聞いた。
「貴公はずいぶん、多くの人の首を刎(は)ねたが、
 斬り損ないということがなかったかね」

「吉田松陰(しょういん)や名だたる志士の首も刎ねましたが、
 あの人たちは気負っていたのか、かたくなっていたから容易に斬れました。
 だが、手こずったものが二人いました」

 それは義賊といわれたネズミ小僧次郎吉(じろきち)と、
 放火で断罪された吉原(よしわら)の花鳥(かちょう)という
 遊女であったと述懐している。

 ネズミ小僧は年貢の納め時と観念したのか
“どうぞ、お願いいたしやす”と西を向いて座った姿には
 何のテライもなかった。

 一方の花鳥も薄化粧して静かに合掌した可憐さには、
 首斬り浅右衛門もなかなか刀がおろせなかった。
 手練(しゅれん)の太刀も狙った箇所には入らず、四回も仕損じたという。

 無心ほど厄介なものはなさそうだ。

 陸軍大将の軍服を着用して西郷隆盛は、
 若い士官たちと急な坂道を談笑しながら上っていった。

 一人の車夫(しゃふ)がその時、いかにも重そうな荷車を、
 うんすうんす言いながら引っぱりあげようとしている。
 だがあまりの急坂で車夫の力が及ばず、なかなか車は動こうとしない。
 それどころか、ややもすると後方へ戻ろうとしている。

 それを見た西郷は何の躊躇(ちゅうちょ)もせず、
「どれどれ、おいどんが押してやろう」
 と士官たちにも命じて、かけ声もろとも力一杯後押したために
 車は坂の上まで上ることができた。
 車夫は感激し心からお礼を述べて立ち去った。

 車の後押しをさせられた士官たちは、
「陸軍大将の軍服を召されて、あんな車の後押しなどされては
 見た人は笑うでしょう」
 と言うと、

「そんなことはかまわん、かまわん。
 おいどんは何時でも人を相手にしてはおらん。
 何と言われようが、よかよか」。
 カラカラと西郷は笑ったという。

 人を相手にせず、無心で所信を貫く澄み切った信念があったればこそ、
 あれだけの衆望と渇仰を担い、
 国家のため社会のために尽くすことができたのであろう。


【編集後記】

 チリ大地震の被害が徐々に明らかになってきていますね。。
 少なくとも300人以上の死者が出ているようで、
 被災者は全人口の1割にあたるとか。

 遠く離れた日本でも広い範囲で1メートル程度の津波が発生し、
 一時は17年ぶりとなる大津波警報も発令されました。

 ハイチ地震の衝撃も覚めやらぬ今回の大地震、
 明日は我が身と気を引き締めずにはおれませんね…。

私の身体は誰の物ですか 未来の医学に問われるもの【K's EYE】

2010-02-27 20:30:17 | K's EYE
 6時間ほど前に、南米チリでM8.8の強い地震が発生したそうですね。
 震源地近くは電話がほとんど通じないそうですが、
 相当の被害が予想されており、
 チリのバチェレ大統領は国家の激甚災害を宣言しました。

 1960年にチリで起きた、観測史上で世界最大のM9.5の地震の際には、
 日本まで大きな津波が押し寄せ、多数の死者・行方不明者を出したそうで、
 しばらくは津波に対する警戒も必要ですね。。

《今週のワンポイント砺波》

 今週は、大門素麺についてです。

 これ「おおかどそうめん」と言い、砺波市の大門地方で作られています。

 今から150年ほど前、零細農家の冬の副業として素麺作りが始まり、
 明治になると村中に広まったとされます。
 今もなお、稲作農家の冬季間の仕事として、
 一年でもっとも寒い11月~3月の深夜から作業が始まるそうです。

 今では絶えてしまった幻の輪島素麺の流れをくむ油を使わない手延べ素麺は、
 コシが強くて歯触りがよく、
 半乾の長いまま丸めて和紙で包むことから「丸まげ素麺」とも呼ばれます。
 乾燥技術が進んでいなかった昔の方法がそのまま今も残っているため、
 このような形になっているそうです。
 今では、贈答用としても、大門素麺は全国でも有名になりました。

