"the City of Brotherly Love"
人々はこの街をそう呼ぶ
「兄弟愛」
そう直訳すると陳腐に聞こえるが
つまり、家族や恋人だけでなく
周りの人みんなに愛を
という温かい言葉だ
そんな“Brotherly Love”を体現する1人の男が
フィラデルフィアに帰ってきた
「アレン・アイバーソン」
彼はこの街の誇りであり、象徴だった
街中の人誰もが、彼を愛した
そして、誰よりも熱いハートを持つ彼もまた
この街とこの街の人々を愛した
デンバーにトレードされて以来
アイバーソンがフィリーに戻るのは初めてのこと
ブーイングか?
それとも歓迎ムードか?
さまざまな憶測が飛んだ
しかし、フタを開けてみると
やはりこの街は“Brotherly Love”だった
ゲーム前の選手紹介
ホームチームを何よりも大事にするアメリカ文化は
敵チームと自チームの扱いにこれでもかと差をつける
自チームの紹介の時は、照明を真っ暗にして
派手なライトの演出や大画面での紹介をして盛り上げる
時には場内で花火まで打ち上げるほどだ
それに対して、その前に行なわれる敵チームの紹介は
照明も落とさず、場内がまだざわつく中で
淡々と小声で選手名をアナウンスするだけで終わる
それが通例だ
どこのアリーナでも同じ光景
それがホームコートという考え方
しかしこの日
フィラデルフィアのコートで行われた
敵チーム・デンバーの紹介は
まず場内の照明が全部消され
1人の男にスポットライトが当たる
"Ladies and gentlemen, let's welcome back, from Georgetown University ..."
場内にアナウンスが聞こえたのはそこまで
あとはうねりのような歓声に全ての音がかき消される
この日のために押し寄せた
20674人の超満員のスタンディング・オーベーションが
永遠のように続く
1人の紹介に30秒かかろうが
1分かかろうが
誰も気にしない
それがアメリカ流
それが“Brotherly Love”
その歓声を一身に浴びる男も
熱い気持ちで応える
両手を広げ
キスを贈る
四方のスタンドに向かって指を指し
胸をこぶしで叩く
「みんなの気持ちは受け取ったぞ」と
冗談まじりに
得意の耳に手をあてる
「聞こえないぞ?」というポーズを取ると
歓声は手をつけられないほどに大きくなった
アイバーソンは
これだけ多くのフィラデルフィア市民が
自分のことを想い
声援を贈ってくれることに
心を動かされた
「ある程度こんな感じかなっていうのは想像したけど
まったく想像以上だった・・・・」
アイバーソン自身も
フィラデルフィアへの感謝と
愛する気持ちを
自ら表現していた
試合前
センターコートにかがみこみ
シクサーズのロゴマークにキスをする
今日だけのために
シューズに
“THXPHILA”
(ありがとう、フィラデルフィア)
の文字を縫いこむ
そんな男が本当に
世間が言う不器用で無愛想な人間なのか?
ワルでどうしようもない人間なのか?
誰よりも熱いハートとソウルを持った
素晴らしい人間にしか見えない
ゲームは大接戦となり
一時はアイバーソンが同点スリーをねじこみ
スコアを113-113に持ち込む
しかし最後に逆転を狙ったスリーが外れ
2点差でホームのシクサーズが勝利する
いつものアイバーソンなら
最後のプレーで得意のペネトレイトでファールをもらうか
ミドルシュートを狙っていただろう
しかし本人は
「19フッターで終わらせたくはなかった」
と振り返る
勝っても負けても潔く
この特別なゲームだけは中途半端に終わらせたくない
そんな想いがにじむ
普段なら人一倍負けを悔しがるアイバーソンも
この日だけはちょっと違っていた
「もちろん負けてもいいなんて思ってない
俺はそんな人間じゃない」
「でも正直・・・・このゲームが終わってくれてホッとしてる
これが俺にとってツライ試合になるのはわかってたから」
そしてあらためて
チームを去った自分を温かく迎え入れてくれた
フィラデルフィアのファンに
感謝の気持ちを贈る
「全てがエモーショナルな体験だった
そしてやっぱり
ここで過ごした日々が決して無駄ではなかった
間違ってはいなかった
ということが再認識できた」
選手紹介の時、泣いてたか?と問われると
「泣いてないよ!
