無心になった人間の さまざま【K's EYE】

2010-02-28 23:41:49 | K's EYE
 バンクーバーオリンピックも残すところあとわずかとなりましたが、
 今日はスピードスケートの女子団体追い抜きが行われ、
 穂積雅子、小平奈緒、田畑真紀の日本チームが、
 見事銀メダルに輝きました!

 決勝では100分の2秒差で金メダルを逃してしまったのは悔しいですが、
 日本女子スピードスケート史上初の銀メダルは立派です^^

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【今日のちょっといい話】

◇無心になった人間の さまざま

 幕末に死刑執行人として名を馳せた、
 山田浅右衛門(あさえもん)という人がいる。

 山岡鉄舟(てっしゅう)が彼に聞いた。
「貴公はずいぶん、多くの人の首を刎(は)ねたが、
 斬り損ないということがなかったかね」

「吉田松陰(しょういん)や名だたる志士の首も刎ねましたが、
 あの人たちは気負っていたのか、かたくなっていたから容易に斬れました。
 だが、手こずったものが二人いました」

 それは義賊といわれたネズミ小僧次郎吉(じろきち)と、
 放火で断罪された吉原(よしわら)の花鳥(かちょう)という
 遊女であったと述懐している。

 ネズミ小僧は年貢の納め時と観念したのか
“どうぞ、お願いいたしやす”と西を向いて座った姿には
 何のテライもなかった。

 一方の花鳥も薄化粧して静かに合掌した可憐さには、
 首斬り浅右衛門もなかなか刀がおろせなかった。
 手練(しゅれん)の太刀も狙った箇所には入らず、四回も仕損じたという。

 無心ほど厄介なものはなさそうだ。

 陸軍大将の軍服を着用して西郷隆盛は、
 若い士官たちと急な坂道を談笑しながら上っていった。

 一人の車夫(しゃふ)がその時、いかにも重そうな荷車を、
 うんすうんす言いながら引っぱりあげようとしている。
 だがあまりの急坂で車夫の力が及ばず、なかなか車は動こうとしない。
 それどころか、ややもすると後方へ戻ろうとしている。

 それを見た西郷は何の躊躇(ちゅうちょ)もせず、
「どれどれ、おいどんが押してやろう」
 と士官たちにも命じて、かけ声もろとも力一杯後押したために
 車は坂の上まで上ることができた。
 車夫は感激し心からお礼を述べて立ち去った。

 車の後押しをさせられた士官たちは、
「陸軍大将の軍服を召されて、あんな車の後押しなどされては
 見た人は笑うでしょう」
 と言うと、

「そんなことはかまわん、かまわん。
 おいどんは何時でも人を相手にしてはおらん。
 何と言われようが、よかよか」。
 カラカラと西郷は笑ったという。

 人を相手にせず、無心で所信を貫く澄み切った信念があったればこそ、
 あれだけの衆望と渇仰を担い、
 国家のため社会のために尽くすことができたのであろう。


【編集後記】

 チリ大地震の被害が徐々に明らかになってきていますね。。
 少なくとも300人以上の死者が出ているようで、
 被災者は全人口の1割にあたるとか。

 遠く離れた日本でも広い範囲で1メートル程度の津波が発生し、
 一時は17年ぶりとなる大津波警報も発令されました。

 ハイチ地震の衝撃も覚めやらぬ今回の大地震、
 明日は我が身と気を引き締めずにはおれませんね…。