 食べる時は袋から出して茹でる前に、丸まげ状の麺を2つに割ることです。
 これを忘れるととても長い素麺となり、
 イスの上に立って食べなければならなくなるから要注意ですよ。

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【今日のちょっといい話】

◇私の身体は誰の物ですか
  ~未来の医学に問われるもの~

 釈尊に大号尊者(だいごうそんじゃ)という弟子がある。
 彼が商人であったとき他国からの帰途、道に迷って日が暮れた。

 宿もないので仕方なく、墓場の近くで寝ていると無気味な音に目が覚める。
 一匹の赤鬼が、人間の死体を持ってやって来るではないか。

 急いで木に登って震えながら眺めていると、間もなく青鬼がやって来た。
「その死体をよこせ」
 と青鬼が言う。
「これはオレが先に見つけたもの、渡さぬ」
 という赤鬼と大ゲンカがはじまった。

 その時である。
 赤鬼は木の上の大号を指さして、
「あそこに、さっきから見ている人間がいる。
 あれに聞けば分かろう。
 証人になって貰おうじゃないか」
 と言い出した。

 大号は驚いた。
 いずれにしても食い殺されるのは避けられぬ。
 ならば真実を言おうと決意する。

「それは赤鬼のものである」
 と証言した。
 青鬼は怒った。
 大号をひきずり下ろし、片足を抜いて食べてしまった。

 気の毒に思った赤鬼は、誰かの死体の片足をとってきて大号に接いでやった。
 激昂した青鬼は、さらに両手を抜いて食べる。
 赤鬼はまた、他の死体の両手を取ってきて大号につけてやった。
 青鬼は大号の全身を次から次に食べた。
 赤鬼はその後から、大号の身体を元どおりに修復してやる。

 青鬼が帰った後、
「ご苦労であった。
 おまえが真実を証言してくれて気持ちが良かった」
 と赤鬼は礼を言って立ち去った。

 一人残された大号は、歩いてみたが元の身体と何ら変わらない。
 しかし今の自分の手足は、己の物でないことだけは間違いない。
 どこの誰の手やら足やら、と考えた。

 街へ帰った彼は、
「この身体は誰のものですか」
 と大声で叫びながら歩いたので、
 大号尊者とあだ名されるようになったという。
 未来の医学は、肉体丸ごと替えるかもしれぬ。

 自分のものでない物は、大号尊者の手足だけではない。


【編集後記】

 日本では大雪もそろそろ終息してきた感じを受けますが、
 アメリカ東部ではいまだに大雪が続いているようで、
 今日はニューヨークでも50cm以上の積雪があったようです。
 22万世帯で停電が発生したり、航空にも大きな影響が出ているようですね。
 異常気象は今年だけで終わって欲しいと念じるばかりです。

ひときわ美しい女の、道【K's EYE】

2010-02-26 23:43:57 | K's EYE
 終盤を迎えたバンクーバーオリンピックですが、
 今日は注目の女子フィギュアのフリーの演技が行われました。

 ショートプログラムで2位につけていた浅田真央は、
 女子としては五輪史上初の2度のトリプルアクセルを決めましたが、

 ライバル金妍児(キム・ヨナ)が完璧な滑りを見せ、
 韓国勢初の金メダルを獲得しました。

 日本勢は浅田が銀メダル、安藤美姫が5位、鈴木明子も8位入賞を果たし、
 大健闘しました。

 これで男女とも全員が入賞を果たしたことになり、
 今後の日本フィギュア界が楽しみになってきましたね^^

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【今日のちょっといい話】

◇ひときわ美しい女の、道

 北面(ほくめん)の武士・遠藤盛遠(もりとお)は、
 ひときわ美しい一人の女性に、ぞっこん惚れこんでしまった。
 血気盛んな十八歳。
 早春の摂州(せっしゅう)渡辺の橋供養でのことである。