でも時々、涙が出ないように上を向いてたよ」
と笑う
「でも、今晩ホテルに帰って1人になったら・・・・
たぶん泣くだろうね」
そこにはスーパースターでも選手でもない
1人の“人間”アレン・アイバーソンがいた
ゲームハイライト(ビデオ)
『Hide』 by Creed
from the album 「weathered」
コメントありがとうございます。
スイマセン、説明が足りませんでしたね。
これはいわゆるミドルシュートのことです。
“19フッター”というのは、“リングから19フィート離れた位置からシュート”という意味なんですが、1フットが約30cmで、3ポイントラインが確か22フィートぐらいなんですね。
なので、3ポイントラインから1mぐらい中に入った場所から打つミドルシュートということです。
つまり、距離の遠い3ポイントに比べて、リングに向かって1歩近づいて打つ19フッターは、“より確率の高い安全な攻撃オプション”という位置づけになるんですね。
普段の試合だったら、勝つためにより確率の高いオプションを選択するところなんですが、この試合は勝っても負けても潔いショットで決めたかったんでしょうね。
なんか安全策で短いシュートを狙いにいって、それで外したらめちゃカッコ悪いことになるし、勝ってもスッキリしないはず。
そんなことでこの記念すべきゲームにドロを塗りたくない。
勝っても負けても、男らしく、カッコイイショットで終わりにしたい、という想いですね。
ちなみに“○○フッター”という表現は単にだいたいの距離を言ってるだけなので、“17フッター”“18フッター”なんていうのも同じくミドルシュートを表現する言い方になります。
現地の実況とか英語で聞くと、この言い方を非常によく使ってるんですね。
逆に“ジャンプシュート”とか“ミドルシュート”なんていう表現は使いません。
“○○フッター”という表現を標準的に使ってるんで、選手のコメントからもポンとそういう言葉が出てきたりするわけです。
言ってることがわからなくても、英語音声で聞いてみるのもおもしろいですよ。
いつもNBAのいろいろな面からの見方をおしえてくださってありがとうございます。このサイトを見て、NBAを見ることが更に愉しくなりました。
この記事、何度読んでも 泣いてしまうんですが、わからないことが ひとつ・・・
>「19フッターで終わらせたくはなかった」
19フッターって どういう意味なのでしょうか。
おしえてください! お願いします!
それとディフェンスがザル過ぎます。
サンズやウォリアーズよりも、もっと大味ですね。
なのでいい時はいいんですが、安定して勝つのは難しくなってきます。
今のナゲッツに必要なのは、サイズがあってスリーが打てるPGと、インサイドで体を張ってくれるビッグマンですね。
アンソニー・カーターが先発PGでは人材不足ですし、キャンビーやマーティンは身体接触を避ける傾向があって頼りになりません。
補強ができなくても、まずはチームディフェンス、ヘルプディフェンスをしっかり構築しないことには、勢いだけのチームから脱却するのは難しいです。
ファイナルに行った時より、確実に今のナゲッツのほうがサポーティングキャストに恵まれてるのに、プレイオフも無理そうな現状。本当にバスケは足し算じゃないし難しいですね。
私は今のナゲッツに必要なのはSGのディフェンス職人かなと思ってますが、どうでしょうかね。オフェンスは1on1ばっかりですけど、まあそれで点を取ってるし、それはそれでいいのかなぁと。
受験生だと2hは長いですよね~
でも最近おもしろい試合も多いし。
困りますね。
短めのESPNスポーツセンターで我慢するとか!?
