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チームUSAの課題

2007年08月21日 | 代表ゲーム

今日は、チームUSAのスクリメージ(練習マッチ)の結果を取り上げて欲しいというリクエストをいただいたので、マジメに解説したいと思います。(いつもは違うのか・・・)

スクリメージというのは、先日もご紹介した若手選抜チーム(ブログ)を練習台として、代表チームが調整として行うゲーム形式の練習のことです。
ルールは、クウォーターごとに0-0に戻して始め、4クウォーター分を戦います。
JJ・レディックら落選当確組(?)の一部は、若手選抜チームの方に入ったようです。

代表チームの先発は、キッド、コービー、ルブロン、カーメロ、アマレの5人。
おそらく現時点でコーチKが想定しているベストメンバーでしょう。
最初の2つのクウォーターは、代表チームの点数が上回りました。
しかし、国際試合を想定してゾーンディフェンスを敷く若手選抜チームに対し、徐々にアウトサイドシュートが決められなくなっていきます。

第3クウォーターは若手選抜チームが取り、最終第4クウォーターを迎えます。
残り6分の時点で代表チームが20-12とリードを広げたものの、そこから若手選抜チームの追い上げが始まります。
残り1分を切ったところで3点差にまで迫ると、残り25秒でジェイソン・カポーノが同点3ポイントをお見舞いし、ついに若手選抜チームが追いつきました。
代表チームは最後のショットもうまく放つことができず、決着はオーバータイムへと持ち込まれました。

押せ押せの若手選抜チームは、オーバータイムでも代表チームを圧倒。
追いつめられた代表チームは、最後にコービーとカーメロが続けざまにスリーを放ったものの、いずれも外して勝負あり。
結局最終クウォーターは、延長も含めて39-35で若手選抜チームが勝利し、1ゲームを通じての対戦成績は2勝2敗のドローとなりました。

これまでオリンピックでも世界選手権でも、国際試合での課題は常にアウトサイドシューティングにありました。
対戦する各国は、アメリカ代表対策としてゾーンディフェンスを有効に使い、互角に戦うための術を見い出してきました。
今回のスクリメージでは、この永遠の課題が全く改善されていない事実を浮き彫りにしました。
寄せ集めの若手選抜チームが敷くゾーンディフェンスすら破れないなら、国際ルールを熟知した各国のゾーンにどうやって対処するというのでしょう?

今さらシュート力を上げるのは無理でしょうから、少なくとも3ポイントが得意なシューターをバランス良くコートに置くメンバー起用が必要でしょう。
今回のチームの中でベストシューターは、レッド、ミラー、ビラップスの3人です。
であれば、この3人のうち誰か1人は必ずコート上にいるような起用法を考えるのも一つの手です。

もう一度、現在のスターティング5を見てみましょう。
キッド、コービー、ルブロン、カーメロ、アマレの5人です。
お分かりの通り、この中に“アウトサイドシューター”はいません。
メンツ的にはベストな5人かもしれませんが、バランス的にはベストとは言えません。

例えば、シュート力のないキッドがPGの時はレッドかミラーを必ずセットで出すとか、ウィングにシューターを出さない時はPGをビラップスにする、などといった組み合わせを重視する必要があるのではないかと思います。
いくらベストの5人を揃えたところで、ゾーンを破れなければ何の意味もありませんから。

しかしコーチKは、「コービー、ルブロン、カーメロの3人は毎試合先発で使う」と明言しています。
うーん・・・・・・コービーとルブロンはいいとしても、カーメロは先発に固定する必要はないんじゃないかなと思います。
例えばカーメロの代わりにレッドを入れて、

●Aチーム:キッド、レッド、コービー、ルブロン、アマレ
●Bチーム:ビラップス、ミラー、カーメロ、プリンス、ハワード

といった具合にします。
ルブロンはカーメロよりも体格が立派ですから、元々カーメロをPFとして使うつもりだったのなら、ルブロンにやらせても大差はありません。
とにかく、「キッド+ノンシューター」という組み合わせを作ることは避けたいところです。
「レッド、ミラー、ビラップス」のシューター3人を全て控えとしてBチームに置くことにも反対です。