 八方手をつくして女の身元を探らせると、
 なんと同族の左衛門尉(さえもんのじょう)、
 源渡(みなもとのわたる)の妻、袈裟(けさ)ではないか。

 想う女が人妻とは。
 彼のもだえは悶えを生んで、つのるは彼女への恋情ばかり。

 ついに耐え切れず彼は、袈裟の母堂(ぼどう)に直訴した。
「一生の頼みです。
 袈裟殿を私に貰い受けたい。
 無理は万々承知の上。
 これほどお頼み申しても、おききいれ願えねば是非もない。
 邪魔だてするものはみな殺しだ」

 無法な横恋慕にただただ思案にくれた母堂は、
 袈裟を呼んでありのままを打ちあける。
 驚き嘆く袈裟ではあったが、やがて内心決するがごとく、こう言った。
「お母さま、ご心配いりません。
 渡さまには申しわけございませんが、私、盛遠さまの所へ参ります」

 間もなく盛遠を訪ねた袈裟が、ときどき愁眉(しゅうび)をみせる。
「袈裟殿、どうかなされたか」
「はい、貴方さまのお情けを受けるのは嬉しいのですが、夫のことを思うと。
 あの人さえいなければ……」
「承知した。そんなことなら私が解決しよう」
「そうしてくだされれば、私も嬉しゅうございます」

 かくて袈裟と打ち合わせた盛遠は、渡の寝所に忍び込み、寝首をかいた。
 これで袈裟は天下晴れて我がものと、
 ほくそえんで月明かりで首級をあらためると、
 なんと死ぬほど惚れた袈裟の首ではないか。

 呆然自失。
 五体投地の慚愧(ざんき)とともに彼は出家する。
 鎌倉時代の傑僧(けっそう)・文覚(もんがく)、その人である。
 袈裟の手箱から、真情を告白した愛する夫への遺書が発見された。

 ああ一世の美女・袈裟は、
 一命もって操を全うし二人の男をあやまらせなかったのである。


【編集後記】

 国会で最優先で扱われる予算案の採決の前提にまでなっている、
 衆議院予算委員会の中央公聴会まで異例の欠席をした自民党が、
 あっさりと審議復帰を決定したようですね。。

 協議の結果、予算案も3月2日に衆議院を通過する見通しとなり、
 ようやく政策面の議論が望めそうですね。

他人の批評に一喜一憂していては何事も出来ない【K's EYE】

2010-02-25 23:44:43 | K's EYE
 昨日からアメリカ議会下院で行われている、
 トヨタ自動車の大規模リコールを巡る公聴会に、
 今日は豊田章男社長が直接出席し、謝罪しました。

 事業拡大があまりにも急速に進んだばかりに、
 経営理念をしっかりと守ることができる、
 人材の育成が追いつかなくなってしまったとのこと。

 失敗の原因を徹底的に「改善」することで信用を勝ち得てきたトヨタ自動車、
 安全第一、顧客の目線に立った本来の姿に戻ることを期待したいと思います。

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【今日のちょっといい話】

◇他人の批評に一喜一憂していては何事も出来ない

 勘太郎と勘助は、いずれ劣らぬ親バカ子バカであった。
 農業を営んでいたが、何をやっても失敗ばかりで家財道具まで食いつめた。
 残ったのは一頭の小馬だけ。
 親子相談の末、その小馬も町へ売りに行くことになった。

 しばらく行くと、すれ違った男がささやいた。
「大きな男が二人で馬を引っ張っていくより、
 だれか一人乗ってゆけばよいのに……」

 それもそうだと思った父親の勘太郎は、
「おい勘助、おまえ乗れ。
 オレが引いてやろう」
 と息子を馬に乗せる。

 また行くと旅人がしゃべりながら通った。
「あの息子は年老いた親父に馬を引かせて、己が気楽に乗っている。
 何と親不孝な奴だろう」

 勘太郎は、なるほどと思って、
「おい勘助、オレが乗る。おまえ引っぱれ」
 と自分が乗った。

 またすれ違った人がつぶやいていく。
「あの親父、若いもんに引かして我が身が平気で乗っている。
 無慈悲な親じゃのう」

 勘太郎、またまたなるほどそうだと感心して、
「勘助、おまえも一緒に乗らんか」
 と二人が一緒に小馬に乗った。

 また旅人がささやいた。
「まあ、ひどい親子もあるものだ。
 あんな小さな馬に大の男が二人も乗って、なんと無茶な奴らだろう」

 また親子ともにうなずいて、
 小馬の足をくくって二人でかついで町まで行った。

 あこそこと売り歩いたが、だれも買う者はいなかった。
 そのうちに、長い橋を渡っているところへやってきた自動車に驚いて、
 馬が川の中に落ちて死んでしまったという。

