NBA INS 'N' OUTS

かんたん解説 NBAなんでもとーく

堕ちた欧州王者

2007年09月07日 | 代表ゲーム

2002年にインディアナポリスで開催された世界選手権を覚えていますか?
NBA選手を擁したアメリカ代表が、初めて国際試合の舞台で敗戦を喫した大会として記憶されています。
アメリカは単に黒星をつけられただけでなく、大会6位と惨敗しています。
そして本命不在となったこの大会を制したのは、ユーゴスラビアでした。

ちなみにアメリカに最初に土をつけたチームはアルゼンチン、次にユーゴ、そしてスペインでした。
今でこそ、アルゼンチンやスペインは世界を代表する強豪国として認知されていますが、当時はまだバスケが強かったのかどうかもよく知られていないほどノーマークの存在でした。
アルゼンチンは、NBAを破った最初の国という名誉を得ただけでなく、大会でも準優勝。
続くアテネオリンピックでは金メダルを獲得したことで、一躍世界の頂点へと躍り出ました。
スペインは、この大会でアメリカに勝ったのはまぐれぐらいにしか思われていませんでしたが、去年の世界選手権での優勝でようやく世界の強豪として認められました。

ただし、ユーゴだけは別でした。
以前からヨーロッパの雄として名を馳せ、もしアメリカを破る可能性があるとすれば、それはユーゴだけだろうと言われていました。
当時のメンバーは、ブラデ・ディバッツ、ペイジャ・ストヤコビッチ、デヤン・ボディロガ、マルコ・ヤリッチといった面々で、ベテラン中心の強力なチームでした。

あ、ボディロガは知らない人もいますよね?
NBAに来なかった中で一番のビッグスターと言われた人で、そのプレーはテクニシャンというか、マジシャンのようでした。
ハイライトをどうぞ。
http://www.youtube.com/watch?v=WG7sTSiiybg&mode=related&search=
http://www.youtube.com/watch?v=FfCHwVWDHQI&mode=related&search=

その後ユーゴスラビアは分裂し、現在はセルビア、クロアチア、スロベニア、ボスニア・ヘルツェゴビナ、マケドニア、モンテネグロと6つに国が分かれて独立していますが、代表選手の中心はセルビアから出ていました。
なので、分裂したとはいえ、セルビアはこれからもヨーロッパの雄であり続けるだろうと思われていました。
しかし、2002年の大会後、ディバッツ、ストヤコビッチ、ボディロガといったベテランが代表を去り、若返りを図ったチーム作りはうまく運びませんでした。

2004年のアテネ五輪では、12位チーム中11位に沈むという惨敗。
そして去年の日本での世界選手権に向けたヨーロッパ予選では、地元開催にもかかわらず2次予選敗退を喫して、決勝トーナメント進出のベスト8に残れず、自力での出場権を逃しました。
結局、前大会優勝という実績を考慮され、推薦枠での出場となりましたが、本大会でも輝きを放つことはありませんでした。

そして今回、北京五輪に向けたヨーロッパ予選が行われているわけなんですが、ここでセルビアは1次予選で3戦全敗を喫し、早々と姿を消してしまいました。
ちなみに1次予選とは、A・B・C・D4つのグループの中にそれぞれ4チームずつがあり、その中でビリにさえならなければいいというものでした。
しかし、かつてヨーロッパの雄と呼ばれ、つい数年前には世界を制覇したはずの王者が、1勝すらあげることもできなかったのです。
その1次ラウンドの相手は、ギリシャ、ロシア、イスラエルでした。
せめて明らかに格下のイスラエルにさえ勝てば次のラウンドに進めたのに、最後はそのイスラエルに負けて望みを断たれました。

原因は、国が分裂したことでタレントが集められなくなったから、というわけではありません。
今でも、NBA選手を数多く輩出しているタレントの宝庫であることは変わりません。
また、若手中心に移行したことで、タレントレベルが落ちたわけでもありません。
まあ、ディバッツやストヤコビッチと比べたらまだ足りないでしょうが、それでも他国がうらやむぐらいの選手層は誇っています。
じゃあ、いったい何が原因なんでしょう?
問題は、バスケットボール以外のところにありました。

セルビアは、ディバッツ、ペイジャ、ボディロガという、力もあって求心力もあったベテランたちを失った後、チームのアイデンティティが見つけられませんでした。
誰がエースで、誰がリーダーで、誰が司令塔なのか。
タレントに溢れたチームゆえに、そんな主導権争いが激化し、ついには仲間割れに発展してしまったのです。
いくら才能があったとしても、チームがバラバラではゲームに勝てません。
だから、スキルは落ちても一丸となって戦う格下のチーム相手に負けてしまうのです。

やはりバスケットはチームスポーツ。
チームスポーツである以上、チームプレーができなくては勝てません。
セルビアの没落は、そんな当たり前のことを思い出させてくれた気がします。