今回のスクリメージでは、ゲームのスタートだけでなく、第4クウォーターの終盤とオーバータイムの終盤という一番の勝負所でも、スターターに戻したそうです。
つまり、先ほどのキッド、コービー、ルブロン、カーメロ、アマレという組み合わせを、勝負を決める大事な場面で起用し、シューター不在でロングレンジを決めらなかったことで負けたわけです。
相手のシューターであるカポーノに同点スリーを決められて延長に持ち込まれ、逆に追う立場となったオーバータイム終盤には、コービーとカーメロにスリーを打たせてどちらも外しました。

もちろん、たった1回のスクリメージで全てを判断することはできません。
今回は、たまたまシュートの調子が悪かっただけだったのかもしれません。
しかし、これまでそうやって国際試合を落としてきた過去があるわけです。
「たまたまシュートの調子が悪かった」というゲームを少しでも減らすためには、確率の高いアウトサイドシューターをコート上にバランス良く配置するほかありません。
それをやった上でシュートが入らなかったのなら仕方ありませんが、シューターを入れずに「たまたま調子が悪かった」と言われても説得力がありません。

スーパースターへの依存を止め、ロールプレイヤーの存在を重視した“真のチーム”作りを目指しているのなら、職人的シューターを必ずコート上に置いておくべきです。
ベストな5人の組み合わせは、必ずしもタレントレベルの高い5人になるわけではありません。
アメリカ代表チームが過去の失敗から学び、自らの課題を自覚した上で、国際試合の舞台に出て行ってくれることを祈るばかりです。

ちなみに今日、最終ロースターが確定したようですね。
噂に上がっていた通り、デュラントとコリソンがカットされ、ミラーとデロンを残したようです。
改めてメンバーをご紹介。

<PG>
 ジェイソン・キッド
 チャウンシー・ビラップス
 デロン・ウィリアムズ
<SG>
 コービー・ブライアント
 マイケル・レッド
 マイク・ミラー
<SF>
 ルブロン・ジェームズ
 カーメロ・アンソニー
 テイショーン・プリンス
<PF>
 アマレ・スタダマイアー
 ドワイト・ハワード
<C>
 タイソン・チャンドラー

結局インサイドのビッグマンは、わずか3人体制で臨むということになりました。
まだアメリカ大陸予選ですからこれでも負けることはないでしょうが、本番の北京オリンピックではもう少しバランスの取れた“マトモな”メンバーを準備しないと、またやられてしまうでしょう。
それにしても、つい1週間前ぐらいに呼ばれてすぐにカットされたコリソンは何だったんでしょうねえ・・・・



コーチKが先発を約束した3人
メンバーの組み合わせは適切か?



ルブロン「ネッヘッヘ、予選ぐらい軽いぜ」



レッド「僕にもスリー打たせてくれない?」
コービー「何言ってんの? これは俺のチームだぜ(笑)」



そう、そのイケてるあなたのチームです



キッドの技がゾーンも攻略するか?
それともシュート力が仇となるか?




インサイドの命運を握る2人
ケガしても代わりはいません



コリソン「ま、夏休みの思い出づくりさ」



「エイ、エイ、オー!」
負けないでね・・・・


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8 コメント

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ありがとうございます!! (グラント)
2007-08-21 15:34:37
とても、勉強になりました、さすがですね!!最高です、本当に本当にありがとうございました。ブログをまとめて、本を出版なさってはどうですか?私は3000円ぐらいで(勝手に金額を決めてごめんなさい)
必ず買います。今、NBAはオフシーズンですし、今、私は、アメリカ代表のことにすごく関心がいっています。これからも、NBAのオフシーズンの、ためになる、お話、トレードのためになる、お話、ルーキーのためになるお話。をお願い致します。なかでも、22日からラスベガス予選がはじまりますので、アメリカ代表の話題を中心にお願い致します。次の更新を期待させてください。本当に本当にありがとうございました。
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グラントさんへ (manu)
2007-08-21 16:56:18
いえいえ、こちらこそありがとうございます。
プロフィールにも「リクエスト募集」と書いてるんですが、実際に「これを取り上げて欲しい」というリクエストはほとんど来ません(笑)
なので、言ってもらった方がこちらもやろうかなあという気になるのでありがたいです。
正直言って、このネタはスルーしようと思ってましたんで、埋もれる予定の話が日の目を見たという意味でも良かったです。