 他人の意見に、静かに耳を傾ける度量も必要だが、
 他人の批評に一喜一憂していては、何事も成し遂げることはできない。


【編集後記】

 今日は東北でも一部最高気温が20度を越えるなど、
 全国152ヵ所で2月の観測史上最高気温を記録したそうで、
 本当に暖かかったですね。

 各地で「春一番」が吹いたり、
 富山県氷見市では6月上旬並みの22.3度まで気温が上がったとか。
 ここまで急激に変化すると、逆に体調管理が大変ですね^^;

(注)今日の写真は少し前に撮影したものです。
   富山もほとんど雪がとけてしまいました。

他を生かす者は真実に死ねる【K's EYE】

2010-02-24 23:35:19 | K's EYE
 終盤を迎えたバンクーバーオリンピックですが、
 今日は注目の女子フィギュアショートプログラムが行われました。

 浅田真央は女子としては高難度のトリプルアクセルを見事に決め、
 苦手としていたショートプログラムで自己最高点をマークしましたが、
 ライバルの金妍児(キム・ヨナ)はさらに上を行っていました。。
 フリーでの逆転に期待したいですね!

 4位につけた安藤美姫にもメダル獲得のチャンスはありますので、
 こちらにも注目したいと思います^^

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【今日のちょっといい話】

◇他を生かす者は真実に死ねる

 蓮如上人(れんにょしょうにん)の北陸布教の基地、
 吉崎御坊(福井県)が炎上したのは文明六年三月二十八日のことだった。

 六十歳に達せられ、とかく日常の挙動さえも、もの憂き頃の上人は、
「火事だ!」
 と聞かれるや、取るものも取りあえず外へ飛び出される。
「しまった!」
 大きく叫ばれたのはその直後であった。

 どんな人にも不覚はあるもの。
 拝読中の親鸞聖人(しんらんしょうにん)の真筆(しんぴつ)
『教行信証(きょうぎょうしんしょう)』「証の巻」を、
 居間に置き忘れられたのである。

 あまりの失態に驚き、取りに戻ろうとされる決死の上人を、
 弟子の本光房(ほんこうぼう)は見のがさなかった。
「お師匠さま。私にお任せください。
 必ずお守り申します」
 叫ぶや否や脱兎のごとく、黒煙渦巻く猛火に踊りこんだ。

 地獄の炎の中をくぐり抜け、
 やっとの思いで上人の居間にたどり着いた本光房は、
 無事であった聖教(しょうぎょう)をしっかりと握りしめ安堵した。
 が、時すでに火は八方に回り、脱出する術は絶えていた。

「大事なお聖教をお守りし、上人の御心を安んじ奉るには、今はこれまで」
 悲壮な覚悟をした本光房は、やおら懐剣を取り出し腹十文字にかき切り、
 臓腑の中深く聖教を押し込み、五体を残忍な火炎にまかせた。

 火が静まり、上人の居間あたりに焼死体が静かに横たわっていた。
 黒焦げの死骸からは、
 不思議にも護法(ごほう)の血に染まった聖教が、無傷のままで発見された。

 無残な焼け跡に立たれた蓮如上人は、愛しい本光房の死骸を撫でながら、
「本光房よ。そなたの勇猛果敢な殉教(じゅんきょう)に、
 蓮如、心からお礼を言うぞ。
 そなたに守られた親鸞聖人の著作は、必ずや世界の光となって、
 人々を真実の幸福に導くであろう」。