ダルコはなかなか結果を出せず



ヤリッチは内紛の当事者に



ドラフト1位候補と言われたアレクサンドロフも伸び悩む


では、グループごとに簡単に結果をおさらい。

<グループA>
1.ロシア 3勝0敗
2.ギリシャ 2勝1敗
3.イスラエル 1勝2敗
4.セルビア 0勝3敗

去年の世界選手権を逃したロシアは、雪辱に燃えていますね。
怪鳥(?)キリレンコが、平均17.7点、14.0リバウンドとチームを引っ張っています。
前回ヨーロッパ予選で優勝し、世界選手権でも準優勝に輝いたギリシャをも破っています。
全敗のセルビアは1次ラウンドで敗退・・・・



不振を脱して完全復活?のキリコさん



ご存知パパルーカス、ママルーカス、じょーじルーカス。。


<グループB>
1.クロアチア 2勝1敗
2.スペイン 2勝1敗
3.ポルトガル 1勝2敗
4.ラトビア 1勝2敗

このグループは大混戦。
イチ抜けかと思われた世界選手権優勝のスペインが、クロアチアに破れる波乱。
ヨーロッパのレベルは高いという事実を再認識させられます。
ラトビアはトップのクロアチアを破ったものの、ポルトガルを下せず惜しくも1次ラウンドで敗退。



クロアチアはドラフト候補生マルコ・トマス(背中の9番)のクラッチ3Pでスペインに逆転勝利



パウパウ兄さんも元気そう



ブレイザーズに指名されたルディ・フェルナンデス。早くNBA来てね



ビードリンスのラトビアはあと一歩及ばず・・・・


<グループC>
1.リトアニア 3勝0敗
2.ドイツ 2勝1敗
3.トルコ 1勝2敗
4.チェコ 0勝3敗

英雄ヤシケビシャスが帰ってきたリトアニアが、強さを取り戻したようです。
大会No.1の平均29.0点と爆発しているノビツキーがいても関係ありません。
ヤシケビシャスはシュート力だけでなく、大会トップの平均7.0アシストと頼もしい限り。
やっぱり国際試合だと本来の力を取り戻しますねえ~



オゥラ、あっち行かんかーい!(コワ)



オラオラオラーっ!



メンツいいのになかなか勝てないトルコ



メモさんの表情もイマイチ冴えず・・・・


<グループD>
1.スロベニア 3勝0敗
2.フランス 2勝1敗
3.イタリア 1勝2敗
4.ポーランド 0勝3敗

このグループは、“隠れたNBA選手の宝庫”スロベニアがトップ。
フランスが勢力を伸ばすまで、セルビアに次いでNBA選手の数が多かったのはこのスロベニアでした。
パーカーとディオウがいるフランスの上をいく健闘ぶりです。
バルニャーニとベリネッリのイタリアは、やや苦戦気味です。



トニパー君は大会2位の平均25.7点と点取りまくり



参加が危ぶまれたディオウも元気にプレー



バルニャーにゃのイタリアはこれからのチーム



ダンディ男ベリネッリも実はまだ若いわけで


ヨーロッパ予選はいっつも熱いです。
実力が拮抗していて、下馬評通りに勝つかどうかがわからないのもおもしろいところです。
まさに、サッカーのワールドカップ予選と同じような感じでハラハラドキドキです。
日本でもこれぐらい盛り上がってくれるといいんですけどねえ・・・・



日本の世界バスケのスタンドと比べたら・・・・



レッド・フォクシーズ(去年見た人ならわかるはず)



ラトビアのセクシー美女応援団(注:喜び組ではない)



会場がスペインだけにマスコットは牛



そして俺サマの名前はブラボー!



ま、バツ丸じゃなきゃ何でもいいね。。



ノビ太君はいっつも舌が出てます



出てます



やっぱり出てます



べぇ~~だ!


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8 コメント

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ありがとうございます。 (グラント)
2007-09-07 19:27:03
昨年の世界選手権でアメリカが、準備万端でのぞんだのに、ギリシャに負けて、3位になってから、ユーロバスケットボールにも、すごく関心があり、今回のような特集はとても勉強になりました。2002年の世界選手権も個人的に調べて6位だったんだ・・・とか思ったぐらいです。これからはユーロバスケットボールにもどんどん注目していきたいし、いかなければならないと思います。北京オリンピックも、アメリカは決して、優勝が磐石とは、とてもいえないと思っています。非常に関心のある分野なのでとても、勉強になりましたし、参考になりました。今回も、とてもおもしろいブログでした。もっと深く掘り下げて、国際大会における、NBAとユーロバスケの違い、アメリカの課題(NBAの課題)なども取り上げてほしいです。評論や分析がとてもわかりやすく、私の中のNBAの教科書です。これからも、のりつっこみをまじえた文章で、わかりやすく、おもしろいブログを続けてください。
ありがとうございました。次回も楽しみにしております。
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NGワード (apple)
2007-09-08 02:26:57
「ママルーカス」はNGワードです。
ググってみてください。
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グラントさんへ (manu)
2007-09-08 02:56:46
ユーロの楽しさを知ると、見方がまた広がりますよね。
各国のロースターを眺めるだけでも、「あ~、この選手はこの国だったのかあ」なんて新しい発見があったりして、なかなか楽しいですし。