トレードもよく取り上げてるんで、リクエストもお待ちしてまーす
勉強しなきゃと思いながら、試合観戦で2時間つぶしてしまっている今日この頃です。
そういう質問がくるとは思ってませんでした(笑)
まあ確かに景気は悪くなってますが、一部の成功者は変わらず稼いでいるものです。
どちらかというと格差が大きくなる、つまり弱者が苦しくなるという状況だと思います。
NBAチームのオーナーは特権階級みたいな人たちなので、直接ダメージを受けることは少ないと思います。
受けたとしても、それは景気の問題というより、人気の低迷とかが理由になると思います。
それでも、また新たな成功者がチームを買うだけの話ですね。
ファン心理という面ではどうなるかわかりませんが、そもそもそういう反感を持つ人がいるとすれば、まず見には来ないと思いますね。
それに、ある意味NBA選手はアメリカンドリームを体現した選ばれた人たちなんで、そういうヒーローたちを悪く思う感情はあまりないと思います。
テレビで見るカッコイイ俳優やキレイな女優さんとかに、「なによ、ちょっとぐらいかわいいからって」といちいち反感を持ったりしないのと同じことです。
スポーツの枠を超えた何かがありますねえ~
誰が何点取るかとか、どっちが勝ったとかだけじゃない魅力が感じられます。
この場にいられたらどんなにスゴかったんだろうなあという想いを込めて、情景が浮かぶような書き方にしてみました。
まあ、たまにはいいかなって感じで(笑)
なんかもうESPNのゲームハイライトのリンクは切れてしまったみたいですが、NBA.comとかでまだ映像あるかもしれないので、見られなかった方はそちらでチェックしてみてくださいね。
弁慶と牛若丸っていいですね(笑)
ホントそんな感じです。
勝っても負けても複雑、みたいな。
だから最後も、入っても外しても納得できるショットで終わらせたかったんでしょうね。
中途半端を嫌う男です。
ジャバーにブレイザーズ・・・・さすがにオンタイムじゃないんでわからないですが、よく鮮明に覚えてますね~
スゴイ!
うーん、僕もAIがいいチームに行ってくれたらなあと思って見ていたんですが、ナゲッツだと厳しいでしょうね。
あのディフェンスのザルさでは、プレーオフに行くこと自体危ういですし、出ても安定して勝つのは難しいですね。
もう一回トレード!?
それしかないような・・・・
心意気が男前ですよね~
アメリカ人は愛国心や家族愛がとても強いですから、ホームチームへの声援やヒーローである選手を愛する気持ちなどは本当に強いです。
それが特別な雰囲気を作り出していると思います。
カーターがブーイングされるのは、普段から流すように楽なプレーに逃げる傾向や、うまくいかなくなった時に真っ先にトレードを希望したり、それですぐに願いがかなわないと見るや、まったくヤル気のないプレーに終始したりしたためです。
アイバーソンは、最終的にはトレードを要求しましたが、それまはチームの方がトレードを何度も画策していました。
それにアイバーソンはいつでも100%のプレーをしていましたから、彼の真摯な姿を見てきたファンは、どっちが悪いのかよくわかっているわけです。
だからこそのあの声援なんですね。
フィリーの人たちも負けずに熱いですね
スポーツを通じて心を通わせる
一心同体
そんな魅力がアメリカンスポーツからは感じられます
アイバーソンとフィリーの関係はそんな好例です
そんな人間模様や心のつながりみたいな部分にも注目して見たりすると
また違った見方ができておもしろいですね
コメントありがとうございます!
8ヶ月分を一気に・・・・
スゴイ!
ちなみに僕は途中で飽きて読み返せません(笑)
>このブログを見つけてからいろんな角度から試合を見れるようになって、NBAを見るのが数段楽しくなりました。
これはとっても嬉しいです。
僕がこのブログで伝えたいことは、まさにコレなんですね。
一部のスター選手の活躍や、特定のチームの勝ち負けだけがNBAのすべてじゃないんで。
いろんな見方、いろんな楽しみ方を広げていただいて、もっともっとNBAの魅力を知ることができると思うんです。
なので、そのポイントに気付いていただけたことがとっても嬉しいですね。
スパーズは今でこそラグジュアリータックスぎりぎりなんですが、2年前ぐらい?にトニーPとまにゅ~の延長契約をするまでは、リーグ平均よりちょっと上ぐらいのチーム年俸で優勝してた、超省エネチームでした。
カネでいい選手を集めるといったタイプのチームではなくて、無名の選手を発掘してくるのがとてもうまいチームですね。
サラリー無視は、ニックスやマブズ、ナゲッツといったあたりのチームですね。
必ずしも成績とは比例しませんね。
参考にこちらのサイトを。
http://hoopshype.com/salaries.htm
やっぱりアイバーソンと言えばラリーブラウンとファイナルに行ったときのことを思い出すわけですが、あそこでの炎の中に飛び込んでいくような闘志の輝きはMJの試合を見るときとはまた違った感動を覚えたもんです。
ところで、まにゅさん、このところのアメリカの景気の悪化が及ぼすNBAへの影響について不安を覚えませんか。
俺は選手たちの年俸の高騰が球団の経営に近いうちに悪影響を与える気がしてならないんですよ。球団の倒産はもちろん、不景気時に高額の年俸をもらう選手たちへのファンの反感、こんなものが出てきてNBAへの支持を落とすようなことにはならないでしょうか?。
選手の年俸減らしといったネガティブな捉え方でなくリーグの健全な発展と言った視点で選手たちも経営者たちも行動して欲しいと切に願います。
最近楽しく拝見させてもらってます♪
いやー思わず何か書きたくなっちゃう話ですね・・
少しうるうるしてしまいました
・・何か文章からそのシーンが浮かんできます
暗闇の中、押し殺したような、でもはちきれんばかりの沈黙
アナウンスと共に爆発する歓声
それに答えるAI・・
AIがあのつぶらな?瞳で上を見上げているところ
何か想像するだけで胸が熱くなります。。
いや~NBAって本当にいいですね
ちなみにAIはムチョンボおじさんとの牛若・弁慶コンビから知りました
大好きな選手の一人です♪
若干PO厳しそうだけど、最後まで頑張って欲しいです
&USA代表での彼の情熱を見てみたいです!!