 その涙はとめどもなくキラキラと、夕日に輝いていた。

 真実に死ねる者は、永遠に生き抜く無上人(むじょうにん)である。


【編集後記】

 新型インフルエンザもかなり下火になってきたようですね。
 先週は学級閉鎖も半減、入院患者も大幅に減少しました。

 WHOもピーク越え宣言を検討しているようですが、
 第2波が来ることも予想されていますので、
 備えはきっちりとしておきたいところですね。

シャアシャアとしゃべくりまくる 丸ごと口だけの妖怪【K's EYE】

2010-02-23 22:59:35 | K's EYE
 国会は野党自民党が審議拒否を続けていますが、
 今日から衆議院本会議で、民主党の看板政策、
 子ども手当て法案が審議入りしました。

 主要な議論にまで審議拒否を続ける自民党、
 果たしてどの段階で審議に復帰するのか、注目したいと思います。

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【今日のちょっといい話】

◇シャアシャアとしゃべくりまくる 丸ごと口だけの妖怪

 昔、ある所の二人の僧。
 同じ年に生まれ、同じ時に同じ師につかえ、
 いつも同じ所で同じ教えを学び、
 同じように偉くなって、説法して回り、有名になった。

 ある晩一人が、しみじみと話しかける。
「おまえとオレは今までは何事も一緒だったが、死ぬ時は別々かもしれぬ。
 早く死んだほうが生きている者の夢枕に立って、
 生まれ変わって、何になったかを知らせることにしようじゃないか」

「それは面白いアイデアだ。
 かりに一人が天人に生まれたら、
 次に死ぬ者も同じ天人に生まれるわけだからなぁ」
 二人は固く誓い合った。

 間もなく一人の僧が急死した。
 悲しみながらも残った僧は、そろそろあいつが夢に現れる頃だと待っていた。
 しかし一年たっても音沙汰がない。

“あいつ、約束を忘れやがったな”と思いながら休んだ夜、
 大きい図体の奇妙な姿が夢に現れ、こう言った。

「約束どおり知らせに来た。
 エンマの調べが意外に長引いて、ようやく今判決が出たのだ。
 ご覧のとおりオレは、口だけの野槌(のづち)になってしまった。
 情けないありさまだ。
 おまえも必ず野槌になるぞ。
 できもせんことを口先だけで、シャアシャアとしゃべくりまくった結果だと
 判決にはあった」

 さめざめと野槌は悶え泣いたが、目がないので涙は一滴もでなかったらしい。
 野槌というのは、古代中国の伝説によると大きな軟体で、
 目も鼻も手足もなく全体が丸ごと口の奇怪な動物だという。
 グロテスクも、ここに極まるというべき代物である。

 テレビの放談などで、
 誉れ高いといわれる人達の速射砲のような饒舌(じょうぜつ)を聞くと、
 まことに華やかで立派だが、
 この人たちも野槌になるのかと思うと、そぞろ哀れである。

 自戒すべきこと。


【編集後記】

 バンクーバーオリンピックも今日で11日目となりましたが、
 メダルの期待がかかっていたスキージャンプの団体は、
 ベテラン葛西が140mの大ジャンプを決めたものの、
 結局第5位に終わりました。

 カーリング女子もショットが冴えずスイスに完敗、
 準決勝進出もかなり難しい状況となりました。

 あとは女子フィギュアに最後の望みを託したいところですね。

下着の袖で火をつかみ焦げ跡を見せぬ【K's EYE】

2010-02-22 22:49:36 | K's EYE
 今日から国会では、衆院予算委員会で、
 2010年度予算案に関する一般質疑が始まりました。
 これに対し野党の自民党は予算審議を拒否、委員会を欠席しました。

 自民党初めとする野党は「政治とカネ」をめぐる、
 小沢氏などの証人喚問を求めており、
 今後の与野党の駆け引きに注目ですね。

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【今日のちょっといい話】

◇下着の袖で火をつかみ焦げ跡を見せぬ

 ある年の正月、江戸城でのことである。
 将軍・吉宗(よしむね)が諸侯の新年拝賀の礼を受けるにさきだち、
 式場の検分をしようと小姓を従えて書院へいってみた。

 ちょうど、青銅の大火鉢に火を盛ろうとしていた表坊主が、
 にわかに現れた将軍の姿に狼狽し、
 思わず十能(じゅうのう・炭火を運ぶ用具)から
 大きな火の塊を畳の上に落としてしまった。

