君のボタンもはずれているよ…【K's EYE】

　経営統合の交渉が進められていた、
　国内食品最大手のキリンと、第２位のサントリーですが、
　結局統合比率で合意が得られず、破談になってしまいました。

　経営体制に対する考え方についても、
　オーナー経営を続けるサントリーとの折り合いがつかなかったようですね。。

　一時は本当に実現するのかとも思いましたが、
　やはり大企業同士の経営統合は難しいものですね。

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【今日のちょっといい話】

◇君のボタンもはずれているよ…

　敗戦後の、まだ車の持てない時のことである。
　活動にはバスや列車を利用するしかなかった。
　どうしたことか、その日のバスは極めて乗客が少ない。
　好きな座席を選んで、ゆったりと腰をおろした。

　なにげなしに向こう側の席を見ると五十くらいでもあろうか、
　紳士のズボンのボタンが見事に外れている。
　ファスナーが今日のように、ふんだんに使われていなかった頃である。
　どうしようか暫く考えていたが、喜んでもらえればと思い切って、
　紳士の隣に席を移し小声で伝えた。

　異性なら勿論こんな無粋なことは許されるはずもないが、
　そこは年が違っても男同士のこと、単刀直入遠慮はいらぬ。
　とはいっても中には気にさわるお方もあるだろうが、
　さすが紳士というべきか。
　ちょっと驚いたようではあったが、苦笑しながら一礼して、
　読んでいた雑誌を前に当てコソコソとボタンかけ作業を終えられた。

　ほっとして元の席に戻った私は、
　両足をふんばるようにしながら腕を組み、やれやれとあたりを見渡した。

　ところがである。
　間もなくその紳士、フラフラと私の隣に来て座ったではないか。
　なにごとかと緊張する私に、笑顔で耳元に口を寄せてささやいた。
「君のボタンもはずれているよ……」

　はっと気づいて股間に手をやってみると、なんということか、
　自分のこそ全開状態ではないか。
　顔から火がでるとは、こんなことをいうのだろう。
　照れ隠しに私も、苦笑しながら軽く会釈した。

「人のふり見て、我がふり直せ」

　よくぞ古人は言ったもの。

　分かり切っているつもりの格言でも、毛頭おろそかにしてはならないぞと、
　その時つくづく知らされたものである。


【編集後記】

　肝臓手術で患者を失血死させたとして、業務上過失致死の容疑で
　先日奈良県の「山本病院」の前理事長が逮捕されました。

　肝臓手術の経験もなく、輸血の準備さえせずに、
　しかも肝臓ガンだと偽った疑いも持たれているという報道を聞き、
　あまりにもひどいと思いましたが、

　結局人命の尊さがわからなければ、
　医学が金を儲けるための手段になってしまうのも、
　無理もないのかも知れませんね…。