下着の袖で火をつかみ焦げ跡を見せぬ【K's EYE】

2010-02-22 22:49:36 | K's EYE
 今日から国会では、衆院予算委員会で、
 2010年度予算案に関する一般質疑が始まりました。
 これに対し野党の自民党は予算審議を拒否、委員会を欠席しました。

 自民党初めとする野党は「政治とカネ」をめぐる、
 小沢氏などの証人喚問を求めており、
 今後の与野党の駆け引きに注目ですね。

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【今日のちょっといい話】

◇下着の袖で火をつかみ焦げ跡を見せぬ

 ある年の正月、江戸城でのことである。
 将軍・吉宗(よしむね)が諸侯の新年拝賀の礼を受けるにさきだち、
 式場の検分をしようと小姓を従えて書院へいってみた。

 ちょうど、青銅の大火鉢に火を盛ろうとしていた表坊主が、
 にわかに現れた将軍の姿に狼狽し、
 思わず十能(じゅうのう・炭火を運ぶ用具)から
 大きな火の塊を畳の上に落としてしまった。

「あっ」と叫んだが、どうしようもない。
 早くも火は畳に燃え尽き、煙を噴きはじめた。
 その時である。

 将軍の後ろにいた十二、三歳の小姓の一人が、つと走りでて、
 畳の火を自分の振り袖でつかみとり、縁側から庭へ投げ捨て、
 袖へ移った火は手水鉢(ちょうずばち)の水を注いで消しとめた。
 小姓の機転に一同、ホッと息をつく。

 将軍はつくづく小姓を眺め、
「龍助、立って、手をあげよ」。
「はい」
「向こうを向け」
「はい」

「不思議じゃのう。
 おまえ、袖についた火を水で消したであろう」
「はい、さようでございます」
「それなのにおまえの袖に焦げ跡もなく、水に濡れたところもないではないか」
「いいえ、ございます。ごらんください」
 龍助は、黒々と焦げ跡のある水に濡れた下着の袖を抜きだしてみせた。

 上着を損じては、今日のご用を欠かさねばならぬ。
 とっさにそれを分別して、下着の袖で火をつかんだ機知(きち)に、
 将軍はすっかり感心する。

 この龍助少年こそ、小身の小姓から身を起こして大名となり、
 老中首席を占めて、権威飛ぶ鳥を落とすといわれた
 田沼意次(おきつぐ)である。

 一切のことに細心の配慮を注ぎ、機転をきかさねば大成できないのは、
 決して昔の武士だけのことではない。


【編集後記】

 今日のバンクーバーですが、
 スピードスケート女子1500mでは、小平奈緒が1000mに続き、
 5位入賞を果たしました!
 注目の15歳・高木美帆は23位に終わりました。

 カーリング女子はロシアを劇的な逆転勝利で破りましたが、
 その後行われたドイツ戦に敗れ、通算成績が3勝3敗となりました。
 まだ準決勝進出の可能性はありますので、
 最後まで頑張ってもらいたいですね。