本が3000円ですか!?
3000円もしたら、分厚いハードカバーの『昆虫大図鑑』みたいな本が買えちゃいますよ(笑)
本といえば、麒麟・田村の貧乏自叙伝『ホームレス中学生』が出版されるみたいですねぇ~
これは絶対買いたい!!
あーっと、ラーメン屋でピラフを注文するぐらい脱線しましたね。
スイマセン。。
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賛成~♪ (rinn)
2007-08-21 17:47:50
本出版に賛成です♪ヽ(*^∇^*)ノ*:・'゜☆
週間とか月刊誌でもいいですね~♪
解説もすごくおもしろいし理解しやすいしやすいし
画像劇場は最高だし更新がとっても楽しみです。
だからBLOGだけじゃもったいない☆
もっと広まればNBAの人気ももっともっと上がるかも知れません!!

と、さらに脱線し勝手に盛り上がってしましぇんm(_ _)m
ルブロンのネッヘッヘとコリソンの夏休みの思い出画像と
「そう、そのイケてるあなたの~」コメントにオオウケしてました♪
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rinnさんへ (manu)
2007-08-22 12:12:10
本のことはよくわかりませんが、過去ログとかも自由に見られますんで、初期のお話とかも振り返って読んでもらえたらなあと思ってます。

コリソンは、虫取りアミと虫かごを持った小学生にしか見えず。。

代表チームはそれぞれの分野で能力の高い人を集めたんでしょうから、シュートが必要な時はシューターに打たせるといった適材適所の起用法をして欲しいものです。
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五輪の映像 (Tetsu)
2007-08-24 14:31:01
オリンピックのアメリカ予選が始まって、NBA.comでも試合のハイライトが見られますが、これは北京オリンピックの本戦になってもNBA.comでハイライトなどを見ることができると考えてもよいのでしょうか。FIBAが映像などを管理するのかは僕にはわからないのですが、もちろん映像がハイライトで見られたらとても嬉しいことですので。

バルセロナ五輪でマジックやジョーダンなどのプレーに胸を躍らせたことがNBAにのめりこむきっかけになったので、オリンピックの映像がNBA.comで見られれば、それは嬉しいことなのですが。
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チームUSA☆ (メロブロン)
2007-08-24 18:35:27
先発は、コーチKのなかでは、あの5人で決めてるようですね。

確かに、シューターのレッドを入れたいトコロですねぇ。

あと希望があるとしたら、国際ルールの短い3Pなら、メロやコービーなら、確率も上がることでしょうか??



しかし、インサイドはキツイッスねぇ…

予選はまだしも、北京では何とかしないと、世界の強豪相手には苦戦するのが、目に見えますねぇ…







注目は、D.ウィリアムズです。

戦力としてと言うより、経験を積む意味で。

彼は、今後かなり良いPGになるんじゃないでしょうか?

人気は、同期のC.ポールには負けるでしょうが、玄人好みの良い選手になるでしょう。期待したいです!!
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Tetsuさんへ (manu)
2007-08-25 01:32:56
僕も詳しくは知りませんが、確か去年の世界選手権の時もハイライトビデオは出ていたと思うので、オリンピック本番のハイライトもアップされるとは思うんですけどねえ~

まあでも、日本のテレビでもアメリカ戦は放送されるでしょうから、そこでも見れるとは思いますけどね。
ちなみにシドニーの時は、NHKでアメリカ戦全試合放送してましたけどね。(なぜかシドニー・・・)
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メロブロンさんへ (manu)
2007-08-25 01:38:37
なんだかそうみたいですね。
序盤はまだいいですけど、終盤の勝負所でシューターを入れないというのはどうかなと思って、それが心配なだけなんですけどね。

国際ルールでやってたスクリメージで、コービーやメロが外して負けてたわけですから、あまり変わらないと思います。
ちなみにレッドは近い3ポイントラインのことを「レイアップみたいもんだ」と豪語していましたが・・・・

インサイドはまだ予選だから許されますが、大型選手揃いのヨーロッパを相手にする本番ではそうもいかないと思います。
チャンドラーのプレーをハラハラしながら見てるのはイヤです、ハイ。

デロンはいい経験になるでしょうねえ。
将来的には、キッド&ビラップスの後釜として、ポール&デロンになっていくでしょうし。
ちなみにデロンは、大学時代から姿もプレースタイルもキッドに似ていると比較されていたので、2人が同じチームにいるとちょっとおもしろいです。
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