どうして選ばれないんだ~
まいど。ほんと、このブログはNBAについて多彩ですねー。この試合ほんとに見たかったです。
A.I.最後の3ポイントうった瞬間は何考えていたんでしょうね?
恐らく、雑念などなく、無の境地だったんじゃないかな?と推測します。
感動したNBAのスピーチと言えば、元LA Lakersのカリームアブドールジャバーのスピーチも感動しました。
あれから18年。時がたつのは早いですねー。
その時の、対戦相手が、ポートランドトレイルブレイザーズ。クライドドレックスラー・テリーポーター・ジェロームカーシー・バックウイリアムス・ケビンダックワース。控えに、ダニー・エインジと。。。ロビンソンといて、結構いいチームでした。2度ほど、finalに出場し、ピストンズとブルズに負けちゃいましたが。その時の、監督が今のロケッツのリック(ひげダンディー)エイデルマンでした。
話がだいぶ脱線しましたが、AIこのまま行くと、再びファイナル行くの厳しそうですが、manuさんブログの、ロケッツのように、バンガンディーが1,2年ヘッドコーチやって、その後、エイデルマンヘッドコーチがくれば、花開きますかねー。
私も個人的にA.I.大好きなので、チャンピオンリングを手にして欲しい。
その言葉が一番似合う人間だと思いました。
また、フィリーのファンの人々もすばらしいと思います。アメリカって銃の所持とかで危険なところもありますがアメリカのスポーツファンってあたたかくてホントいいですね。
・・・でもカーターがネッツに移籍した時ってトロントでブーイングうけてましたよね、たしか。
なかったんですね。
移籍して1年。
フィリーに戻るとき
果たしてファンはどういう反応をするのか
アイバーソンはいろいろ考えていたのでしょうね
フィラデルフィアで10年以上過ごし
ファイナルまで導いたヒーロー
点取りやで派手なイメージが先行しがちだが
幼いころから家族や仲間を大事にする人柄
私生活で問題もあったが
それでもファンは見守ってくれた
それがあのスタンディングオベーションと
選手紹介になったんでしょうね。
アメリカのスポーツ界って
フランチャイズビルダーでも
いざとなったら放出するビジネス優先な
考え方がありますが
ホントのヒーローには敵味方関係なく
どこに行っても応援してくれるところってありますよね
そんなところにもアメリカスポーツに惹きつけさせる
魅力があると思います
アイバーソンはこの試合前、どうなることかと思っていたと思いますが
フィリーのファンが「THE ANSWER」を
アイバーソンに示してくれたと思います。
ついこの間このブログを見つけて、気付けば8ヶ月分ほどをいっきに読んでしったほどに気に入ってます。これからもがんばって更新してください。楽しみにしています。
読むだけで十分楽しめていたので、書き込みをするつもりはなかったのですが、この話には本当に感動したので思い切って書き込んでみました。
私はNBAを見始めて一年ちょっとなのですが、いままではスター選手のプレイばかりに注目していたのですが、このブログを見つけてからいろんな角度から試合を見れるようになって、NBAを見るのが数段楽しくなりました。
私は小さいガードの選手がすきなので、アイバーソンも好きな選手の一人なのですが、アイバーソンの熱いところと人間っぽいところを同時に知ることができて、また一段と好きになりそうです。
ひとつ質問ですが、スパーズの選手の年俸ってどれくらいなんですか?
メンツだけみると完全にサラリー無視な気がするんですけど(本文と関係ないことですみません)