「あっ」と叫んだが、どうしようもない。
 早くも火は畳に燃え尽き、煙を噴きはじめた。
 その時である。

 将軍の後ろにいた十二、三歳の小姓の一人が、つと走りでて、
 畳の火を自分の振り袖でつかみとり、縁側から庭へ投げ捨て、
 袖へ移った火は手水鉢(ちょうずばち)の水を注いで消しとめた。
 小姓の機転に一同、ホッと息をつく。

 将軍はつくづく小姓を眺め、
「龍助、立って、手をあげよ」。
「はい」
「向こうを向け」
「はい」

「不思議じゃのう。
 おまえ、袖についた火を水で消したであろう」
「はい、さようでございます」
「それなのにおまえの袖に焦げ跡もなく、水に濡れたところもないではないか」
「いいえ、ございます。ごらんください」
 龍助は、黒々と焦げ跡のある水に濡れた下着の袖を抜きだしてみせた。

 上着を損じては、今日のご用を欠かさねばならぬ。
 とっさにそれを分別して、下着の袖で火をつかんだ機知(きち)に、
 将軍はすっかり感心する。

 この龍助少年こそ、小身の小姓から身を起こして大名となり、
 老中首席を占めて、権威飛ぶ鳥を落とすといわれた
 田沼意次(おきつぐ)である。

 一切のことに細心の配慮を注ぎ、機転をきかさねば大成できないのは、
 決して昔の武士だけのことではない。


【編集後記】

 今日のバンクーバーですが、
 スピードスケート女子1500mでは、小平奈緒が1000mに続き、
 5位入賞を果たしました!
 注目の15歳・高木美帆は23位に終わりました。

 カーリング女子はロシアを劇的な逆転勝利で破りましたが、
 その後行われたドイツ戦に敗れ、通算成績が3勝3敗となりました。
 まだ準決勝進出の可能性はありますので、
 最後まで頑張ってもらいたいですね。

身を捨ててこそ浮かぶ瀬はあれ【K's EYE】

2010-02-21 21:14:45 | K's EYE
 調整が続いている沖縄普天間米軍基地の移設問題ですが、
 日本政府は辺野古に代わる複数の移設案を提示する方針のようですね。

 与党内で出た、名護市キャンプシュワブ陸上部への移設案や、
 社民党の主張するグアム移設案も示される可能性があるそうで。

 アメリカ側はあくまでも辺野古への移設を主張しているようですが、
 今後の対応が注目されますね。

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【今日のちょっといい話】

◇身を捨ててこそ浮かぶ瀬はあれ

 武士とはいえ一向に、剣の素養も仕合(しあ)い度胸もない男がいた。
 ある日往来で、事もあろうに百人斬りを試さんとしている荒武者に、
 果し合いを申しこまれたのだ。
 剣で立つ武士の身、売られた仕合い逃げるわけにはゆかぬ。

 困り果てたすえ主人の用に事よせて、しばしの余裕を請い、
 近くの剣道の達人を訪ねた。
 一切の事情を打ち明け、武士としての仕合いの心得と、
 最上の斬られ方、死に方の伝授を願いでた。

 達人も覚悟のほどに感服し、
 仕合い前の作法から着物のたたみ方までねんごろに指導し、
 最後に、相打ちの法というのを教えた。
 身を斬らせて骨を断つ。
 己の命も捨てるが相手の生命も必ず断つという、相打ちの法である。

「まず敵の、五、六歩前で大上段に身構える。
 後(のち)、静かに両目を閉じ心眼を開いて一心に相手の斬り込むのを待つ。
 敵の剣気を感ずると同時に、己の太刀を思い切り打ちおろす。
 されば我が身も斬られようが相手の身体も、まっ二つになるであろう」

 武士は達人に深謝して約束の場所へ行くと、
 件(くだん)の武士は、すでに用意万端まち構えていた。
 すでに覚悟を決していた武士は、
 今し方教導されたとおりに作法正しく着物をたたみ、
 堂々と進み出て大上段に身構え、懸命に相手の動きに専心し機を待った。