それに、どこが勝つのかわからないというおもしろさもあります。
スペインもガソルやナバーロの世代が出てくるまではトップを争うようなチームではなかったですし、ギリシャやドイツが台頭してきたのもここ最近です。
フランスなんかも2005年のヨーロッパ予選で3位に入った時に「何十年ぶり」なんて報道されてました。
そんな実力伯仲の競り合いが展開されるからこそ、勝負のおもしろさが体感できるのだと思います。

アメリカは、実際2002年、2004年、2006年と3大会連続で大きな国際大会での優勝を逃していますから、今度こそ名誉挽回しないといけませんね。
NBAは大したことないっていう評価が定着してしまうかもしれませんから、ここが正念場だと思います。
予選の調子で本大会もベストなメンバーを組んで、本来の実力を発揮して欲しいと思います。
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appleさんへ (manu)
2007-09-08 02:57:28
いまいち意味がよくわかりませんが・・・・
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感激!! (rinn)
2007-09-08 10:55:44
ユーロ!!すごく嬉しいです!
ありがとうございます。

世界選手権でユーロのすごさにようやく気がつき興味をもちましたが
雑誌みよーがNET探そーが日本ではほとんど情報が得られませんでした。
今回のユーロ大会も知りたくても結果しかわからなくて・・
以前の話まで知ることができてすごく嬉しいです。
画像もたくさん♪
キリコさんやトニパー、バルニャーにゃのNAMEも楽しいし
ルーカス3変化は爆笑しました!!
フェルナンデスもはやくNBAでみたいです♪
読んでるとワクワクしてきます~♪

それにしてもマスコッドでいるんですね。
アジア予選はマスコットいたんでしたっけ。。。←記憶なし。
海外はバスケファン多くて楽しそうでホントいいなぁ。
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初めまして (danny)
2007-09-08 18:24:57
最近このブログを見つけて読み漁っていましたdannyと申します。
今回モロに自分の興味と被った話題だったのでコメントします。

モンデネグロはナショナルチームは最近踏んだり蹴ったりですよねぇ。
ボディロガ様も代表だけでなく遂に現役まで引退なさってしまって。
時の流れを感じて寂しくなります。
90年代の彼のプレイは本当に華麗としか表現出来ませんでした。
ダルコ君も敗戦後のコメントで罰金食らってしまいましたし。
インディアナポリスでディバッツがトロフィー掲げてから僅か5年しか経っていないというのに……。
仰るとおりロスターは充分なメンバーなんですよね。
毎年のようにNBAドラフト一巡目候補を輩出する辺り才能を掬い上げる環境も未だ整っているのに。
ぺジャに何とか戻ってもらってチームを纏めてもらうしかないですかねぇ。
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rinnさんへ (manu)
2007-09-09 01:59:02
いまいち皆さんどれぐらいユーロに関心があるのかわからなかったので、意外と反響があってうれしいなと思います。
そうなんですよね、結構NBA選手がいろんな国に分かれて戦っているので、普段と違うユニフォーム姿を見るだけでも結構楽しいもんです。

サッカーで言うところの、プレミアリーグやセリエAやリーガエスパニョーラのクラブチームで見ていた選手が、それぞれの国に分かれてワールドカップ予選を戦うようなものですから、国同士の勝ち負けも楽しいですが、いつも見ていた選手の違った顔をのぞけるのも大きな魅力です。

マスコットはスペインっぽいですね。
外国のアニメはリアルなので、かわいくはないですが・・・・
アジア予選もマスコットは知りません。
つーか、アジア予選なんてありましたっけ?っていう感じです。。
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dannyさんへ (manu)
2007-09-09 02:11:27
初めまして!
コメントありがとうございました。

ユーロがお好きなんですね。
ボディロガの才能はスゴかったですねえ~
ユーゴでは神のように崇められてましたね。
昔クーコッチが“ヨーロッパのマジック・ジョンソン”と呼ばれていましたが、ボディロガの方がその名に相応しかったかもしれませんね。

本当にセルビアの急降下は寂しい限りなので、早く本来の力を取り戻して欲しいなあと思います。
今大会、“分家した”クロアチアやスロベニアが好調なのも、何だか皮肉な感じですね。
ダルコのアレは、ミジメな結果をさらにミジメにする行為でした。

ペジャの復帰は可能性薄いでしょうねえ~
何だか、NBA選手として地位を築くと、母国の代表チームを敬遠するのが最近の流行りみたいになってますんで・・・・
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