 ところがなかなか打って来る気配はなく、一向に剣気が湧かぬ。
 やがて、おいおい集まってきた大衆のどよめきとともに、
「参った」
 という声が聞こえたので、目を開いて驚いた。

「実に恐れ入ったお手並み、到底、我が輩などの及ぶところではござらぬ。
 その気合、寸分の隙もない構え、何とぞその極意を教えてくだされ」
 脂汗にまみれた荒武者が、眼前に平身低頭していたという。

 背水の陣ともいう。
 捨て身ほどおそろしいものはない。
 一身を捨ててかかれば何事も成就せぬことはないのである。


【編集後記】

 今日行われたスキージャンプラージヒルの決勝では、
 37歳のベテラン・葛西紀明が8位入賞を果たしました。
 団体ではメダル目指して頑張ってほしいですね!

これじゃ、片道分しかないじゃないの【K's EYE】

2010-02-20 22:01:44 | K's EYE
 今日のバンクーバーオリンピックですが、
 カーリング女子は強豪イギリスに快勝、通算2勝2敗とし、
 準決勝進出に望みを繋ぎました。

 今日は日本の得意種目、スキージャンプ個人ラージヒルの予選も行われ、
 葛西紀明が1位、伊東大貴が2位で予選通過を果たしました!
 予選免除の10選手を含めた、明日の決勝も楽しみですね^^


《今週のワンポイント砺波》

 今週のワンポイント砺波は、散居村についてです。

 砺波と言ったら、何といっても、散居村でしょう。
 散居村とは、碁盤の上にまき散らされた石のように、
 屋敷林に囲まれた家々が平野一面に点在する集落を言います。

 庄川に広がる扇状地の未開拓地を開発するとき、容易に水を引くことが出来たので、
 開拓者がだんだんちりぢりに住居を構えることとなったのです。

 また、点在する家々を守るための屋敷林はカイニョと呼ばれ、
 スギなどの木々が屋敷の周りに植えられ冬の寒さや夏の暑さに耐えるよう、
 木々の配置や構成には家の人の知恵や工夫がなされています。

 山から見た散居村は絶景ですよ。一度、来て、見てみられ。

∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴

【今日のちょっといい話】

◇これじゃ、片道分しかないじゃないの

 よく喧嘩していた菓子屋の若い夫婦があった。
 この日も、どちらが悪いというのではないが、
 ふとしたことから口争いとなり叫喚怒号となり、
 ついに亭主は、女房を殺すと言う。
 女房は、殺すなら殺せと激昂する。

 たまたま通りかかった寺の和尚、また始まったなと思って、
「どうしたんだ。
 大きな声を張りあげて、通りがかりの人に恥ずかしいとは思わんか。
 やめなさい、やめなさい」
 と仲裁すると、亭主は、

「今度という今度は勘弁ならん。
 捨てておいてください。
 今日こそ嬶を叩き殺してやる」
 と目を釣り上げてわめき立てる。

「和尚さん、放っておいてください。
 さあ殺せるものなら殺してみろ」
 女房も女房で、噛みつかんばかりに逆上し切っている。
 こうなっては手のつけようがない。

 和尚も思案にあまって、
「じゃ、お互い気の済むまで喧嘩するがよい。
 これほど止めても聞き入れぬなら仕方がない。
 殺すとも殺されるとも、勝手にしたらよかろう」。

 いつの間にか店先に近所の子供たちが集まって、
 派手な夫婦喧嘩を見物している。
 なに思ったか和尚、店先に並べてあった菓子箱の一つを取り上げて、
「さぁさぁ、よいか、おまえたちにこの菓子をみんなやるから、持ってゆけ」
 と投げ与えた。

 これを見た菓子屋の夫婦が驚いた。
「もしもし和尚さん、そんな無断で店のものをやっては困ります。
 明日から私たち、商売できなくなるじゃありませんか」

「なに、私たちの商売、なんと訳の分からぬ話じゃ。
 おまえさんらは殺すとか殺されるとか言っていたはずじゃなかったのか。
 人を殺せば刑務所へゆく身じゃ、してみればおまえさんたちに用のない菓子。
 死後の追善供養のためにも、
 今のうちに子供たちを喜ばせておいた方がよかろうと思ってな、
 施しているところじゃ」

 ここにも若い夫婦がケンカして、涙ながらに妻が実家へ帰ると言い出した。
 荷物をまとめる彼女に、
「ほれ、交通費だ」
 と夫が投げ与えたカネを女房が数えて、
「これじゃ、片道分しかないじゃないの」
 と言ったという。

“犬も食わぬ”と言われるはずである。


【編集後記】

 新型インフルエンザがようやく流行のピークを過ぎたようですね。
 先週1週間の患者数は1医療機関あたり2.81人と大幅に減少し、
 7ヶ月ぶりに全都道府県で注意報レベルの10人を下回りました。

 とはいえ、まだ完全に流行が収まったわけではないので、
 引き続き感染予防に注意したいところですね。

さしちがって全身ずぶ濡れ コーモリ傘と刀【K's EYE】

2010-02-19 22:29:24 | K's EYE
 高橋大輔がやってくれましたね!
 バンクーバーオリンピック男子フィギュアのフリーが今日行われ、
 高橋大輔選手が見事、日本人として初めての銅メダルを獲得しました!

 途中靴ひもが切れるアクシデントに見舞われた織田信成も7位入賞、
 4回転を跳んだ小塚崇彦は8位入賞と、健闘しました。

 スピードスケート女子1000mでは小平奈緒が0.08秒差で5位、
 最年少の高木美帆は35位でした。

 日本人選手の活躍を聞くと元気になりますね^^

∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴

【今日のちょっといい話】

◇さしちがって全身ずぶ濡れ コーモリ傘と刀

 昔、山奥に住む老夫婦のユメは、東京見物だった。
 そろって行くと経費が重くて、とても実現は難しかった。

 そこで“珍しい土産を買ってくるから”と、婆さんを説得して、
 一人で東京に出かけた爺さんの目にとまったのは、
 見たことのないコーモリ傘だった。
 初めて輸入された頃である。

 婆さんの土産に良い物が見つかったと喜んだ爺さんは、
 早速、店に飛び込んだ。
「こりゃ一体、なにするもんじゃ」
「これは最近、西洋から入ってきたコーモリというものでね。
 これさえさしておれば、どんな雨でも身体が濡れませんよ」

「ほ! これをさしてさえおればね。雨に濡れない……」
 村でもだれも知るまい。
 驚かせてやろうとすぐに買い求め意気揚々と帰宅した。

「あんた、珍しい物あったかい」
「ああ、だれも知らぬ物を買ってきたぞ。
 びっくりするな。そらこれだ」
 待ち構えていた婆さんが、差し出す爺さんのコーモリ傘を見て、
「こりゃ一体、なにするもんじゃね」。

「これはなぁ婆さん。
 雨の降った時にさす物じゃ。
 これさえさしておれば、どんな雨でも濡れんのじゃそうな」
「へえ! そんな重宝な物かい。
 早く大雨降らんかいなぁ爺さん。
 村のもんにも見せてやりたいね」

 待望の雨が、やがて沛然(はいぜん)と降ってきた。
 豪雨の中をコーモリ傘をさしたお爺さん、
 喜び勇んで村中を一巡して帰ってきた。
 見ると、全身ずぶ濡れではないか。

 呆れたお婆さん、
「あんた東京の人にダマサレてきたのやね。
 それさえさしておれば、どんな雨でも濡れんちゅうとったでないのぉ!」。
 言われてお爺さん、すっかりしおれてしまった。

 さすはさすでも、刀のように腰にさしていたという。
 これでは濡れるはずである。

 聞き誤りが、どれだけ人間関係を損なっていることだろう。


【編集後記】

 オバマ大統領がダライ・ラマ14世と会談したそうですね。
 チベット仏教の最高指導者と会談することで、
 グーグル問題などで冷え込んでいる米中関係が、
 さらに悪化するのではないかとも懸念されています。。
 世界の安定のために頑張ってほしいものですね。